【ピュアオーディオアンプのより良い運用方法】
7つの間違い|15の注意点
ピュアオーディオ用に設計された各種単体プリメインアンプやセパレートアンプを、オーディオシステム一式に組み込んで使用する上で、他の入力機器やスピーカーとはまた別に、アンプならではの注意すべきポイントが実は色々とあるのですが、体系的に語られることは案外少ないと思います。
今回はソリッドステートのアナログアンプ、近年主流化しつつデジタルアンプ、真空管アンプを問わず、ステレオオーディオアンプの日常に於けるメンテナンスや運用方法について、前回紹介したWHAT Hi-Fiの記事では触れられていないポイントを、箱庭的”AUDIO STYLE”管理人による番外編として紹介してみたいと思います。
暖機運転の必要性
オーディオマニアの間では良く言われている話ですが、オーディオ機器はどれも大なり小なり、通電初期の音質が乾いていたり歪みっぽかったりして、特にアンプについてはかなり寝起きが良くない機種も少なくありません。各機器が温まり本来の音質を出すためには、通電開始後、少なくとも30分~1時間ほどアイドリングして内部温度が完全に安定してからの方が、情報量が多く歪みの少ない良い音が得られます。
海外製のハイエンドアンプなどでは暗に常時通電での運用が前提になっている機種もあり、フロントパネルにある電源スイッチ(スタンバイモード⇔ON)とは別に、主電源を敢えて手が届きにくい機器背面に備えているケースなども少なくありません。電気代を気にするあまりに音楽を聴く直前に電源を入れるスタイルの場合、普段から機材の持つ本調子の音質では音楽を愉しむ事が出来ない可能性を知っておくべきかも知れません。
電源のオンオフで注意すべき点
アンプの電源は、毎回必ずボリュームを最小に絞った上で点灯or消灯します。いにしえのオーディオマニアの間では半ば常識でしたけれども、デジタルボリューム採用アンプが増えてきた近年では余り声高に叫ばれなくなったため、案外ご存じ無い方も居るのではないでしょうか?尚、複数の単体コンポーネントが連なるオーディオシステムに於いて、アンプの電源を入れる順番は、電源on/offに伴うポップノイズ等がアンプに侵入してパワーアンプ回路やスピーカー故障の原因になる事を避けるため、原則的に以下の順番になります。
これは初期通電時の突入電流のオーバーフローアクシデントや、誤った入力、大音量信号等によって、スピーカーやパワーアンプ回路を破損させないためです。また、経年劣化で機械式ロータリーボリュームの接点ガリが発生した場合に、ガリの発生箇所を常用域から外すメリットもあるそうです。※ガリは普段使うボリューム位置周辺に発生しやすいため。もちろん、現代の大半のオーディオ機器では、電源オンオフに纏わるノイズや過電流が相互に悪さをしないように、回路の各所にミュートリレーやヒューズなどを適宜備えてはいます。それでもアンプの場合、初期不良や経年劣化、突発的な電源環境要因によって、それらの安全回路が充分動作しないorヒューズが焼き切れるケースは少なくないと個人的な経験からも感じています。
常時通電か?こまめな電源オンオフか?
