【ピュアオーディオアンプのより良い運用方法】
7つの間違い|15の注意点
「ステレオアンプで避けるべき7つの間違い。アンプとシステムの性能を最大限に発揮できない良くある失敗例」とのタイトル。イギリスのWHAT Hi-Fiで一昨日アップされたばかりの記事ですが、内容がとても有意義で面白かったので、箱庭的”AUDIO STYLE”管理人の視点で+αの解説をしてみたいと思います。以下、グリーンの文字が日本語訳文(引用)。原文はBecky Roberts WHAT Hi-Fi編集長です。
オーディオシステムを立ち上げ、目の前で音楽を鳴らすことを急ぐあまり、アンプの理想的なセッティングや機能の重要な部分を見落としたり、他のシステムとの最適な組み合わせを十分に検討しなかったりする間違いは特にありがちです。以下は、アンプで避けるべき簡単な事柄のリストです。このリストは、多くのオーディオマニアにとって注意喚起にしかならないでしょうが、他の人にとっては便利な新しいアドバイスになることを期待しています。
デジタル入力があるからといって安易にアンプ内蔵DACを使わない
デジタルソースの普及に伴い、インテグレーテッドアンプやプリアンプのデジタル接続への対応が益々進んでいます。しかし、アンプ内蔵DACのD/A変換回路は、必ずしもアナログ部分ほど良質な設計がされているとは限りません。例えば、アナログとデジタル出力を両方持つCDプレーヤーをお持ちの場合、双方共にアンプに接続し、どちらの音が良いか?つまりどちらの機器がより高性能なDACを搭載しているのかを確認しましょう。
普及価格帯のピュアオーディオアンプにDACが搭載され始めたのは00年代後半頃からでしょうか。特に最新設計のプリメインアンプ、一部のプリアンプでは、DAC基板、D/Aコンバーターに加えてBluetooth等の無線機が内蔵されたモデルが徐々に増えてきました。
同様に、ステレオオーディオアンプを買い換え、アップグレードする場合、特にデジタル接続やBluetoothが必要でなければ、DAC/Bluetooth内蔵型のアンプをわざわざ購入する必要はありません。なぜなら、アンプに支払うコストの一部が無駄になってしまうからです。必要ない機能の為にお金を払うことになり、純粋なオールアナログ機種の方が、金額当たりのパフォーマンスが高くなるかもしれません。後々気が変わったら、いつでも外部DACを購入することが出来ますし、一般的に、外部DACの性能はアンプ内蔵DACのパフォーマンスよりも優れていることが判っています。
コスト的制限の元で作られる多くのプリメインアンプ/プリアンプの場合、DAC基板の追加や無線、ストリーミングへの対応は、それがそのまま回路のコストに跳ね返ります。同じメーカーの同価格帯製品で、シンプルなプリメインアンプ/プリアンプと、デジタル基板を載せたモデルを比較してみましょう。アンプ内部を比べてみると判りますが、多くのメーカーで、多機能モデルのアナログアンプ回路側に、トランスやコンデンサのサイズダウン、出力容量、ヒートシンクの品質など、様々なコストダウンが見受けられます。このことから、同クラス同価格帯であれば、多機能デジタル回路を内蔵しない製品の方が、アンプとしてはより高品質且つ高音質になると云えそうです。
実はこれ、アナログ時代にも別の形で見られたもので、アンプにレコードプレーヤー用のMM/MCフォノボードを内蔵するとコスト面で不利なだけでなく、PHONOボード由来のノイズで音質的にも不利になるため、敢えて非搭載だったり、追加オプションボードの設定にするメーカー/製品が少なくありませんでした。これはデジタルでも同様で、デジタル回路とアナログ回路は、両者の電源を分離した上で回路をなるべく離してレイアウトする事が、本来のピュアオーディオに於けるセオリーの筈です。これらを統合した場合、ノイズ等による音質的干渉が多少なりとも避けられないからです。
現代に於けるデジタル統合型の製品は、多機能で見かけのお買い得感もあり、巷の売れ線となり、よりトレンドに乗っている印象があります。しかしそのお買い得感には、しわ寄せとしてアナログ回路の部品コストを削った上で、引き換えに成り立つ側面があるのは否定できません。加えてデジタル統合型のアンプは、DAC回路の品質面にもあまりコストを掛けられないため、結局、単体DACや単体CDプレーヤーのアナログ出力のクオリティを超えられないケースも少なくありません。限られたコストの中で、音楽とシンプルに対峙する為の最大限のパフォーマンスを求める場合には、旧来のシンプルな設計のオーディオアンプにむしろアドバンテージがある様に感じています。
