Monitor Audio Monitor 1 “Gold” (Monitor One) 古き善き英国製超小型スピーカーを入手しました

遡ること30年前・・・管理人が未だ10代だったの頃のお話です。当時はまだまだバブルの名残りといった雰囲気で秋葉原の電気街にも活気があり、ピュアオーディオがマニアのみならず世間一般にも普及していて、スピーカーアンプCDプレーヤーが定価ベースで3点30万円の、重くて大きな国産オーディオ製品が大手電機メーカー毎にしのぎを削っていました。更に90年代に入ると、超円高に圧される形で学生にも手が届くような価格帯の「バジェットHi-Fi」と呼ばれる欧米のお洒落な薄型軽量コンポや小型スピーカーが輸入され始め、普及価格帯の国産製品と大差無い価格で日本市場に並び始めます。

特にお手頃価格のお洒落な海外製スピーカーは日本市場でも歓迎され、国産スピーカーのシェアを徐々に浸食し、当時は郊外にある激安家電量販店のオーディオコーナーですら英TANNOYや米Infinity等の小型スピーカーが並んでいたほどです。※80~90年代までは、家電量販店のかなりのスペースを単品オーディオやステレオコンポの販売コーナーが占めていました。そんな低価格ピュアオーディオ製品が輝いていた時代、秋葉原を徘徊しながら試聴して心を射貫かれつつも、ご縁に恵まれず、ディスコンで手に入れることが出来なかったスピーカーやアンプ、CDプレーヤー等々は色とあり、今でも、あの機種は良かったな~なんて時折思い出す事があります。

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イギリス製スピーカー モニターオーディオとの出会い

そんな管理人の思い出に残る欲しかったスピーカーの一つに、英国モニターオーディオ社の超小型スピーカーMonitor 1 Goldがありました。モニターオーディオは今でこそ日本のオーディオマニアの間では良く知られた、英国を代表するブランドとして確固たる地位を築いていますが、当時はまだ日本に輸入されはじめた最初期だったと思います。

出会いは確か秋葉原のラジオ会館か秋葉原デパートがあった外側。駅前を歩いていると、オーディオ機器やらパーツやらをごちちゃごちゃと半露天売りしていたお店から何だかとても良い音が聞こえてきて、近づいてみると、ローズマホガニー仕上げの美しい極々小さなMonitor Audio Monitor 1 Goldからものすごくクリアで鮮烈な音が出ていたのですね。記憶が確かならば、建物の中の店では無く外での展示でした。繋げられていたプリメインアンプはROTELの薄型で一番安いモデルで、トーンコントロールがあった記憶があります。たぶんですが、ROTEL RA930AX Mk2かRA930BXあたりだったと思います。

rotel ra930axmk2_ra920ax

当時のMonitor Audio Monitor 1 Goldの店頭価格は45000円ほど。ROTELのプリメインアンプも合わせると10万円くらい。今なら即決してしまいそうな価格ですけれど、欲しいと思いつつも当時の僕の予算感覚では即決できないまま、結局手にすることが出来ずに月日が過ぎ去ってしまいました。

Monitor One Goldと、25年超ぶりの再会~♪

それからかれこれ30年近く時が過ぎていると思いますが、数ヶ月前、インターネット某所で見るからに状態の良さそうなMonitor Audio Monitor 1 Goldが出品されているのを見つけてしまい思わず即決。今更Monitor Audio Monitor 1を探していたわけではないのですけれど、出会いは突然やってくるもの。過ぎ去りし日々の思いが巡り巡って顕現してくれたみたいな感じでございます~゜゜(´▽`。)°゜。

前オーナーさんがずっと丁寧に扱ってくれていたようで、各ユニットの見た目は未だに新品同様、ナチュラルオーク突き板仕上げのキャビネットに目立つ傷も無く、とても25~30年前に製造されたスピーカーには見えません。もちろんMade in Englandのハンドクラフト。小さいながらもその佇まいは、中華製造で如何にもコストダウンされた素材を纏う現代の低価格スピーカーではなかなか見られない本物感と高級感が漂います。