これとは別に、管理人の場合、ふだん意識的に各オーディオ機器の電源のオンオフ回数を最小限に留めるようにしています。在宅時は何れかのシステムが常時通電に近く、電源オフ時にはスタンバイモードで運用。特にシステムの中核となるアンプと真空管を内蔵する機材の通電については、累積のオンオフ回数をなるべく増やさないように慎重に運用しています。オーディオ機器の主電源を切るのはあくまでメンテナンスなどで機材そのものを弄る場合や、長期外出時のみです。
スタンバイモードの場合、特に海外製の機器では待機電力が思いのほか大きいものも少なくありませんが、アンプの主電源は切りませんし、コンセントも抜きません。コンセントの抜き差しは、太く重く曲げに弱いオーディオ専用電源ケーブルの断線リスクや、メッキプラグ接点の摩耗劣化の原因にもなります。何よりオーディオ専用コンセント/電源ボックスへの負担が大きく、抜き差しの繰り返しで嵌合が緩くなり、非可逆的に音質が変わってしまうためです。
アンプ、その他オーディオ機器を傷める故障の原因となる経年劣化は、通電による発熱に加えて、実は電源オン時の突入電力によるダメージの累積が無視できません。発熱に関しては温度が高いほどコンデンサ等の部品劣化が早くなるのは事実ですが、常時通電的になるべく設計温度で安定させる運用方法と、頻繁に温めたり冷やしたりを繰り返す運用方法では、場合によっては後者の方が各部品への累積ダメージが大きくなりかねないと考えています。
※節電目的で家電製品のコンセントをひたすら抜かれる方をしばしば見掛けます。しかし、他の家電製品を含め、近年の国産機器は待機電力が極少ですので、電力の実測値を正しく計算した場合、待機電力抑制のためにコンセントをわざわざ抜き差しする事は、殆どの場合無駄な努力です。むしろ家電製品の潜在的な劣化故障リスクが高まるだけですのでお奨めしません。
電気代については、オーディオはそもそも贅沢な趣味としてある程度の割り切りがどうしても必要だと思っています。近年の電気料金値上げの波を鑑みるに個人的には苦しいのですけれども・・・各コンポーネントの価格や入手性、故障時の修理コストを考えると、アンプや他の機材の寿命を縮めるよりはましでは無いでしょうか…~゜゜(´□`。)°゜。
ELPAエコキーパーは管理人も使っている簡易電力量計です。通電使用時、アイドリング時、スタンバイモードそれぞれの実測値がカタログ公称値とかなり異なるオーディオ機器や家電製品が実は少なくないことが、簡易電力量計を使うと良く判ります…( 3△3 ).。o。
時には電源のオンオフが効果的な事も
前述の話とはやや相反するノウハウです。以前にAUDIOLAB 8300Aでエージングも兼ねた常時通電気味の運用をしていたところ、時々、音質が不思議なほどマッタリし過ぎてしまうと感じることがありました。こんな時、一旦アンプをスタンバイモードにし、数分後に再度電源を入れると、びっくりするほど鮮度の高い音が出るようになるのです。原因が判りませんし、他のアンプでも普遍的にこの効果があるかは不明ですが、家庭用電源側は常時変動しているため、安定通電状態といっても電気的に不変では無く、電源のオンオフによる突入電流等がある種のリセット的なリフレッシュ効果をもたらすケースがあるのかも知れません。この様な事もあるので、連続通電時間を長めに頻繁なオンオフを避けつつも、完全な常時通電にはせず、適度にお休みするスタイルを個人的に心掛けています。
スピーカーケーブルの接続端子(バインディングポスト)に緩みが無いか定期的にチェックする
指先の力で締める事でコンタクトさせるスピーカーケーブルの接続端子は、アンプ側、スピーカー側共に、震動等も絡んで経時的に緩むのが普通です。一切緩まないほど強く締めると、今度は逆に固着して外れなくなったり、逆にアンプの背面端子やプラグを破損しかねません。適切なトルクが機器それぞれに異なる事もあり、締め加減を見極めるのはなかなか難しいです。