同軸 or 光デジタルケーブルの選択
デジタル接続を使用する場合、同軸デジタル接続か光デジタル接続か?機器側で選択可能な場合には、どちらを選ぶか検討してみてください。同軸デジタルは電気を使用して音声を伝送しますが、光はレーザー光を使用して信号を伝送します。私たちの経験では、同軸接続の方がわずかに音が良くなる傾向があり、また利用できる帯域幅も広いため、通常96kHzに制限される光デジタル接続に対し、224bit/192kHzまでの高音質をサポートすることが出来ます。
S/PDIFの同軸入出力と光デジタル入出力。同じ機器間で、双方を敢えて同時に併用して使っている管理人としては、どちらか片方を選ぶのではなく、両方とも繋いでみて欲しいところです。大抵の機器は入出力共に同軸/光の両方を備えていますが、にもかかわらず片方の接続方法にのみ排他的に拘るのは、オーディオ機器から得られる音質の選択可能性を自ら閉ざす愚行になりかねません。
ケーブルによる音質変化は後述するデジタルフィルターのようなもので、しかも聴感上はデジタルフィルターの切り替えよりもずっと変化が大きいです。ピュアオーディオを志す場合、同一機器同士で敢えてグラスファイバー/石英コアの光デジタルケーブルと、高品位な同軸デジタル(或いはバランスデジタル)接続を両方とも繋げ、音楽ソースの音質傾向によって入力を切り替えられるようにする事をお薦めします。
デジタルフィルターを見逃さない
ステレオオーディオアンプがデジタル接続に対応している場合、機種によっては複数のデジタルフィルターを備えていて、切り替える事が出来るかもしれません。それらは通常、「高速」、「低速」、「線形位相」、または「最小位相」のバリエーションです。非常に大まかに言うと、デジタル フィルターはデジタルからアナログへの変換の最終段階であり、元の信号波形を再構築するために、その過程で本質的に発生する信号のエイリアス(ゴーストイメージ)を様々な方法で除去する働きをします。私たちの経験では、各デジタルフィルターを切り替えても聴覚上の大きな違いはありませんが、個人の好みやシステムにより適した微妙な音質変化がありますので、試してみる価値は十分にあります。
これはあくまでデジタルフィルターの切り替え機能を搭載した機器のみですけれども、実際、手持ちで切り替え機能を搭載しているSACDプレーヤーや、単体DACに搭載されているデジタルフィルター切り替え機能によって音源毎に音質の微調整が可能になるため、管理人のように聴覚過敏で細かな差異に神経質なリスナーには痒いところに手が届く機能です。一例として、録音ソースに問題がなく音質を優先する場合はシャープロールオフ。聴き疲れする録音ではスローロールオフを選択します。
システムマッチングを軽視しない
接続されているステレオスピーカーのペアとのアンプの相乗効果は極めて重要です。アンプとスピーカーの電気的相性は、アンプの出力(スピーカーに供給できるワット数)、スピーカーのインピーダンス特性 (アンプがスピーカーを駆動するのがどれほど難しいか、Ωで測定) とスピーカーの感度 (特定の入力に対してスピーカーがどれだけ大きな音を出すか、dBで測定)の3要素で表され、システムの(注:音質的な)生死に関わります。
アンプがスピーカーを適切にドライブするのに十分なパワーが無い場合、ダイナミクスが不足し、サウンドにパンチがなくなり、最悪の場合ツイーターが損傷する可能性すらあります。おそらく直観に反するかもしれませんが、強力なアンプを強力に駆動するよりも、ドライブ不足のアンプで歪が多くなる方が、スピーカーにダメージを与える可能性が高くなります。特にトゥイーターにダメージを与えるのは歪みなのです。システムをより大きな音で再生したい場合は、より強力なアンプではなく、むしろ感度の高いスピーカーを選ぶと良いでしょう。スピーカーの感度が3dB上がると、アンプの出力も2倍になるからです。
また、システム内の他のコンポーネントとの音質的キャラクターの相性も考慮する必要があります。例えば、何かしらトーンバランスに偏りがある機器は、理想的を云えばバランスの取れた他の機器と組み合わせるべきではありません。