管理人の集めている低価格帯の小型スピーカーも、欧米の高級ブランドにもかかわらず、実はMade in Chinaが少なくなく、質感と佇まいに何処かしらおもちゃ感が否めない製品が多いのが実情です。けれどまだ90年代のイギリス製品は低価格でも本国生産が主流でしたので、並べてしまうと家具としての品位が見るからに違う「本物」が其処にある印象です。今更ながら、生産拠点のグローバル化によって、本来、当たり前に通底していた手工芸的味わいが希薄化し、オーディオ機器に於ける趣味性の低下の一因になってしまったのだろうとしみじみしてしまいました。

Monitor Audio Monitor One GoldとThe MA100 Goldのスペック

Monitor Audio Monitor 1 Goldはいつ頃の製品だったか?既に本国サイトにも載っていないため出自が定かではないのですけれど、米国で1991年のレビューがあるので初期のモデルはこの頃には既にあったようです。初期モデルでは各ユニットの取り付けがバッフル面から少し浮いていたのですが、途中から面一になっています。また、一般的に日本国内で流通していたMonitorシリーズのスピーカーはバイワイヤリングのバインディングポストですが、現地の初期型ではシングルワイヤリングのものもあったようです。

僕が最初にこのスピーカーに出会った際の名前はMonitor Audio Monitor 1 Goldで、ローテル商事が輸入代理店でした。当時の希望小売価格は29800円(1本)。確か1998年頃に輸入元がHi-Fi JAPANに移り、それからのカタログでは「Gold」の文字が消え、シンプルに「Monitor 1」になりました。今回僕が手に入れた個体は面一(つらいち)ですので、Hi-Fi JAPANが輸入した製造後期のものだと思われます。希望小売価格は39800円(1本)に値上げされましたが、今となってはそれでもバーゲンセールでした。見た目的に現代の基準だとペアで20~30万くらいしそうな高級感がありますが、当時はこんなに高品質な仕上げのスピーカーがペア実売4~6万円で購入できたのです。現在の日本人の年収中央値はあの頃よりもずっと低いのに、オーディオ製品の価格は逆行して0が桁一つ増えてしまいました~・゜・(ノД`;)・゜・

トゥイーターには1986年に開発され、2024年現在の製品でも採用されているゴールドドームトゥイーターの初期型が載っています。セラミックコーティングされたアルミニウム/マグネシウム合金から形成されており、理想的な剛性と減衰特性のために特定の厚さに陽極酸化された金です。

他に同機種からAV用途に派生したと思われるThe MA100 Goldと呼ぶモデルがありましたが、日本国内で販売されているのは見かけませんでした。トゥイーターに保護用のメタルメッシュが被せてある点以外、The MA100 Goldの見た目はMonitor1とほぼ同じ。中身は防磁型のウーファーが積まれていて、ローエンドも10Hzほど拡張しています。こちらはシングルワイヤー仕様が主流だったようですが、画像を漁るとバイワイヤリングタイプも見つかるので、Monitor 1 Gold同様、製造時期で仕様があちこち変更されている模様。

Monitor Audio Monitor 1 Goldの音質レビュー

正直なところ、思い出補正で記憶が美化されていて、実物を手にしたら、所詮は90年代のスピーカーだよなぁと夢から覚めてしまう事はそこはかとなく覚悟していました。しかしながら、開梱して恐る恐る音出しをしてみたところ、いきなり想像を上回る良い音がして嬉しくなってしまいました\(*^o^*)/。