一般的な撚り線スピーカーケーブルによる裸線の接続でも端子は緩みますが、実は弾性の少ないYラグ端子や単線の接続では、ネジ締めにより強い力が必要且つ、不十分なトルクでは更に短期間で緩み易くなります。経時的な緩みが原理的に発生しないバナナプラグが、実は一番安定しているかも知れません。スピーカー端子が緩むと気付かぬ間に音質にも影響しますので、スピーカーケーブルの確実なコンタクトを維持する為に、少なくとも年に1~2回、緩みの有無を確認しつつ増し締めをされることをお薦めします。ラック内にある機器背面のスピーカー端子を前側から十分なトルクで回すのは案外難しいので、管理人はアンプ毎にスピーカー端子と同サイズのディープソケットを用意してます。6角或いは12角などのディープソケットを使えば、スピーカー端子の間隔が狭すぎて指で回しにくいタイプのアンプでも簡単に締め付け&緩ませが可能になります。
他にも、アンプや各コンポーネントのRCA端子とケーブル側RCAプラグの直径には、製品の採用部品毎にミクロン単位の切削寸法誤差がある為、アンプの接続端子にRCAケーブルのプラグが奥まで十分に挿さらず、音が途切れる原因になったりします。(ラック裏のブラインド配線ではありがちです) しっかり挿したつもりが片チャンネルから音が出なくて差し込み不良に気付いたり、逆に緩すぎるケースなどは、他のプラグを抜いた際に引っ張られ、気付かぬ間に抜けかかってしまう事も…( 3△3 ).。o
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実は入力端子毎に音質が違います
ステレオオーディオアンプは通常、デジタルアナログ共に複数の入力系統を装備していますが、入力端子によってそれぞれ音質が違う事は余り知られていません。この原因は、背面パネルの端子位置の違いからくる筐体剛性、取り付け歪みや振動モードの影響、内部の配線(基板)のレイアウトや長さ等の違いによる微妙なインピーダンスの差異などが推測されます。とは云え、長年使い込んだアンプの場合、最も良く通電していた入力の音質が最も良い事が多いです。※新しいアンプでは、必ずしも入力セレクタの文字表記に囚われず、最初に音質の良い順番を見極め、最も良く使う入力順に、より良い音質の入力端子を割り振るのが賢明です。
プリメインアンプやプリアンプはセレクタで複数の入力系統を切り替えるタイプが普通ですが、ひと昔以前に設計されたアンプでは、多くの場合カセットデッキ用に用意されたTAPE IN /TAPE OUTを備えていました。LINE IN /LINE OUTやREC IN/REC OUT、RECORDER IN/OUTと表記されるアンプもあります。アンプの設計にも依りますが、機械式のセレクタを備えるアンプの場合、テープIN端子はテープOUT側に繋がる他の入力と少し回路が異なるため、他の入力よりも解像度に優れ、鮮度の高い音質を得られるケースがあります。
1台のプリメインアンプをセパレートで使う裏技
一体型のプリメインアンプ(インテグレーテッドアンプ)の中には、内部がプリ/パワー別に設計されていて、それぞれ単体プリアンプ或いはパワーアンプとして切り替えて使える機種も少なくありません。これは、手持ちのアンプを活かしたまま、将来的にパワーアンプorプリアンプを追加してセパレートアンプ化を可能にする為に古くからある拡張機能です。ただオーディオマニアで実際これでセパレートアンプ化されている方はあまり見かけませんけれども…( ̄▽ ̄;)。
この種のインテグレーテッドアンプ(プリメインアンプ)の中には、実はプリ/パワーの切り替えが排他ではなく同時に並列動作可能なアンプがあり、その場合、自らのプリアウト端子から出た信号を、任意の短いケーブル(RCA or XLR)を介して再びパワーイン端子に戻す、裏技的なイロモノ配線が可能なモデルがあります。わざわざ余計なケーブルに音声信号を迂回させれば接点が増え、端的に音質劣化しそうですけれど、ここに敢えて高音質なケーブルを使うとあら不思議、内部回路で統合された音質よりも、聴感上好ましい音質を得られる可能性があります。セパレートアンプ化のメリットは、実はプリ/パワーを繋ぐインターコネクトケーブルの質如何で音質が底上げできる事も一因なのが、この方法でインテグレーテッドアンプでも体験できます…( ੭ ・ᴗ・ )੭♡
経年劣化によるガリと接触不良を未然に防ぐ
最新の電子式切り替えセレクタや電子式ボリュームを備えた機種ではあまり問題になりませんが、高品位なオーディオ用の機械式セレクタや機械式ボリュームを装備するアンプの場合、空気中の湿度と使用に伴う経年劣化により、いずれボリュームやラウドネスコントロールなどから、特定位置でパチパチとノイズ音が発生するようになります。
