5年ぶりのスカパー!再加入を後押ししたのが、2011年の放送時に少しだけ紹介した、フジテレビ「ノイタミナ」枠の”放浪息子”です。4年前はたしか震災の影響で放送時間が無くなり、テレビ本放送の最後の方は色々と編集カットされてやや残念な感じになってしまっていました。今まで観た星の数ほどのテレビアニメの中でも、わたしの中で5本の指に入る好きな作品です。
当然本放送時に録画はしてあるのですけれど、2011年時点で管理人はBlu-rayディスクレコーダーを所有しておらず、スグレコDVR-DT100でのハイビジョン録画は全てDVDのSD画質に変換/劣化ダビングしていましたので、ここはやはりBlu-rayの高画質であらためて完全版を保存しておきたかったのと、放浪息子ってぶっちゃけ今回の放送を逃すとなかなか再放送が望めない、一部のこゆ~い皆様(はぁと)以外には一般向けとしてはむしろ不人気作品になるのでしょうから、ここはもう緊急事態と云うことで、割と急遽スカパー!再加入に踏み切ったのでありんした(^^)ゝ
当時のエントリに、“これ、別売のサントラでは無くて、ブルーレイ及びDVDの方に、オリジナルサウンドトラックCDが同梱されているんだそうです。私はアニメのセルDVDを殆ど買わない人ですが、放浪息子はブルーレイで揃えたいと思いました”な~んてつらつらと書いているのですが、その後に入手したサントラ付き初回限定盤がこれ。
ただ、手元にあるのは1巻と2巻のみ・・・(苦笑)。闘病生活でそこそこ莫大な金額を使ってしまい、今はBlu-rayの国内盤セルソフトを全巻大人買いなんて、とても散財している余裕が無いのでありんした。1枚2話×6巻って放浪息子Blu-rayって他と比べてもお高いですのねぇ(´Д`;) それに、同じ志村貴子作品で放浪息子の前に作られた「青い花」のBlu-ray BOXも実は欲しいのですよね・・・。ちなみに青い花のほうの中身は女子校を舞台にした百合じっとりと大爆発ですΣ(‘◇’*)?
この記事を書いた2年後のことですが、「青い花」は、主演声優としてヒロインの万城目ふみ役をされた高部あいさんが当時コカイン所持で逮捕されたことで販売停止になり、「キルミーベイベー」の呉織あぎり役及びちょい役で出演していた「放浪息子」と共に、動画配信等の市場から消えてしまいました。3作品共に名作で、作品無罪にもかかわらずこういった対応になったのは個人的に非常に残念でした。
放浪息子パッケージ版Blu-rayの画質と音質は、同じハイビジョンデジタルといっても地上波やBS/CS放送とはビットレートとクオリティが異なり、画の階調表現の豊かさ、48kHz/16bitリニアPCMステレオの音質的求心力と相まって、何度も観た同じ作品にもかかわらず当社比三倍感動します。今回スカパー!フジテレビTWOで、1話で1GBちょいしかない高圧縮の再放送を観たときは、あれ?放浪息子ってこんなに画も音も内容も薄っぺらかったっかしら???と思ったのですけれども、BD版で見直すともうあれですね、、、好きな作品ってば出来ればやっぱり高音質&高ビットレートで観るべきです。圧縮率が高いと気が抜けたソーダ水みたいな感じで、特に放浪息子みたいに芸術性の高いデリケートな作品の場合は、ビットレートの隙間から漏れ落ちた精神性の多さに、観る側の作品への評価が変わってしまいかねないな~と感じました。
初回限定版1巻/2巻にはサントラCDが付いているのですが、曲が素晴らしいのは当然として、これがまた音質がクリアでオーディオ的にも素晴らしい。本放送時にも、ドビュッシーの”月の光”@ベルガマスク組曲の演奏が存外に良くて、ピアノ一体誰が弾いてるの?って思ったくらいですが、サントラで聴いてもやっぱりなっとく。ただ一曲丸ごと収録してくれれば良いのにどういう訳か18小節残して尻切れトンボではありますけれども。。。あと、サントラの収録時間が1巻16分 2巻14分と短いです。シングル並みの収録時間なんで、特典を2分割したいが為に無理矢理分けてるよねこれ(苦笑)肝心の「月の光」が収録されていませんが、別売のサウンドトラックの方ではBGMとOP/ED全曲が収録されておりますので、音楽だけ欲しい御仁はサントラがお得です。
