【光学ディスクメディアの寿命と耐久性について】
CD-R|プレスCD/DVD|やっぱり音盤が好き
1982年にCDが登場してから早33年(2022年で40年)が過ぎました。CDが発売された後しばらくの間、CDの寿命は30年などとまことしやかに囁かれていたにもかかわらず、結果どうなったかと云うと、皆さんご存じの通り、80年代初期のプレスCDであっても、その大半は特に何も起こらない・・・これが答えでした。ヤフオク!でもクラシックやジャズの80年代初期プレスが高音質盤として今でも高値が付いたりしますし、つまるところ経験則として事実上問題無いと多くの方に認識されていることが窺われます。
CDが発売された当初、1980年代はCDの製造品質に極一部でバラツキがあり、ポリカーボネート層が浸食してしまい反射層のアルミが錆びて再生不能になるCDがあるにはありました。但しこの手の問題が発生する際には30年と言わず、製造後数年で見るからに腐食や茶変色(ブロンズ化)が始まりますから、30年以上経っても見た目に明らかな問題が無いCDは、そのまま保管条件が特に悪くなければ更に30年は余裕で持つでしょうし、結論から云えば経年劣化は極めて遅く、プレスCDというものは事実上、今後も半永久的に保存出来るものではないか?と今では考えています。
プレス盤の経年劣化は保存状態の善し悪しに左右されます
工場プレスのCD-DAやDVD-ROMに於ける経年劣化は、結局の所は保存状態の善し悪しに左右されます。室内で普通に保存していれば、そう簡単に傷まないはずですが、それでもCDを数十年単位で長持ちさせる方法は、
1)高温多湿の所に置かない
2)紫外線を当てない
3)薬品処理をしない
4)カビさせない
経験的にこの4つではないかと考えます。太陽光が当たらず密閉or風通しの良い常温×低湿度環境且つ、外周の接合面とレーベル面に傷を付けたり、製造不良固体でさえ無ければ、たぶんきっと大半が100年持つだろうと云うのが、80年代から現在まで6千枚以上のプレスCDを集めてきた箱庭ピュアオーディオ管理人の見解。プレスCDやCD-ROM、DVD/Blu-ray盤を保管する上で特別な環境が必要な訳ではありませんが、更にシュリンクに包まれたまま未開封だったりすると尚更、半永久的に保存可能ではと思います。
CDの盤面に発生する白いカビ
結露するような場所に長期保管して湿度で浸食されたという話がたまにありますが、そんなことをすればどんなプラスチックでも腐食しますよね。ただ、割と一般的な保管温度でも、湿気がやや多めで風通しが悪い場合に、CDの両面にポツポツあるいはビッシリと白カビが生えることがあります。80年代の欧州プレス盤などは、ポリカーボネートに含まれる薬品の違いなのか湿気とカビに弱く、付着したカビを放置した事でピンホールが空いてしまった経験が過去に2~3枚あったりします。面白いのは、↓の画像のようにピンホールが目視で確認出来るにもかかわらず、CDプレーヤーのエラー訂正範囲なのか音飛びまではしなかったりします。
数千枚のCDを保管していると、殆ど聴かないCDが棚や押し入れの下の方、奥の方に追いやられてしまい、20年ぶりに開けてみると開けてびっくり白カビだらけ!になっていたり(;゜ロ゜)。というか自分、カビたままメンテナンスがめんどくさくて未だに放置してるCDが、ここだけの話100枚単位であったりするのですけれども、たま~に恐る恐る開けてみるのですが、一見するとカビだらけでも、超音波洗浄器で洗浄してみると新品同様で、盤面の腐食は目視で見る限り全く進行していないものが殆どです。
ポリカーボネート表面のカビは、ぬるま湯に中性洗剤とスポンジ、あるいは超音波洗浄器で優しく洗えば簡単に落ちますが、むしろライナーノートと背表紙がカビて茶色い染みが取れなくなる事が問題だったり。ジャケットの染みについては、カビた本をどうするのか?について図書館等での対応を調べてみると、消毒用アルコール、無水エタノールで拭いて殺菌してしまうのが良いみたい。昔から自分もこの方法で、カビた背表紙やライナーノートに消毒用アルコールをスプレーでけっこうヌレヌレになるまで思いっ切り吹きかけてから、シルコットで一方方向に拭き取ります。水と違って揮発が速いアルコールの場合、紙もあまりブヨブヨにはなりませんが、インクによっては色落ちしますので注意して下さい。