ガリは長期不使用だったり非通電時間の長いアンプでも発生しやすく、なるべく通電状態を保つ、湿度の高い環境で運用しない、定期的にボリュームや各種コントロールノブをぐるぐる回す等により、ある程度はガリの発生を未然に防ぐことが可能です。それでもガリが発生してしまった場合は、定期的に「ぐるぐる回し」を繰り返すことで多くは目立たなくなります。尚、ボリュームのぐるぐる回しをする際には、突発的ノイズによる過大入力事故を防ぐために、一旦電源を切る事をお薦めします。それ以外のラウドネスコントロールボリュームやセレクタ、バランスコントロールの部等では、通電したままで(ボリューム位置を適度に下げていれば)問題無いと思いますが、何れにしろ大音量が流れるボリューム位置でぐるぐる回すことは避けて下さい。
どうしてもガリが取れない場合、接点導通スプレーなどをボリューム(可変抵抗器)に使うケースがありますが、この手の潤滑油は時にネガティブな音質的影響が少なくなく、拭き取りが不可能なボリューム内部に使うと非可逆的な音質変化をもたらすため、DIYでの安易な使用はお薦めしません。あくまでプロのメンテナンスで使う最終手段だと思って下さい。
余談ですけれど、ある日突然、アンプの片チャンネルから音が出なくなった原因が、管理人自身は普段一切使わない、よって存在を忘却していたL/Rバランスコントロールノブの通電不良に起因していた経験があります。故障原因を探ってL/Rコントロールノブを試しにぐるぐるしたところ、バリバリとノイズ混じりながらも音が出るようになり一件落着。出音が安定するまで数十回ぐるぐる回し、その後はボリュームや他のコントロールノブ同様に、ここも定期的に動かすようになりました。全く使わない入出力端子や可動部が、何時の間にか劣化して通電不良を起こす。これもオーディオ機器あるあるだと思っています。
むき出しの端子、ピンジャック、ACインレット等は時々クリーニングしよう
アンプに限りませんが、オーディオ機器の端子を室内で剥き出しのまま放置していると、空気中の汚れの付着と酸化により、経時と共に粉が被ったようにくすんでしまいます。多少酸化したところで放置しても機能的には問題ありませんが、あらためてオーディオケーブルを接続する際には、よりよい音質のために、新品同様にまで綺麗にクリーニングした上で接続するのが望ましいです。
端子の汚れを新品同様にピカピカに戻す為には、様々な成分のケミカル・・・接点洗浄剤、接点復活剤等が市販されています。しかしここで気を付けなくてはいけないのは、油性成分の洗浄剤や接点導通クリーナーは、何れの製品であれ音質が変わってしまう点です。巷で良く使われている接点洗浄剤や導通改善剤をこれまでいくつか試しましたが、中には塗布後に酷い音質になってしまうものもあり、オーディオ機器の端子にしばしば使われているのを見るにつけ、どうしたものかと思ってしまいます…( 3△3 ).。o
クリーナーの中には、他にも、端子の酸化皮膜を削り取るために非可逆的なコンパウンドを含む物や、カーボンや金属ナノ粒子など、一度塗布すると完全な剥離が難しい成分・・・即ち、良くも悪くも音質変化に於いて完全な後戻りが利かない製品もあります。オーディオ専用品として開発された高音質を謳う製品であっても、音質が変わってしまうことに変わりは無く、変化の方向性が自分の目指す音質と本当にマッチしているのか?よくよく吟味する必要がある様に感じています。
箱庭的”AUDIO STYLE”管理人としては、音質への非可逆的影響を避けるため、端子のクリーニングには非油性で、効果がマイルドな中性クリーナー、拭き取り後に残留物が残らないタイプの脱脂洗浄剤、アルコール類をお薦めします。しかしそれらのクリーナーでも、含まれる有機溶剤が一部の樹脂部品に対しての強い攻撃性を持つ場合がありますので、接点クリーナー類は、パーツの樹脂部分へ塗布しないように注意するなど、常に慎重な選択と、使用が求められる事を忘れないようにしましょう。※PPEに禁忌のシクロペンタンを含むため、PANDO 29Dも注意が必要です。
RCA端子の保護キャップ、ピンジャックプロテクターは必要か?
