今回はデスクトップPCオーディオ用として最近購入したRCAケーブル Wireworld Solstice 8 を取り上げてみます。Solstice 8 は2018年に刷新された米国WireWorld Cable Technologyのseries 8ラインナップで、同名のスピーカーケーブルと共に、下から3番目に当たるエントリークラスのRCAケーブル。米国価格は1mモデルが$99。日本国内ではSOS8とも表記されます。

WireWorldの各種RCAケーブルとSolstice 8について
WireWorld Cable Technologyは米国フロリダ州に本拠を構える1992年創業のハイエンドオーディオケーブルメーカーで、社長兼ケーブルデザイナーのDavid Salz氏によって設計開発されています。RCAケーブルラインナップは、下位からTerra → Stream → Luna 8 → Solstice 8 → Oasis 8 → Equinox 8 → Eclipse 8 → Silver Eclipse 8 → Gold Eclipse 8 →Platinum Eclipse 8 (最上位) となっていて、全て天文に纏わるネーミングが為されているのが特徴。ソルスティスは日本語で太陽の至点(夏至・冬至)の意味・・・転じて頂点、最高点みたいな意味になります。※下位モデルのStreamはSeries 10より追加。※尚、今回は名称的にSeries 9 のネーミングはスキップされたようです。

この中でもSolstice 8は、下位クラスながらOFC導体に銀メッキが施されている点が、同社の近似グレードのラインナップとは異なる特徴になります。上位モデルで銀メッキ線となると、一気にSilver Eclipse 8 までステップアップしないと選択できません。

Solstice 8は、銀メッキされた無酸素銅(Silver-Plated OFC)を導体に使用し、WireWorld独自の「DNA Helix Design」(シリーズ8ではTri DNA Helix構造)を採用しています。この設計は信号の伝送効率を高め、電磁干渉や信号ロスを最小限に抑えることを目的としています。また、絶縁体には第3世代の「Composilex 3」が使われており、従来の絶縁材に比べてトリボエレクトリックノイズ(静電気によるノイズ)を低減し、よりクリアな音質を実現します。
2025年春現在、Wireworldでは全体ラインナップの刷新による後継モデルのSeries 10が順次リリースされているため、歴代Wireworld製品恒例の在庫処分、旧モデル半額セールを一部店頭で見かけるようになりました。円安もあって国内の実売価格との内外価格差は元々大きくありませんが、セールであれば本国価格よりも更に安く入手できます。

Solstice Series 7 (2013) ⇒ Series 8 (2018) ⇒ Series 10 (2024) への進化

Solstice Series 8と2013年リリースの前モデルSolstice 7との違いですが、アルミニウムシェルのRCAプラグと4N OFC導体の銀メッキは共通。但し根本的に構造と太さ(8=23AWG vs 7=24AWG)が違い、Series8では導体構造も完全な新設計になるため。白色系の外皮のテクスチャーも違います。細径導体はSeries7までは2本のL/R chが束ねられ、いかにもエントリークラスである事を示していましたが、Series 8からは左右が完全独立構造になりました。


更に2018年発売のSolstice Series 8 から 2024年にリリースされたSolstice Series 10への変更点ですが、中央の導体が5本から6本になっているのと、絶縁体がCOMPOSILEX3から5に進化。RCAプラグのアルミニウムシェルが、従来の特徴的な葉巻型のデザインから、直方体のよりプレーンな意匠に変更されています。


全体としてはSeries 8からSeries10では基本設計に大きな変更は無く、ブラッシュアップを目的としたマイナーチェンジのように見えます。よってコスパ重視の管理人的に、ここは敢えて半額以下のお手頃価格で手に入る旧型を入手する事にしました。

Solstice8はとにかく外観が管理人的にはかなり好み。これが購入した理由の一つでもあります。また、この葉巻型宇宙船のようなアルミニウムシェルのRCAブラグが上質。WireWorldの他のモデルではブラック塗装が多いのですが、光沢メッキ仕上げなのが好印象。銀メッキの上から更に金メッキが施されたRCAプラグも何気に豪華。コンタクトは相対的に緩めですけれど、抜き差し時に機材に負担が少なく本来はこれくらいが適度でしょう。持ってみると細いだけで無く軽量。また、画像では導体が白っぽく見えますが、実物は艶消しライトグレーです。
Solstice 8 音質チェック |メインシステム
元々はデスクトップPCオーディオかサブシステムでの使用を想定して購入しましたが、先ずは実力を把握するためにメインシステムのDAC Pro-Ject Head Box DS ⇒ アンプ AUDIOLAB 8300Aに繋げてみましした。スピーカーはVienna Acoustics MOZART Signature T-2。価格帯がずっと上になるDH Labs Pro Studio RCA(工事中)からのリプレイス。ちなみにDH LabsもWireworldと同じアメリカ フロリダ州のケーブルメーカーです。

