ドイツの老舗レコードレーベル&オーディオアクセサリーメーカーInakustik(インアクースティック)。長年「モニターPC」と呼ばれていましたのでそちらを覚えている方もいらっしゃると思いますが、2008年にブランド名の「モニターPC」を廃止して社名のInakustikに統合したそうです。今の時代には検索するにもあまりに紛らわしいブランド名でしたので、代わって良かった~なんてね♪。それはともかく、管理人は現在いくつかのInakustik製品を使用しているのですが、今日はその中でも中核となっているRCAインターコネクトケーブルNF-202Rをレビューしてみたいと思います。
現在インアクースティックのRCAケーブルはユキムが代理店を務める日本国内では5種類がラインナップされていて、33万/mペアのフラッグシップがInakustik NF-2404 RCA。NF-2404の構造を継承しつつコストダウンした新モデルがNF-1204 Airとほぼ同価格ですが、下位機種の構造を継承しつつ設計されたInakustik NF-1603R。今回レビューするNF-202Rとその下位モデルNF-102Rは普及価格帯の位置付けですが、いずれも全てドイツ国内でハンドメイド生産されています。
特殊な中空構造
Inakustik Reference Signalkabler NF-202RとNF-102Rの違いですが、↑のNF-202が同径のシグナル線とコールド線の2芯平行構造で、アルミフォイルと銅網組の二重シールド。対して↓のNF-102が同軸構造でアルミフォイルの一重シールド。両方とも無メッキのOFC単線で、NF-202は5本(NF-102は6本の)の中空ポリエチレンチューブに囲われています。RCAプラグは同じInakustik製のロジウムメッキプラグ。コンタクトは緩めで抜き差しは容易です。
NF-202RとNF-102Rで一応の価格差はありますけれども、単純なグレードの違いと云うよりは構造に因るキャラ付けの違いもありそうな雰囲気。NF-202の被覆直径は7mm(NF-102は5.8mm)で細めですが、中は太めの平行単線だけあって硬め。屈曲性は高くありません。普及価格帯とは云えご覧の通り構造の凝り方が尋常ではありません。※上位モデルでは更に凄い事になっています(@_@;)
Inakustik (インアクースティック) NF-202R 音質レビュー
さて、肝心の音質です。新品で繋げた当初はえらくレンジが狭くてナンダコレ???の印象でしたが、3ヶ月くらい使い込んでみると解像度がかなり上がって目の覚めるような音質になりました。基本的には充分に高い解像度を確保しながらも、快活でエネルギッシュ、音楽の抑揚表現が大きく動的表現力に優れた音楽性の高さが特徴になります。
単線的なストレートな伸びやかさと、するりとしたサーフェスの音像描写、音場空間は中域が前に張り出すかまぼこ形の音場で、音像密度が高く、マスキュラーで表現に於ける自己主張は強いタイプです。一番の特徴はリズミカルにバウンドする弾力的な中低域。この辺りは組み合わせて一緒に使っているInakustik RF-ABSORBERと良く似ています。下方向のレンジの伸びはやや狭く、重低音の沈み込みが不足しているため、中低域に偏った質的にややブーミーな低音域ではありますが、音楽のノリが良くレスポンスに優れている点はなかなか魅力的。
無メッキOFC銅線と云うことで銅臭い音色を危惧しましたが、このRCAケーブルの音色はニュートラルで、不思議と全く銅色のカラーレーションを感じません。強いて云えばやや涼しげな温度感に薄く青味がかったニュートラルな色彩。但し高域方向は適度な鮮やかさと伸長感が確保されているため、灰色モノトーンにまで陥らず、色彩感のグラデーションもそれなりに出ています。その為か、音場が中域凸にデフォルメされた傾向の割には雰囲気そのものが垢抜けていて、現代ドイツ的にソフィスティケイトされたサウンドでもあります。正直あまり古典的なクラシック向きの音では無く、むしろ近現代音楽にマッチしそうな色彩感なのですが、強いてクラシックレーベルで似ているものがあるとすると、同じくドイツのOEHMS Classicsの音色に少しだけ傾向が似ているかも。がっつりシールドが施されているためかS/N感は良好ですが、引き換えとして僅かに音場が暗くなる印象はあります。
組み合わせの相性
いくつかの機器と組み合わせてみた結果はこんな感じです(*^-^*)
・ONKYO C-S5VL ⇒ TAG McLaren 60i ☆
・ONKYO C-S5VL ⇒ ONKYO A-1VL ☆
・CI AUDIO VDA2 DAC ⇒ TAG McLaren 60i ◎
・CREEK Evolution-CD ⇒ ONKYO A-1VL ◯
・ARCAM CD72T ⇒ Miuaudio MKTP-2 △ レンジが狭くなる
・CREEK CLASSIC CD ⇒ Musical Fidelity V90 ⇒ EMF Sequel2 ×
↑気持ち悪いくらい押し付けがましい音質傾向になり、笑えるほど合いません・・・。
メインシステムのCI AUDIO VDA2 DACとTAG McLaren 60i間の組み合わせではそれなりに相性が良く、やや上下のレンジが狭まるものの、DACの持つ雰囲気とNF-202Rの色彩感がマッチしていて、更に動的音楽性を加味する形で音楽的に愉しめます。強いて云えばもう少し繊細さと情報量が欲しくはあるかも。。。これよりも更に良かったのがONKYO C-S5VLで、当初C-S5VLで使う予定は全く無かったのですが、それまで入れていたRed Rose Music1934を押し出す形で此処に収まりました。
繊細系のRed Rose Music 1934に比べると解像度面で少々劣るものの、ハイレゾDSD音源でも不満が出るレベルではなく、単線にしては優秀な分解能です。そして解像度は高いものの薄く細身に過ぎるC-S5VLに、動的な音楽性と実体感、エネルギーを加えてくれ、更にNF-202と類似した音傾向のインシュレーターInakustik RF-ABSORBERと組み合わせることで、国産SACDプレーヤーが云ってみればドイツ製ハーフっぽい雰囲気に生まれ変わりましたd(^_-)。同軸構造で少し安価なNF-102Rとの違いにも興味がありますが、そちらは比較する機会があればまたその時に。
~まとめ~
Inakustik NF-202Rを元々がパワフルなサウンド傾向のシステムやレンジの狭いシステムに組み込んでしまうと、欠点が誇張されて押しつけがましい音になりそうです。その反面、音場感重視にパラメーターを振りすぎて、焦点が拡散したアンダーパワー気味のシステムでは、良い塩梅に集中力とエネルギー感を補ってくれるタイプのRCAケーブルになると思います。