空気中の汚れの堆積と酸化皮膜を防ぐために、予防的に端子に被せるRCA端子、XLR端子その他の保護キャップが古くから知られています。たしかにこの手の製品を使うと端子の経時的な汚れを確実に避けられますが、副作用として音質が変化する点は無視できません。管理人も、オーディオ初心者時代にはほぼ全ての空き端子に保護キャップを被せていました。しかし、とあるオーディオショップで音質的なデメリットが大きいことを指摘され、その後は一部を除いて全て外しています。入出力端子の多いアンプでは特に多くの保護キャップを使うことになる為、ビニールやソフトプラスチックのキャップ素材の固有振動によって、音色が安っぽくなってしまいます。尚、大量にある樹脂製のピンジャックプロテクターを有効活用する方法として、使用していない休眠機器の保管時や、あまり音質を気にしなくて良いAV機器等に使うのはお薦めです。また、音質以前に接続事故を防ぐため、使用しないPOWER IN端子やPHONO端子に限定して使用するのは良いと考えます。
樹脂キャップに対してかなり高価ですが、真鍮やステンレスなど、金属製の切削パーツで作られた端子カバーも存在します。オーディオアクサリーメーカー製の金属製端子キャップやオーディオ機器用ショートピンであれば、適切な端子に適量使うことで音質向上を狙うことも出来ます。とは云え、この手のメタルキャップ類は樹脂製とは違い、たった一個でも音質に与える影響が少なくなく、メリットと副作用を天秤に掛けながら、適切な位置と数を見極めるセンスが必要です。やみくもに空き端子全てを塞いだ場合、使い過ぎによるデメリットで逆に音質がおかしくなってしまいますので、ある意味、自ら主体的に音質をコントロールできるオーディオ中~上級者向けのアイテムでもあります。※同様に前述の樹脂キャップ類も、キツく歪みっぽい音、固い音質を緩和する為に、制振目的で使う選択肢は否定できません。
ヒューズ交換による音質変化は侮れません
電器知識があり、自作アンプが趣味のオーディオマニア以外でアンプの回路に直接手を出す無謀な方はいないと思いますが、電気工学素人でも唯一手を出せそうなパーツに、アンプによってはDIY交換可能なガラス管ヒューズがあります。このヒューズの種類によってアンプやその他のオーディオ機器の音質はけっこう変わるため、オーディオアクセサリーの一つに、交換用の高音質ヒューズなるものが色々存在しています。
オーディオアクセサリーとして販売されている各所交換用ヒューズは高価ですが、さすがに音質的には吟味されていて、機器付属の産業用汎用ガラス管ヒューズに比べて高音質に感じられる場合が多いです。ただ、音質的な相性から付属ヒューズの方が良好なケースも経験していますし、安い汎用ヒューズもも製品それぞれ音質がかなり違います。何なら向きでも結構音質が変わってしまうので、ヒューズに纏わる音質沼はなかなかのものです。
一般的なガラス管ヒューズの規格は32mmの大きなヒューズか20mmの小さなミゼットヒューズの2種類。適合A(アンペア)はそれ以上の電流が流れた場合、ヒューズが物理破損する電流値で、即断型ファストブロー(FB)とタイムラグ型のスローブロー(SB)が存在します。これらの規格は機器側のヒューズ取り付け位置か説明書に必ず明記されていますので、ヒューズを交換する場合は、基本的に必ず明記されている規格と同じヒューズにします。
