箱庭ピュアオーディオ管理人は書斎にミニマム&コンパクトなオーディオシステムを複数組んでいますが、その1つが窓際のYAMAHAクラビノーバの上に乗っている小さな真空管プリパワーアンプ、Miuaudio MKTP-2(CarotOne ERNESTOLO)を中核にしたシステムで、サブシステムMと呼んでいます。2013年以降、ここのスピーカーにはQUAD L-ite2を入れていましたが、新しいDALI MENUETはQUAD L-ite2からリプレイスする形で導入しました。
実は2013年のMiuaudio MKTP-2を導入当初より、そもそもDALI MENTOR MENUET(先代SEモデル)を入れる予定ではあったのですけれど、プライベートその他で中々都合が付かず。。。2020年になってやっと新型無印MENUETにモデルチェンジしてから今更ながら導入することが出来ました。今回のレビューまで更に2年を費やしていますが、そこはいつも遅筆過ぎる管理人で申し訳ないところです…( 3△3 ).。o
先代MENTOR MENUET、先代MENTOR MENUET SE、新型無印の関係
新型の無印MENUETの店頭試聴は2017年にしていたのですけれど、既に先代MENTOR MENUET及びMENTOR MENUET SEは既に撤去されていて新旧の同時比較は出来ず。。。記憶との対比で旧MENTOR MENUETよりもなんとなく音場感が良くなっている感じはしましたが、SEモデルの持つ透明感と解像感には未だ及ばずといったところでしょうか。。。但し独特の音楽性の高さは旧SEよりも優れていて、そこは先代MENTOR MENUET譲りと云った印象でした。先代MENTOR MENUETやMENTOR MENUET SEの店頭試聴レビューは↓のエントリでいくつか書いています。
新型MENUETの外観は先代と大きな変更が無く、直接横並べにしないと判らない程度のマイナーチェンジにも見えます。しかしながら、中身については先代MENTOR MENUETを踏襲しつつも、RUBICONベースの新設計、新型ユニットになっています。先代MENTOR MENUET、先代MENTOR MENUET SE、新型無印MENUETそれぞれに於ける、キャビネット素材/仕上げや部品等、製造上の系統はこんな感じになるそうです。
MENTOR MENUET ≒ HELICON相当 (2009年発売)
MENTOR MENUET SE ≒ EPICON相当 (2013年発売)
MENUET 無印 ≒ RUBICON相当 (2015年発売)
更に2020年に発売された新型MENUET SEについては、厳密にはRUBICONと現行フラッグシップのEPICONのハイブリッド仕様と云えそう。メヌエットシリーズは250mm×150mm×230mm(高さ×幅×奥行き)の小型ブックシェルフスピーカーの中でも特に小さなキャビネット且つ独自設計ではありますが、ZENSORシリーズ、SPEKTORシリーズ、OBERONシリーズ、OPTICONシリーズよりも上位のグレードであり、また、MENUETシリーズはこれまで中国工場では無く、一貫してデンマーク本国で生産されています。
DALI MENUET 音質レビュー♪
DALI MENUETは金属的な質感や鋭利さとは対極にあるウォームでアコースティックなサウンドが持ち味で、ウッドファイバーコーン素材と箱鳴りを活かした、極めて楽器的且つ音楽的なサウンドが特徴です。楽器的と云っても特にクラシック音楽で使われる楽器の音と申しましょうか。。。特にクラリネット、オーボエ、ファゴット(バスーン)、フルート、リコーダーなど木管楽器やパーカッションとの相性が抜群に良く、この上ないリアリティを感じさせてくれます。次いでピアノ・・・特に19世紀のオリジナル楽器、フォルテピアノの再現性に優れる感じでしょうか。
弦楽器はホールトーンも含めた渾然一体した音色は現実感があってリアルですけれど、基音が少々すべすべしていて倍音の分解能は程々。ヴァイオリンはピーキーさが程よく抑えられ、チェロの胴鳴りまでは何とかぎりぎり、コントラバスにはさすがに容量不足。ボーカルにはサ行の強調感も無く、クラシックの声楽、オペラ等でも大変にリアルですが、ピンポイント定位を求められるスタジオ収録のポップス音源とは少々相性が悪いかも知れません。ややマット調でウッディなテイストが支配的なため、そもそも金属音や打ち込みの電子音楽には輪郭が足りず、付帯音的過多でアコースティックな脚色感が強くなってしまい、あまり向かない音質傾向のように感じています。
聴感上の周波数レンジはサイズの限界から広い印象はありません。低域はかぶり気味ですけれども、斜め下に向きに取り付けられたバスレフポートからの鳴りを活かした、エアリーさとウッドファイバーコーンのピストンによる快活なレスポンスが持ち味。100Hz以下は公称59Hzですが、重低音域はソリッドな実体感よりも空気感のマスで聴かせるタイプ。明瞭な輪郭感はありませんが、小口径のためスピード感は意外と速いです。
能率は86dB 4Ω。MENUET用に専用設計された4.5インチ(115mm)のウッドファイバーコーンの動作が良く、ドラムやコントラバスなどの低音楽器では、ごくごく常識的な小~中音量でも見た目に判るレベルで前後に威勢良くピストンします。管理人が所有する多くの小型スピーカーのなかでも、ウーファーがここまでキビキビと動くのはMENUETだけです。