さて、Solstice 8 に繋ぎ替えたところ一聴して音量が下がったように聞こえます。軽快でとても明るい音色は春の日射しのように明るく穏やか。低位はピンポイント。響きはかなり多いのですけど、逆相が混じったようなディレイ感のある響きに独特の個性を感じます。そのたゆたう響きの裏側に、中域~高域方向はシャープ且つ少しばかりザックリとしたサーフェスが見え隠れします。音数はエントリークラス相応で控えめ・・・響きの多さに細部がマスキングされるタイプ。
音楽性は淡々としていて陰影感とコントラストが浅く、表面をなぞるような描写。ダイナミックレンジがやや狭めの印象。軽妙で耳を擽るようなコケティッシュさはあるものの、少々高域が刺さるタイプの銀メッキ線ですので、エージングで解消することを願いたい。低域が明確に不足しているため音場展開が腰高且つややコンパクト。それでもその中で精度の高いピンポイントな3Dイメージを得られるところはWireWorldらしさです。よくある樽型歪曲収差の激しいレンズ的な歪みがなく、空間の広がりそのものは正確なアライメントで好印象。
Solstice 8 音質チェック |サブシステムA
メインシステムでの印象は余り芳しくなかったため、早くもお蔵入り濃厚かと意気銷沈しつつ、傾向の異なるサブシステムでの追加テストをしてみます。現在のサブシステムAの構成ですが、スピーカーはQ Acoustics 3010i(工事中)。インテグレーテッドアンプにSimaudio Moon Neo 220i。CDプレーヤー兼トランスポートにCREEK Evolution-CD。Solstice 8 RCAはDACのATOLL DAC100SE((工事中))とSimaudio Moon Neo 220iの間。普段はリファレンスとしてSUPRA EFF-IRB RCAケーブル(工事中)を使用。今回は全てケーブルの指定順方向接続で聴いています。

あれれ?此方ではメインシステムで気になったネガティブポイントがあんまり気にならないぞ?素の音色が暗めで低域の量感と制動力過多のアンプに合わせた場合、明るさを補いつつトーンバランスが良くなり、双方の弱点を相互補正する形でかなり打ち消してくれるっぽい。

せっかくSimaudio使っているのに、これではアンプの持つアドバンテージまでも中和されてしまう気が無きにしもあらずですが、なんか正反対にもかかわらず不思議なほど相性良さげ。これは低域かるっかるのONKYO C-S5VLとMoon Neo 220iと組み合わせた際、その軽さがアンプに補正されて帯域バランスが程良くなり、SACDプレーヤー側の音質的弱点ををほぼほぼ感じさせなくなる現象に近いかも知れません。
低域方向に偏ったバランスのシステムでは、こういった低域の沈み込みが浅いケーブルが逆に補正効果を発揮してバランスがフラットに中和される事があったりします。ちなみに性格の異なるコンポーネントを下手に組み合わせると、中和されずにチグハグになる方が確率的には高いですので、今回は運良く上手くマリアージュしたケースになります。
兎にも角にもこの明るい音色は唯一無二。強制的にすべてが真昼の陽射しに照らされるがごとくの明るさで良い意味で影が無い。艶やかでしなやか。力感はあまりありませんが、女性的な柔らかさと穏やかさを感じさせる音色。Wireworld Solstice 8がフィットする場所が見つかれば、クラスにかかわらず重宝しそうではあります。音質的には少々柔らかめですが、手持ちの旧SolsticeⅢほど偏ったソフト基調のの柔らかさではなく、音像そのものはシャープ。しなやかで品のある明るい美音に付帯音的な響きが溶け込むため、細部の音数については控えめ。
弱点は高域に比べて緩く遅れて聞こえる低域方向の量感が不足している為、アンプ側で補ってもなおベースラインが目立たない存在になるのと、直接音が全体的に薄め。音楽の流れがアンニュイに傾いていて、力感、エネルギー感に乏しい点でしょうか。相性は悪くないけれど、此処に普段使っているSUPRA EFF-IRB RCAケーブル(工事中)に比べると、客観的な音質では2~3ランクほどグレードが落ちるようなイメージです。※対WireWorldのラインナップ基準