アンプの故障の中でもヒューズの断線は非常に多く、電源状況など原因不明の突発的な過電流からヒューズが断線することは少なくありません。管理人も、突然アンプの電源が入らなくなり補償修理を依頼したところ、実は単なるヒューズの断線だったことが過去に数回経験しています(Musical Fidelity A1 Junior etc・・・)。そんなこともあり、海外製のアンプなど、アンプメーカーによっては最初から交換用のスペアヒューズが説明書と共に同梱されていたりします。尚、交換しても直ぐに再度ヒューズが切れる場合には本格的な故障も考えられますので、その場合には潔く修理に出しましょう。
比較的多くの機器では、主電源ヒューズ交換用のホルダーカバーやソケットカバーが背面ACインレット(IEC)インレットの側にありますが、中には天板を開けて内部回路にアクセスしないとヒューズ交換が出来ないアンプもあり、そういった製品でユーザー自らがヒューズ交換をした場合、場合によってはメーカー補償の対象外になりますのでご注意ください。
電源ケーブルの交換
今時の一般的なオーディオマニアの間ではヒューズ交換よりも圧倒的にこちらの方がメジャーだと思います。アンプを含め、電源ケーブルが着脱可能なオーディオ機器の場合、電源ケーブルを交換することで、少々大袈裟かも知れませんが、時にアンプの機種交換に匹敵するような激変を体験することすらあります。オーディオケーブルの呼ばれるもの中でも、アンプの電源ケーブル交換は、経験的に、聴感上最も変化幅が大きく感じられるポイント。各種オーディオケーブル類の中でも、特に電源ケーブルは投資費用に対して体験できる変化量が大きいため、信号ケーブルやスピーカーケーブルに比べてコストバリューに優れているとも云えます。
大きな変化をなるべくリーズナブルに体験したい場合は、オーディオ用に設計された切り売り電源ケーブルと、電源プラグ/インレットプラグを別途揃えつつ、自分で組み立てることで、完成市販品に比べてよりコストパフォーマンスに優れた電源ケーブルを手に入れることも可能です。あくまで自己責任ではありますが、基本的な電器知識があり、手先が器用で簡単な組み立て工作に覚えのあるみなさんは、電源ケーブルのDIY製作にチャレンジしてみることをお薦めします…( ੭ ・ᴗ・ )੭♡
家庭用電源の電圧、周波数、外来ノイズの影響
日本の家庭用購入電源は通常100V±6V 50/60hzとされていますが、実際には地域や時間帯によって変動があり、平均的に100Vを下回る家や、上回っている家がありります。また同じ家でも、大元の配電盤から送電距離が遠くなるほど電圧は下がります。良く知られているのは50Hzよりも60Hzの方が音質が良くなる事。そして電圧み低いよりは高めの方が、音質的に良いと言われています。
そもそも日本は基準電圧が100Vと低いため、米国115Vと比べても音質的に不利且つ、欧州の200-240V地域と比べると更に不利な環境にあります。よって海外製品の場合、アンプも他のコンポーネントも、本来の設計時に意図された音質よりも、エネルギー感が弱く、パッシブで神経質な傾向に傾いていることは知っておいて良いと思います。
その為、日本国内でも、オーディオ専用に200V電源を導入(工事そのものは簡単です)して、わざわざ200V仕様の製品=海外から取り寄せて使っているハイエンダーの方々も一部に居ます。管理人も、個人輸入した一部の米国仕様の製品では100V→115Vステップアップトランスを使用していますが、そのまま103Vで低電圧動作させた場合にくらべ、聴感上のエネルギー感が全く違います。とは云え、国内外のオーディオ製品混在する一般的家庭では、100V仕様の製品と上手に付き合うしか無いのが実情だと思います。