「月の光」を含むドビュッシーのベルガマスク組曲の演奏で、僕がちょうど二鳥君と同い年の頃に衝撃を受けたのが、第11回ショパンコンクールの勝者スタニスラフ・ブーニンの解釈。プレリュードの冒頭からしてありえないほど格好良すぎます♪ 作中の演奏と違い男性的で辛口ですので二鳥君のイメージには合いませんけれども。
惜しむらくはドイッチェ・グラモフォン盤の音質があまりよろしくないところ。当時自分が最初に聴いたのはNHK-FMでのライブ放送音源で、カセットテープに録音して何度も再生してました。その後も色々な演奏家で聴いていますが、ベルガマスク組曲の奏法で最もソフィスケイトされているのがブーニンだと今でも思っています。ドビュッシーの「ベルガマスク組曲」と「ピアノのために」のブーニンの演奏、FAZIOLIのピアノを使ってEMIがハイレゾ再録音でSACD化すれば良いのに。。。
エントリ最後にいちお~放浪息子ってどんなアニメか、ネタバレしない範囲で紹介しておきます。管理人が育った境遇に近い、ごく普通の都会の集合団地と公立中学校を舞台に、思春期男子中学生と女子中学生の日常と内面的な心情を、淡々と、しっとりと・・・否、じっとりとさわやかに描いた青春群像劇・・・なのかしら?
男の子って何でできてるの?
カエルとカタツムリ
そして子犬の尻尾
そういうものでできてるよ
女の子って何でできてるの?
砂糖とスパイス
そして素敵なものすべて
そういうものでできてるよ
・・・・・・・・・放浪息子の主題、マザーグースの歌の引用です。
主人公の二鳥君が、ぱっと見は女の子にみえるかわいさの、女装をしたい「男の娘」というのがポイントで、だがらといって同性愛者という訳でも無く、読者モデルで美人の彼女が出来たり、でも親友のマコちゃんはなんだかゲイ予備軍っぽいし、元二鳥君が好きだった、けれどふられた高槻よしのさんはこれまた男の子になりたいボーイッシュな女の子で、ほんとは彼女も二鳥君が好き。
また本作のもう1人のヒロインであり、二鳥君に小学生時代から片思いの千葉さんは、色々感情的で性格に難のある孤立気味のお嬢さんで、他人を突っぱね我が道を行くトラブルメーカー。。。いつも怒ってる←さおりん、わたくしの一番好きな子♪
作品冒頭、入学式の自己紹介でさおりんが、二鳥君を困らせた同級生の男の子に癇癪を起こして頭を本で思いっ切り叩くのですが、その本の背表紙が赤毛のアン(原作ではギルバートの頭を石板で叩いた)とか、細かいところの作り込みがニクい♪
放浪息子は、こんな感じの繊細で内向的な少年少女達が繰り広げる、壊れそうな、でも壊れないような人間関係を淡々と瑞々しく描いた名作です。十代前半の一時にしか経験できないであろう中性的でトランスジェンダーな何かへの憧憬、大人への変化へのささやかな抵抗・・・みたいな。
ネットで見ると放浪息子の評価って絶賛と嫌悪感で二極化されてますのね。でもこれ、描かれているのは社会派だの同性愛だのジェンダー論なんだのという小難しい話ではなくって、ストーリーに一貫しているのは「美しさ」と「自由」への純粋な執着と憧憬。それは僕自身にとっても、プライオリティの最上位にある根源的な価値観だったりするから、ただそれ故にしみじみ共感できるのよ?ってことなのです。
↑こちらは絶賛されているレビュー
とにかく、原作者志村 貴子女史の手による心理描写の素晴らしさに加え、美術、背景、劇中音楽、舞台設定、キャラクターの距離感、空気感、諸々現代アニメの中でもトップクラスの美意識に溢れる芸術作品だと言ってしまいます。まぁあれだ。解る人には解る、わっちはアニメ作品史上に残る名作だと思っています。
・・・・・・・・などと書きつつ、実はわたし、未だに原作読んでないんですよね・・・…。 なんか色々展開が想像つくので、せ、精神的に準備しないとこれは読めないっ。