このスピーカーに惹かれた当時の自分の見識が間違っていなかった事を今更ながら噛みしめています。現代のスピーカーと比べても全く引けを取らない鮮烈なクリアネスと、クリーンで開放的な音場感。キラキラした明るさの中にも英国伝統の深みのある空気感、メタルドーム特有の硬質でハイスピードな高音域。その高域一辺倒に偏らない、嫋やかで柔らかな耳当たりの情緒的サウンドが両立していて、手元にある超小型スピーカーのコレクションの中でも、あれ・・・これもしかして一番好み!?みたいな。

弱点は低域方向で、当時購入に至らなかった理由として、あからさまに低域が薄すぎる点を気にしたことが大きな理由でした。・・・が、これ、しっかりしたアンプと低域に厚みのあるスピーカーケーブルを奢ってあげることで、案外気にならない程度のバランスで鳴ってくれそう。ROTEL RA930AX MkⅡやRA931みたいな低出力ローエンドプリメインアンプとの組み合わせでは、本来のポテンシャル以上に線の細い鳴り方になってしまうだろう事は、今となっては想像に難くありませんし。。。重低音域は弱いですが解像度は高く、中低域に小型スピーカーにありがちな強調感がありませんので、バスレフの響きを活かしながら自然なグラデーションでフェードアウトする、量感が薄くても聴感上は明瞭で違和感の無い低域です。

中域は柔らかく豊潤でチャーミング。明るさの中にも加えて適度な陰影があり、音楽の表情を潤いの中で細かやかに描写する品の良い鳴り方。高域はモニターオーディオのメタルドームトゥイーターが持つ特徴が活きた硬質で煌びやかな鳴り方ですが、高い分解能を保ちつつも(後継機達とは異なり)響きがウェット。メタルハードドーム特有のキツさにもバランス的な節度があり、ソフト素材のウーファー側と不思議なほど自然に調和しています。クロスオーバーが3800Hzなのも絶妙。※新品で展示されていた当時の店頭試聴時とは違い、経年によりトゥイーターの硬さが取れて馴染んでいる部分はあると思います。

音場感は広くクリーンなイメージですが、バスレフ型ですので、後方の壁との距離等の調整如何で、低音域の厚み含めてある程度コントロールが可能です。但しこのスピーカーの美点の一つであるステージイメージを優先する場合、スピーカースタンドを使い、ある程度は周囲のスペースが取れる空間にセッティングするのが良さそう。低域をある程度犠牲にしても尚、価値のある清廉で透明感の高いステレオイメージングが得られると思います。

Monitor Audio Monitor 1 Goldの音質的特徴は、透明度の高い高解像度系のサウンドにもかかわらず、しばしば相反する要素となる有機的な歌心とリズミカルな音楽性を両立している点です。当時の記憶では一回り大きなMonitor 2 GoldやStudio 2も音楽性が高く低域方向も出てよりウェルバランスでしたが、最小モデルのMonitor 1 Goldは更に音楽性に秀でていました。全ての音源に対してスピーカー1セットで済ます場合には、陰影が深く対応力が広いMonitor 2以上のモデルが絶対的に優れているのですが、僕みたいな特殊な複数システム使いには、低域の量感を諦めても尚、Monitor1には明るくより魅力的に聴こえるチャームポイントがある気がします。

ユニットとキャビネットの品質

キャビネットの仕上げは大変に美しく、1センチ厚のMDFにローズマホガニー及びナチュラルオークのリアルウッド突き板仕上げが、如何にも古き良き英国の伝統的スピーカーらしい素朴な高級感を醸し出しています。本国では天然木のベニヤを使わずに価格を抑えたブラック塗装仕様も存在しました。背面にはバスレフポートがありますが、黒く塗られているだけで無化粧のMDF剥き出しなのが当時のスピーカーらしくもあります。