また居住環境によっては家庭用電源へ飛び込む各種外来ノイズが非常に多く、そもそも音質的に本来望ましい品質の、ローノイズ且つ高めの電圧(出来れば60Hz)を得ることが困難だったりします。高価なオーディオ機器でも、なんとなく篭もった濁った音しかせず、ケーブル類を変えてもあまり音が変わらなかったりする環境は、案外そもそも電源そのものに問題があるケースが少なくないように思います。
ノイズがそれ程でもない環境では、コンセントに並列に挿す簡易回路のノイズフィルター等が一定の効果を発揮することもありますが、電源環境が劣悪な事で音質に根本的なボトルネックを感じる場合、オーディオ機器へ電源供給するための大元の部分に、オーディオ用に設計されたクリーン電源の導入を検討する価値があるかも知れません。
アンプ内部に溜まったほこりを清掃する必要性
発熱の小さな密閉型のオーディオ機器とは異なり、家庭内で使用されるアンプが抱える構造的問題の一つが、天板から侵入するハウスダストです。大抵のアンプに設けられている天板の放熱スリットからは、徐々にハウスダストが侵入し、それらが堆積して筐体内温度を上げ、音質を悪化させ、更に静電気などを呼び、最悪、アンプを故障させる可能性があることです。個人的には、学生時代に使っていたONKYO A-917で、リレー周りに堆積した埃が原因で電源が入らなくなったことがありました。
前提として、手先が不器用だったり電器知識が全くない御仁には当然推奨されませんが、可能な場合は、年一など定期的に天板を開けて、内部に溜まった埃を、除電ブラシ、静電気除去ブラシを適宜使いつつ、掃除機のソフトブラシノズルで吸い出す事が望ましいと個人的には考えています。当然、掃除中にノズルをぶつけてしまい回路部品を破損するリスクはありますし、あくまで自己責任であり、メーカー保証の対象外なのは言うまでもありませんが。
アンプに敷くインシュレーター
通常、オーディオアンプにはゴムや成形樹脂の足が4点(まれに3点)で取り付けられています。このままでも機能的には特に問題ありませんけれども、コスト的制限の中で設計されたアンプの場合、足の部分には最低限のコストしか使われず、音質的に配慮しつつ理想的な設計が為されている機種は希です。その為、この部分に敢えて純正足の代用として振動吸収効果があり、素材の響きの良いインシュレーターを追加する事で、上質なオーディオボードへの設置にも準じる音響的効果を体験することも出来ます。
一般論として、インシュレーターによる効果は直接キャビネットの大きな震動を受けるスピーカーに最も強く反映されるため、ついアンプやCDプレーヤーなどの機材側は後回し且つ疎かになりがちです。それでも、実際にオーディオコンポーネント側で試してみると、システムトータルの音質傾向を左右する、無視できないレベルの音質変化を体験するオーディオユーザーは少なくないでしょう。
↑こちらのエントリは、カナダ Moon by Simaudioのプリメインアンプを使い、オーディオ用に市販されている色々なインシュレーターによる音質的メリットとデメリット比較テストしたものになります。
~まとめ~
全部で15 Tipsとかなり長くなりましたが、オーディオアンプの運用方法について、前回紹介したのWHAT Hi-Fiによるオーディオアンプで避けるべき7つの間違いでは触れられていないポイントを、今回箱庭的”AUDIO STYLE”管理人による番外編の考察としてまとめてみました。より良い音楽再生の為に、オーディオ初心者の方のみならず、中~上級者の方にもお役に立てるノウハウが多少なりともあれば、辺境の一オーディオマニアとして嬉しく思います。
【ピュアオーディオアンプのより良い運用方法】
7つの間違い|15の注意点