但しこのアルコールでの剥離殺菌方法は、紙表面のカビによるザラザラを落とすのと、殺菌によってこれ以上進行させないことが主目的で、一度カビが中に染み込んで茶色く変色してしまった紙は、もう元通り白くは戻りません。そういや、CD、ライナーノート、プラケースのカビ落としを始めると、アトピー持ちの管理人の場合は結構辛くなってきますので、アレルギー体質の方が作業をされる際には、風通しの良い環境でマスクを着用して作業をされる方が良いと思います。
ポリカーボネートの加水分解による白濁
今回このエントリを作るにあたり、湿気を吸うことに拠ってポリカーボネートが白濁すると言われる件について、長年管理人宅の中で最も保存環境の悪いと思われる場所に押し込めていたCDをランダムチェックしてみたのですけれど、記録面がCDの読み取りには全く問題の無い程度に、製造年代問わずなんとな~く白っぽくなった気がするCDが時々ある反面、30年以上も前の製造でも見た目には新品同様だったり、古くてカビていてもカビ以外の目視の反射率はピカピカで、洗うと元通り新品同様だったりするのもあり、不思議なことに白濁について製造時期との相関性は余り感じられませんでした。
この吸湿?で微妙に白濁化したとされる現象については、どうも輸入盤より国内盤に多い気がするのですが、製造元の素材の品質に拠るかも知れないのと、個人的な印象としてはなんとなく過去に使ったCDクリーナーやコーティング剤等による影響が出ている気がしなくも無かったり。どうも再生回数が多く、過去にしつこく繰り返し聴いたり、あちこち持ち歩いたCD=クリーナーでの汚れ落とし回数が多いものほど白濁傾向になってる印象がありますので、たぶん十中八九これが正解ではないかと思います。
なにせ筋金入りのオカルトオーディオマニアで御座いますので、学生時代から、ありとあらゆる高音質になるとか、キズが埋まるという触れ込みのCD用リキッドクリーナーを次から次に試してみては自爆してきましたから・・・(苦笑) この白濁、うすらまだらっぽい場合もあって、そんな場合にはイソプロピルアルコール(無ければ消毒用エタノール)をスプレーして+メガネクロスで拭き取るとあっさり取れたりします。尚、軽い白濁程度ではデータの読み取りに支障が出ることはありませんが、ピュアオーディオ領域での音質@官能評価については違って聴こえる場合もあります。
今では何より汚れさせないことが第一で、埃だけならはタミヤの静電気防止クリーニングブラシかエアダスターでのブロー、どうしても取れない指紋汚れやカビが付いてしまった場合のみ、イソプロピルアルコール(無ければ無水エタノール)を吹きかけてメガネクロスで拭うか、目立つ汚れがある場合には、ぬるま湯+中性洗剤+超音波洗浄器+シルコットでを軽くパタパタして振っても落ちない水滴を吸わせるのみですけれど、この中性洗剤ってのも台所用洗剤のエコベールゼロで本当に大丈夫なのか悩みどころだったりします。
ベルギー製で無香料・無着色の弱酸性食器洗い洗剤です
無水エタノールの安全性については以前にも書きましたけれども、一応、ポリカーボネートへの耐性は高価なIPA/イソプロピルアルコールの方が安全。エタノールの場合は高温で長期間暴露すると僅かに腐食性がありますが、化学薬品耐性表の中では一応は安全の範疇っぽい。
CDクリーニングで使用する際には数十秒で残留せずに揮発しますので、事実上問題無いのではと考えていますが、基本的にはなるべく市販のCDクリーナー等にも含まれるIPA、イソプロピルアルコールの使用をお薦めします。
面白いのは、ポリスチレン素材のプラケースについても白濁しているのは見たことがありません。ただ、こちらは暗所保管で無い場合に紫外線で徐々に黄色く変色していてるものが多く、古くなると開閉部のヒンジが簡単に折れてしまったり、白色のプラスチック製中敷きが盛大に黄ばんでいたり、大気汚染による謎のスス汚れが蓄積したりします。でも中のプレスCD盤はケースよりもずっと丈夫で、ケースのように朽ちたり経年劣化で黄色く変色しているものを未だ見たことがありません。プラケースの汚れについてはこちらも消毒用アルコール&ティッシュペーパー等々で磨くと簡単にピカピカになりますが、黄変やプラスチックの劣化はどうにもできませんので、管理人の場合、CDプラケースの劣化が気になり出したら適宜新品プラケースに交換しています。
古い輸入盤はCD外周部からの腐食に注意