Monitor Audio Monitor シリーズのカタログを読むと、同一或いは近似ラインナップ上の箱サイズ違いで、ミッドバスウーファーのコーンにそれぞれ別の素材が使われています。見た目にはどれも保守的な真っ黒のコーンに合成ゴムのエッジを貼り合わせたものですが、Monitor 1 Goldの場合、カタログにはspecial impregnated coneと書かれていて素材が判りません。見た感じの推測ですが、振動板はパルプ紙に樹脂を含浸させたもので、最小モデルのMonitor 1 GoldとMA100 Goldのみセンターコーン部分に重ねてファブリックが使われているっぽい。ツルツルしたサーフェスでは無く、振動モードに変なピークが出来ないように拘った感じの作りです。

また、見た目的に同時期に作られたVienna Acoustics MOZART SignatureT-2のノルウェーSEAS製ポリプロピレンウーファーと非常に似ているのですが、色々調べてみたところ、どうやら80~90年代の往年の名機であるProAc Super Tabletteと全く同じSEAS製の11cmユニットみたいです・・・どうりで音質が良いわけだ~\(*^o^*)/。

Vienna Acoustics T-2 “MOZART” Signature

98年頃を境に、このモデルシリーズの後継機種からは、伝統的な素材の黒いウーファーから、現代のMonitor Audio製品の基礎となるC-CAMと呼ぶメタルコーン(セラミックコーティングされたアルミニウム/マグネシウム合金)へと徐々に置き換わります。C-CAMによりMonitor Audioはより現代的なハイスピードでパルシブなサウンドを獲得しましたが、個人的には英国内生産だった旧モデルの音質のイメージが頭から離れず、試聴はすれどもギリギリ購入には至らないメーカーになってしまいました。※あくまで管理人の個人的趣向に拠るもので、その間に世界的にはより知名度と評価を高めつつ大成功を収めることになります。

時代を超えてサイズ的な後継機でもあるRadius Series 90/ Radius 90 HDもブログで何度も紹介していて、聴く度に毎度欲しくなるのですけれど、Monitor 1 Goldの幻影に取り憑かれていた僕は、結局踏み出せないままここまで来てしまいました。Radius Series 90 / Radius 90 HDは明るくクリスプでドライ。対する往年のMonitorシリーズは響きに陰影があり何処までもウェット。同一設計上にあるトゥイーターを積んでいても、音質は時代と設計者によって変わりゆくものですが、あらためてMonitor 1 Goldを手に入れて、僕がMonitor Audioに求めていたのはこれだったんだなぁと。

~まとめ~

管理人にとって原点回帰と呼べるスピーカーの一つを今になって入手する事ができ、図らずも学生時分からの感性がブレていない事を再確認することが出来ました。当時、設計から製造までほぼハンドクラフトで作られた、技術者のアナログ的センスによって創作されたスピーカーにもかかわらず、コンピュータに依る音響設計が施された高精度な工業製品に劣らないどころか、そこらの自称ハイレゾ対応スピーカーよりもクリーンでクリアな音がする。音響技術の進歩とやらが、実際にはコストダウンの最適化にばかりリソースを取られていて、新製品の音質には云うほど結びついていないのかも知れない。抑も、Hi-Fiに於ける技術的進化とは何なんだろう?と今更ながらそんな事を考えさせられる今日この頃でございます…( ̄▽ ̄;)。

+For
高鮮度で明るく美しい高音域
透明で潤いとニュアンスに満ちた中音域
リズミカルでチャーミングな音楽性
クリーンでオープンなステージイメージ
家具としての仕上げの良さと上質な佇まい
古き良きブリティッシュサウンドと現代的なクリアネスの調和

-Against
低域、重低音域の量感不足
簡素な背面仕上げ

Monitor Audio Monitor 1 Goldが聴けるYouTubeリンク集

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コメント一覧 (2件)

  • コメントありがとうございます。

    モニターオーディオだけではありませんが、複数の欧米スピーカーメーカーが2000年頃から一気にグローバル戦略化し、AVホームシアター向けラインナップの大幅強化、生産国の海外シフト等々で、各ブランドの持ち味だったローカルな個性が結果的に薄まってしまった印象です。

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