実のところ、ピュアオーディオに於ける真の課題は後半で触れられている相性問題では無いでしょうか。一定の規格範囲で作られた電化製品同士とは云え、個別に設計されたオーディオ機器の間には避けて通れない相性がどうしても存在します。特にスピーカーとアンプの関係は、個人的にはドライブパワーに理想的なスイートスポットが存在しているように感じています。アンプの単純なW(ワット)数表示のみならず、電圧と瞬間供給可能電流の関係、ダンピングファクター等の要素が複雑に絡むため、つまりは実機でのトライ&エラー頼りなのですけれども。。。アンダードライブ傾向では散漫な音になり、逆にオーバードライブでは詰まったような音になり、いずれにしろ、スピーカーとアンプが本来持つ水準の高音質は得られません。アンプ×スピーカーの潜在的能力に対し、リミッターが取り払われたかの如く伸び伸びとした高音質を得るためには、機材それぞれの価格やグレードの積み上げよりも、組み合わせの相性を探り当てる事が本質的に重要だと考えています。
バランス接続が常に良いとは限らない
すべてのステレオオーディオアンプはRCA接続のアナログライン入力を備えていますが、特に高価格帯のアンプでは、バランス信号を伝送する3ピンXLRアナログ入力も装備されている場合があります。バランス接続の主な利点は、電気的ノイズの除去に優れていることで、電気的ノイズの多い環境、あるいは非常に長いケーブル配線で使用する場合に有効です。とは云えバランス接続は、特に真のハイエンド領域以外では常に良い音になるとは限りません。それらはすべて、アンプのバランス接続回路がどれだけ上手く設計されているかにかかっています。アンプにXLRとRCAの両方の接続端子がある場合、長期的な好みを決める前に、両方を試してみることをお薦めします。
これも前述したデジタルケーブルでの話と被りますが、機器側の入出力共に、XLRバランス入力とRCAアンバランス入力の両方を備えているのでしたら、どちらか?ではなく両方とも繋いでみるのは如何でしょうか?オーディオは、バランスorアンバランス接続の回路の違いに加え、ケーブルの種類によっても音質は大きく変わります。対して入力する音楽ソースの音質は種々様々。同じ機材の組み合わせから、ここでも2系統の音質的違いをセレクタの切り替えによって得られる訳ですから、音源の音質傾向に合わせてケーブルを切り替えて愉しむ選択肢を放棄する必要はありません。入力経路の選択肢を増やすことで、デジタルフィルターの切り替えや、ある種のイコライザー以外でも、単一システムから複数の異なる音質パターンを引き出すことが可能になります。
傾き、歪みやぐらつきのある土台に設置しない
ステレオアンプは、設置する場所によってそのパフォーマ ンスにとても大きな差が生じます。一般的に、ガラスの棚板はより音が前に出る傾向がありますが、対して木製の棚板は、典型的な結果として暖かく丸みのあるサウンド傾向です。しかし、素材よりも重要なのは、土台が剛性に優れ、設置面が水平で共振が少ないこと、つまりアンプに伝わる悪い振動を最小限に抑えられることです。また、全ての機材はラック内の温度をかなり上昇させる可能性があるため、アンプが熱くなり過ぎたり、オーバーヒートしないように、壁やラックから数インチのスペースを確保することも重要です。
フラットでリジットなボードなりラックの上に機材を設置するのはオーディオマニアにとっては当たり前に過ぎて言わずもがなですけれども、世の中にはとんでもない場所にスピーカーやオーディオ機器を設置するケースが案外少なくないのかも知れません。電化製品ですので水場の近くに置かない。湿度が高くなる場所、夏場の温度が高すぎor冬場に低すぎる環境に置かない。なるべく直射日光に当てない。
オーディオ用に元々設計されていない既存の家具等に載せたり押し込める場合には、水平が取れていて、出来るだけ響きの良い硬質なボードやシェルフに載せること。剛性の低いボードやカラーボックス等では、空きスペースにも本や機材を入れて重量を増した上で、なるべくオーディオボードを敷くこと。(特殊な専用スタンドを除く殆どの場合、スピーカーは直置きせず必ずインシュレーターを使います) ラックやシェルフ内ではクリアランスを十分に取り、機材の熱が篭もらないように設置すること。
ちなみにオーディオには「機材同士を重ねて置いてはいけない」と云う話は古くからしばしば語られるセオリーの一つです。しかし、比較的軽量で薄型の海外製オーディオ機器を中心に使ってきた管理人の場合、このセオリーについてはそこまで厳密に守っていません。オーディオメーカーの公式画像等でも、昔から重ねたセッティングは少なくありませんし、響きの良いシャシーと天板を持つ機器に載せる場合、載せた機材側の音質も相乗効果で良くなるケースを色々経験しています。