Solstice 8 音質チェック |デスクトップPCオーディオ ⇒ 本採用しました
今回のWireworld Solstice 8 導入・・・実はPCオーディオが本命でした。狭いデスク上のDACとアンプを少しでも奥側にセッティングするためには、接続する各ケーブルに屈曲性の悪い固いケーブルは使用したくありません。しかし、ピュアオーディオ用に設計されたRCAケーブルやデジタルケーブル等は導体が固かったり凝ったシールド構造だったりするものが多く、思いのほか広い背面クリアランスが必要になる場合が少なくありません。しかし、WireWorld Solstice 8はΦ5mmと細く、各所レビューでも柔らかめで配線は容易と書かれています。外観もライトグレーで白色に近く、管理人の白いデスク上でもケーブルが悪目立ちしません。
尚、2025年時点でのデスクトップPCオーディオですが、
PC | Lenovo ThinkCentre M75q Tiny Gen2 |
---|---|
USBケーブル | SUPRA USB 2.0 |
DDC | Trends Audio UD-10.1 (工事中) |
デジタルケーブル | QED Reference Digital Coaxial |
DAC | Musical Fidelity V90 |
RCAケーブル | ISODA HA-08PSR ⇒ WireWorld Solstice 8 |
デジタルアンプ | ROTEL RDA-06 |
スピーカーケーブル | AET EVO-F125 |
スピーカー | Monitor Audio MASS-2G (工事中) |
こ~んな感じの構成になっています。

WireWorld Solstice 8は傾向的に低域方向が緩く、中域は前に出ず、高域が目立つバランスになるRCAケーブル。対してPCオーディオでは、デスクトップ向け超小型スピーカーにありがちな100~200Hzを無理やり持ち上げた中低域により、主な用途である肉声ナレーション、特に女声が太ましくなり、往々にして違和感が出がちです。この点、Solstice 8では超小型スピーカーで誇張された周波数バランスを聴感上中和する方向に働くため、きちんとしたビュアオーディオシステムでは弱点に感じられる低域弱々のハイ上がり傾向が逆にプラスに働く印象。
位相の良さ
WireWorldらしいアドバンテージとして、Solstice8のようなエントリークラスであっても、現代のピュアオーディオに相応しい位相感、シャープな音像とピンポイント的な3次元立体定位が得られる点です。ステージの絶対的な広さや音の密度、ダイナミズム、細部の音数などは上位モデルに比べて見劣りするものの、低価格のケーブルにありがちな中央に圧縮された平面的な音場や、不明瞭な音像、混沌として雑然とした奥行きのないステレオイメージとは対極にある、上下左右後方に音像が綺麗に立体定位するトランスペアレンシーは魅力的。管理人の環境は、3台のディスプレイの裏側にスピーカーが丸ごと隠れる、立体音響再生に非常に不利な配置のデスクトップPCオーディオですが、それでもSolstice 8では、他のエントリークラスのケーブルと比べより明確な3Dステレオイメージが得られます。

銀メッキ線の功罪
Solstice 8の美点として、如何にも銀線的な非常に明るく艶やかな音色があります。脚色系のハイエンドオーディオサウンドに良くある音色感が、エントリークラスのRCAケーブルでも明瞭に感じられるのは大きなメリット。PCオーディオはどうしても面白みのないモノクローム傾向の音色に陥りがちですが、Solstice 8を宛がうことでよりピュアオーディオらしさを感じさせる演色性の高いリッチな音色感を創出することができます。
若干気になる点として、これは実際のところ銀メッキ線だからか、元のOFC線の純度の問題か、それとも特殊な平行単線構造によるものかは判りませんが、高域方向に少々ざっくりとした棘があり、やや耳に刺さる点です。当初、新品時の問題でバーンインで消えてくれることを期待していましたが、数百時間通電後でもあまり変わりませんでした。これは結果的に針金のようにシャープでスッキリとした定位感をもたらすため必ずしも弱点とは云えないのですが、Solstice 8の使用場所を選ぶ個性にはなっています。ちなみに個人的に許容できないレベルではないので、他のアクセサリーやケーブル等である程度中和する事は可能だと思います。※とは云え、そもそも銀メッキ線の音色が元々苦手な人には明らかに向かない音質傾向だと思います。
ちなみに下位モデルのLuna 8とSolstice 8のスペック上の違いは銀メッキの有無。低域の量感やニュートラルな音色を求める場合は、非メッキOFCのLunaか、一段階上位のOasisの方が向いていると思います。


