今回紹介するAcoustic Revive SPC-AVは、真っ赤な被覆の針金のような単線SPケーブル。シンプルな赤い艶消しで少し粘着質のポリエチレン被覆に、針金のようなPC-TripleCのΦ0.9mm銅単線。単線は撚り線よりも音質的に優れると、昔から一部のディープなオーディオマニアに支持されて来ましたけれども、ライトユーザー、入門ユーザー向けの安価なエントリークラスの製品には珍しい構造です。
被覆の皮むきは容易ですが、導体の先端が固く鋭利ですので、接続時に誤って機器等に触れて傷つけないように注意が必要です。導体が針金のように固いため、適切な長さで揃えると空中配線が可能ですが、それ故一度曲げ癖が付いたら取れない上に、単線はスピーカー端子が緩んで脱落し易いですので、その点には十分ご注意下さいませ。
Acoustic Revive SPC-AVの音質は?
単線らしい密度感とシンプルな音場に、Acoustic Reviveらしく解像度が高く、高域方向が強調気味の音がするのかと思いきや、案外まろやかで暖かみのある滑らかなトーンで、良くも悪くも伝統的ヨーロピアントーンを想わせる銅色のカラーレーションを感じます。間接音まで含めた音数についてはそれほど多く無いものの、直接音のクリアネスやダイレクトなアタック、キレの良さなどはデジタルケーブルのAcoustic Revive DIGITAL-1.0R-TripleC-FMに通じる部分もあり、音像の実在感や鮮度感などは1000円以下の切り売りケーブルとしてはかなり優秀だと思います。
滑り止めゴムみたいな弱粘着質の赤いPE/ポリエチレン被覆が単線特有の共振雑音をダンピングし、耳当たりがキツくなるのを上手く防いでいる印象。けっこうノリノリに音楽を聴かせてくれ、うっすらと弾むリズミカルな音楽性がとても心地良く、聴き手を演奏に引き込む実体感を備えていて良い意味で裏切られました。細部の音数と引き換えに素のS/Nが良く、音が篭もりがちな低価格システムのクオリティを一気に底上げしてくれるスピーカーケーブルだと思います。
SPC-AVのサウンドはウォームで明るく中域が大変に闊達。耳当たりはマイルドですが定位は密度の濃さもあって明快。半世紀前のアナログ録音黄金期を彷彿とさせる音色が、最新設計のスピーカーケーブルから得られるところが何とも不思議な印象です。弱点は音色がやや艶消しで単調(明るい銅色)で、音場内を満たす音数が少なくなる点でしょうか。。。これまで一般的にクールで解像度番長だったアコースティックリバイブのラインナップから、まさかこんなにも毛色の異なる音楽的な傾向のスピーカーケーブルが出てくるとは正直思いもよりませんでした。
実はAcoustic Revive SPC-AVの音、今回のテスト機である英CREEK AUDIOの音色に良く似ているため、CREEKのサブシステムに繋げた場合、元のアンプとCDPのホットな音色と音楽的表現力を更に強化したようなイメージになります。ただ、長年かけてこのシステムで僕が取り組んでいたのは、実のところ音色のCREEKっぽさ、CREEK特有の欧州的なカラーレーションを適当に薄めることだったり…( ੭ ・ᴗ・ )੭♡。各種オーディオケーブル類の厳選とQUAD Lite-2と組み合わせることで音楽性を毀損せずに脱色する事にはほぼ成功しているのですが、このSPC-AVを使ってしまうと、元のCREEKのトラデイショナルでクラシカルな音に逆戻りしてしまう…( 3△3 ).。o。と云うことで、今回このシステムでは採用見送りになりました。
~まとめ~
Acoustic Revive SPC-AVは、かなり明確にウォームでモノトーンな音色と、活き活きとした音楽表現力に振った、良い意味で単線の良さを手軽に味わえるスピーカーケーブルに仕上がっていることは間違いありません。その為、SPC-AVは、繋げるスピーカーやシステムに拠っては非常にコスパの高い選択肢に成り得る可能性を秘めています。敢えて直球ど真ん中の高解像ワイドレンジHi-Fiの逆方向を向いているとも云える、オーディオ上級者好みでキャラクターの明確なSPケーブルを、エントリークラスに持ち込んできたAcoustic Reviveの見識には敬意を払わざるを得ません…( ੭ ・ᴗ・ )੭♡