スペースの都合によりオーディオ機器を直接重ねる場合は、互いの剛性や重量負荷に無理が無い事、そして発熱の大きな機材を下側にしないことが大切です。一般的にはアンプが上側で、CDPやDAC、各デジタルストリーマーが下側になる事が多くなりますが、例外もあります。アンプ類は発熱が大きいと思われがちですが、実際には様々で、消費電力の小さなデジタル機器でも発熱が大きな機種は多くありますし、AB級/D級問わず、あまり発熱しないアンプもあります。さすがにA級アンプと真空管アンプは熱くなりますけれども…( 3△3 ).。o
ディスプレイを点灯したままにしない
小さなことですが、電気的ディスプレイを持つ機器は、その表示をオフにした方が音質が良くなることが珍しくありません。これは、ディスプレイが音に干渉する可能性のある電気ノイズを発生させる可能性がある為です。ステレオアンプの場合は入力と音量のみの表示が多いので、消灯可能で表示する必要性が無い場合はオフにしてください。
液晶ディスプレイ、近年では有機LEDディスプレイ等々を採用する製品も見かけるようになりましたが、昔から知られるオーディオのセオリーの一つに、液晶表示を消す・・・即ち表示周りの通電を切ると音質が良くなるというものがあります。その為、CDプレーヤー等では昔からリモコンで液晶表示部の輝度を暗くしたり、完全にオフにする機能を備えている機種が少なくありません。効果に関しては、実際にやってみた結果として正直違いが判らない機器と、慣れると案外違って聴こえる機器があります。
管理人の手持ちの機種では、特にインテグレーテッドアンプのAUDIOLAB 8300AのLED液晶では、消した方が明らかに聴感S/Nが良くなる様に聴こえます。対してCDプレーヤー類は、普段は輝度を暗めの表示にしていて全消灯にはしない場合が多いです。また、音質とは別に、液晶表示パネルは経年劣化で輝度ムラが出たり、壊れてしまうことが案外少なくない部品ですので、劣化対策として普段なるべく消灯状態で運用するのも有効だと思います。
ケーブル類はケチらないでください
原則として、Hi-Fiオーディオシステムに掛けるコストの約10~15%をケーブル (ソースとアンプを接続する信号ケーブル及びアンプをスピーカーに接続するスピーカーケーブル) に費やすことをお薦めします。ケーブルがもたらす聴感上の違いは、システムの価格(したがって音の透明性)が上がるにつれて大きくなるのが普通ですが、格安のオーディオ機器であっても、優れたインターコネクトケーブルがあればより良い音質が得られます。よってアンプの場合、付属ケーブルのアップグレードも検討する価値があります。尚、パフォーマンスが低下する可能性があるため、全てのケーブルを接続した状態で、電源ケーブルと信号ケーブルを互いに近づけ過ぎないように配線しましょう。
オーディオケーブル類、そして各種オーディオアクセサリーに必要な金額は結果論であり、個別のシステムで思いのほか高くついたり逆に安かったりの例外が少なくないこともあって、箱庭的”AUDIO STYLE”ではこれまで、具体的な数字には敢えて触れずに来ました。実際のところ、機材そのものへ投資を抑えていることもあって、相対的にケーブルやその他アクセサリーに掛けている金額の比率が大きくなってしまうのが管理人のシステムだったりします。
特に現代のオーディオに於いては、一組のスピーカーケーブルとアナログ信号ケーブルに加えて、更にデジタルケーブル、電源ケーブル、接続プラグ類、インシュレーターなどの吟味が必要になります。そしてそれらも全て足す場合、システムトータル比で「コストの約10~15%」に収めるのは些か困難な様に感じています。とは云え入門~オーディオ初心者さんに向けて、WHAT Hi-Fiのようなオーソリティの有るレビューメディアが、一般的な目安として、インターコネクトケーブル+スピーカーケーブルが「コストの約10~15%」が望ましいと、具体的な数字にして明示してくれるのは心強いです。
Category:インターコネクトケーブル レビュー
Category:スピーカーケーブル レビュー
Category:デジタルケーブル レビュー
Category:オーディオ用USBケーブル レビュー
~まとめ~
以上、WHAT Hi-Fiの元記事及び、それについての箱庭的”AUDIO STYLE”管理人による+αの考察でした。次回は、番外編としてWHAT Hi-Fiのこの記事では触れられていない、ピュアオーディオアンプの運用でオーディオマニアが注意すべき15のポイントについて、管理人の視点からいくつか紹介してみたいと思います…( ੭ ・ᴗ・ )੭
【ピュアオーディオアンプのより良い運用方法】
7つの間違い|15の注意点