おまけ Wireworld Solstice 8とSOLSTICEⅢ の比較
2000年代初頭、管理人がはじめて購入したWireWorldのケーブルにSolstice 8の先祖にあたるSOLSTICEⅢ があります。当時、スカパーチューナーやビデオレコーダーなどのAV用途に、安価だけれど本格的なクオリティのRCAケーブルを探していて辿り着いたケーブル。4ペアほど米国から個人輸入したものですが、当時は1ペアが$20~$30しなかったように記憶しています。

Solstice3も明るく穏やかで柔らかい音色が特徴で、基本的な音色傾向とサウンドコンセプトが、思いのほかSolstice8にもそのまま引き継がれていて驚きました。同じような太さの白く細い導体ですが、SolsticeⅢの中身は非メッキのOFCで絶縁体には驚くことにテフロンと書かれています。ただ、その外側の外皮はPVCなのか、今では経年劣化して黄変及び加湿によるベタつきがあります。尚、Solstice8は台湾製ですが、このSolstice3はMade in USAと書かれています。
Solstice3音質的なクオリティは当時水準と云いますか、当時でも価格相応+α程度であまり高品位とは思わなかったのですが、Solstice8では失われている美点として、弾力的でリズミカルな音楽性の高さがあります。ただ、分解能や透明感はあくまで当時のもので、特筆するような位相感も無く、中域を中心にこぢんまりとした団子状のステレオイメージになります。ここまで音場とレンジが狭いとさすがに今となっては使いどころが無く、ずっとお蔵入りしたまま・・・とは云え、これでも機器付属の赤白RCAケーブルとの置き換えではかなりの音質向上が望めました。

流石に数世代を経たWireworld Solstice 8との音質差は一皮剥けたどころではなく、透明感、位相、音場感、音色の品位など、全方位で音質的に向上しています。ただ、今のSolstice 8は音場再現性重視でエネルギー感がやや薄く、緩めのアンニュイな傾向ですので、中域のリズミカルで活き活きとした表現力だけは、当時のSolsticeⅢに軍配が上がると感じています。
~まとめ~
モデルチェンジに伴う超特価でしたので、好みに合えば在庫があるうちにSolstice 8の追加購入も視野に入れていたのですけれど、実際の音を聞いてみた結果そこまでの食指は動きませんでした。見た目が好みのケーブルは大概音質的にも好みだったりするのですが、このケーブルに関してはPCオーディオでの音色改善と云う当初の目的にはドンピシャで合致したものの、他の場所で使いどころがあるか?となると、明確に場所を選ぶと感じるのが正直なところ。

他にもワイヤーワールドのケーブルはいくつか所有していて、光デジタルケーブルのSupernova 7(工事中)や同軸デジタルケーブルのSilver Starlight 7(工事中)など気に入ってるモデルもあるのですが、それらと比べた場合、やはりどうしても作為的にグレード相応な音質に抑えられている印象が否めません。純粋なピュアオーディオシステムでは、管理人がRCAケーブルに求める音質のグレード的な下限値を若干ですが下回っていると感じるのが正直なところでした。極細平行線による23AWGとシンプルに細すぎる導体に、ハイ上がりになりやすい銀メッキの影響が合わさり、良くも悪くも明るさとそれに伴うコントラスト不足が支配的だなぁと。とは云えWireworld的には、Terra → Stream → Luna 8 → Solstice 8 → Oasis 8 → Equinox 8 → Eclipse 8と非メッキの銅線を採用しニュートラルな音質を維持したラインナップの中に、敢えて一つだけ銀メッキのSolsticeを加えることで、予算内で積極的な脚色を加えるためのオプションを用意してくれているのだと思います。ある意味ズブズブのオーディオマニアのために(*゜∀゜*)。

管理人の環境では長年、デスクトップPCオーディオの出音について、いかにもPCからのデジタル出力にありがちな、彩度の低いモノトーンの音色から抜けられないと云う点が悩みでした。PC本体のデジタル出力を使う限り、音質的美意識が反映された、聴感上練り込まれたピュアオーディオ的な音質レベルにはどうしても聞こえない・・・・この基本的問題点を見事に払拭してくれたのがWireworld Solstice 8です。ある種のハイエンド的テイストを纏ったピュアオーディオ的な色付けと脚色により、垢抜けた明るくリッチな響きと音色、整った位相感をもたらしてくれた結果、やっとの事でモノクロームの呪縛から脱却することが出来ました。客観的な音質評価ではエントリークラスの範疇・・・本国価格相応の中途半端なクオリティではあるのです・・・それでも、物理制約の大きなPCオーディオなど、上限値の低いエントリークラスの構成であれば、ボトルネックの解消と音質の底上げにじゅうぶん効果的という結論で締めたいと思います。