ポリカーボネート表面の軽度な白濁とは別に、信号面が読み取れないほど白化したりするケースが90年前後の一部国内盤に見られるのと、やはり80年代~90年代初期に生産されたHyperionなどのUK輸入盤で、一部にブロンズ化と呼ばれる茶変色して再生不能になるケースがありますが、こられはどちらも製造不良に起因するもののようです。
前述のようにポリカーボネートは意外と薬品に弱く、CDの音質を向上させるために安易に使用したクリーナーやコーティング剤が原因で、超長期スパンでの経年劣化を早めているケースは十分あり得ると思っています。また、手あぶらや指に残った塗り薬や化粧品などの油脂分が外周縁部に付着し、そこから信号面内部への侵食が始まる事があり、こ特に古いヨーロッパプレスの中古CDでは、外周部から部分腐食しはじめるケースを割と良く見かけます。
但しこの腐食、洗浄した上で保管方法をしっかりしてやると、それ以上は進行しなくなるのも経験しています。自分は90年代の時点で、80年代ドイツプレスのクラシックCDに於ける手脂が原因と思われる外周部の腐食を何枚か経験しましたので、それ以降、指が明らかに乾いている時を除き、素手で直接CDを触ることを止めました。ちなみにプレス品質の良い国内盤については、基本的にここまで気を遣わなくても大丈夫です。けれども、それ以前に国内盤は西独プレスやEUプレスに比べると音質が・・・ごにょごにょ\(^o^;)/
CD、DVD、Blu-rayなどの光学ディスクを触る際には、上記の理由から基本的に綿手袋を嵌めてから出し入れとプレーヤーへのセッティングをしています。管理人は一種の潔癖性だったりしますので、オーディオ機器を弄る際にも一々手袋をする派だったり。(各部屋のオーディオシステムには常に綿手袋が置いてあります)。IPAイソプロピルアルコールやエタノールを使った拭き取りや、水と中性洗剤を使った短時間の超音波洗浄についても、プレス製造時に残った機械油?のミクロン単位のベールが洗浄で落ちてしまうのは感触として感じられますので、長期保存を考慮するともしかすると好ましくないのかも知れません!? けれどそのうち、保護膜でポリカーボネートの耐久性を上げるための劣化防止コーティング剤なんてのが市販されるようになるかも知れませんね(゜ω゜)。
実はCDの劣化よりCDドライブメカの調達能力が心配です
プレスCDの経年劣化よりも、実のところピュアオーディオマニア的にはCD再生専用機の機械寿命の方が遥かに心配だったりします・・・。アナログターンテーブルのように、何処かの誰かがピックアップドライブメカを作り続けさえすればどうにかなる話ではありますけれども、新規での生産台数が減ってしまった既存の高音質単体CDプレーヤー、SACDプレーヤーを、私達オーディオマニアは今後何年維持出来るのか?正直とても不安だったり(@_@;)。PC向けのスーパーマルチドライブ含め、単純にCD盤がらデータを読み取り、リッピングが可能なマルチドライブについては今後もまず絶滅はしないでしょうから、汎用スーパーマルチドライブを積んだCD/SACDプレーヤーについては、何だかんだと今後も作られ続けるでしょう・・・。
しかし、ピュアオーディオ界隈ではCD-DAやSACD専用に設計された「音質の良い等速ドライブメカ」の有る無しが、再生品位に大きく関わってきました。2000年代初めにPHILIPSのスイングアームダイキャストメカが消え、オーディオ用のCD等速再生専用品について国産で残っているのは特殊なC.E.Cのベルトドライブくらい。CD・SACD兼用機であれば、経営統合したDENON&MARANTZやAccuphase、LUXMAN、YAMAHA、TEAC/ESOTERICのVRDSメカ等が、2010~20年代でも未だかろうじて生産が続いている様です(特注ドライブメカを下請け他社に発注しているケース含む)。
しかし回転系、光学レーザーピックアップでの読み込みには機械寿命の壁があるため、これらの高価なオーディオ用等速ドライブメカの生産が途絶えると、物量投入されたCD/SACD再生専用機は数年~十数年で稼働不能に陥ってしまうのです。プレスCDそのものが大量に残っていても、高音質で再生できなければ趣味として魅力が半減してしまいます。それ程遠くない未来、、オーディオマニア兼CD蒐集家が生き延びるには、過去に製造された優れたCD再生専用機のドライブメカを維持、再生する技術が生まれるかどうか?にかかっているのでは無いかと思っていたりします。
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