中域は温度感が高く音像の線は太め。この有機的な音楽の流れと躍動感を伴うまろやかな中域こそが実はMENUETの最大の魅力です。3000Hz以上を担当する28mmトゥイーターは独特の光沢のあるコーティングが施されたテキスタイル素材のソフトドーム。ハイレゾを強調したような同クラス他社のスピーカーと比べると解像度はやや甘め。超高域は公称25000Hz(25kHz ±3dB)で物理的にはしっかり出ているのですけれど、今時のスピーカーには珍しく高域方向の不自然な強調感が感じられず、耳当たりが優しくナチュラルにスーッと広がるイメージです。低中高域と判りやすく分解して聴かせるタイプでは無く、繋がりのナチュラルさと纏まりの良さこそが魅力になっています。
音場がフラットに聞こえるワイドレンジタイプの現代風スピーカーでは無く、やや手前方向に押し出し感のある割と極端なかまぼこ型で、レンズで云うところの強めの樽型歪曲収差を伴います。バスレフと箱鳴りに伴う響きが多く、アンプを間違えなければ、上下左右奥行きと、かなり広めの音場感が得られます。※冒頭で述べたCarotOneの小型真空管アンプとの相性は極めて良好です。この音場の歪みと空間の広さは、DALIの下位モデルで同程度のサイズの小型ブックシェルフであるZENSOR PICOやSPEKTOR1では余り感じられない、MENUET特有の個性になっています。
また、サイズ小さいながらも素のダイナミックレンジが広く感じられる為、意外にもやや大きめの音を入れても楽しめるのが隠れた特徴です。小型プックシェルフスピーカーは音量の大小にメリハリが乏しく、素でコンプレッサーを掛けたようになるものが少なくありませんが、MENUETは音量変化のリニアリティが比較的良好。むしろ小音量ではややボケ気味で、一段大きめの音(爆音では無くあくまで常識的な範囲で)の方が、より活き活きとしたメリハリの在るサウンドが得られます。超小型スピーカー特有の、ダイナミックレンジと引き換えに超小音量でもクッキリと明瞭な音質が得られるタイプとは違いますので、限界小音量での再生や、ニアフィールド用途では、実のところMENUETの最も美味しい部分を引き出せないのではと思います。
2020年に発売された新型MENUET SEモデルについて
実はこの無印MINUETを購入した翌月(2020/2月)に輸入代理店のD&Mから上位モデルの新型MENUET SEが発表されてしまい大変なショックを受けました。もし知っていたたぶんきっとSEモデルを購入していましたので・゜・(ノД`;)・゜・。無印ノーマルとMENUET SEの大きな違いとしては、スピーカー端子回りが最上位EPICONグレードのスピーカーターミナルが奢られている事と、独ムンドルフの高級コンデンサ※旧MENTOR MENUET SEではSCR(ソーレン)製など、ネットワーク及び内部配線の大幅なグレードアップが施されている点。また、外観もSEのみワイルド・ウォルナット・ハイグロス仕上げになっています。
DALI、新ブックシェルフ「MENUET SE」。外装変更/ネットワーク回路も強化
内部配線は、一般的な銅線からDALIオリジナルの銀メッキ無酸素銅にアップグレード。ネットワークボードも、より堅牢なベークライト・ボードに変更されている。コンデンサーはドイツのMundorf製だが高域にはフィルム・コンデンサ、低域には電解コンデンサを採用している。スピーカーターミナルも、レギュラーモデルとは異なり、大型のEPICONグレードのターミナルを採用。また真鍮製のシリアルナンバープレートを背面に装着。シリアルの刻印のほか、組み立て/検品担当者のイニシャルが添えられる。(Phile-webより引用)
たしかノーマルの先代MENTOR MENUETではクロスオーバーネットワークの取り付け基板が木材だった気がするのですが、これは新型無印でも継承されているのかな?たぶんこれがDALI独特のウォームな音質と音楽性の一翼を担っていると思うのですが、代わりに透明感や解像感が引き換えにはなりそう。対する旧MENTOR MENUET SEはファイバー、新型MENUET SEはベークライト基板ですので、この点でもより高音質に振ってあることが窺えます。
このご時世ですのでSEはまともに比較試聴ができず、今のところYouTube動画経由での音質確認しかしていません。無印とSEを1対1で比較した動画等で聴いた印象としては、標準モデルの弱点である音抜けと解像度の甘さがかなり払拭され、潤いとツヤが大きく改善しています。※四日市ムセンさんの動画の中間3.44~では旧MENTOR MENUET SEとの比較もありますが、こうやって比べるとより音場の広い新型の2台よりもやや音像重視っぽいですね。また、新型標準モデルのMENUETは高域の強調感が少ないため、相対的に少し音量が下がって聴こえる印象です。※単にレビュー機の鳴らし込みによる差かも知れません。
DALI30周年記念モデルとして日本市場限定(注:DENONとのコラボで日本向けにチューニング)で生産された先代のMENTOR MENUET SEでは、解像度、透明感などの音質は価格相応にモデファイされていたものの、音楽表現の面ではDALIオリジナルに比べてやや冷めた印象がありました。しかし新型を動画で比べる限り、今度の新型MENUET SEでは音質面のみならず、音楽表現力の面でも標準モデルの音楽性をあっさり凌駕しているように聴こえます。ただ、実売価格の面では、希望小売価格に対してSEモデルの値引きが殆ど無いまま、2021、2022年と立て続けに大幅値上げがあり、コストパフォーマンスの面から見てかなり手が出しにくくなってしまいました。。。
標準モデルのユーザーとしては、DIY交換でSE仕様に出来るネットワークキットが別売されたら買うのにな~なんて( ੭ ・ᴗ・ )੭♡。正直、非現実的な話ではありますけれどねっ…( 3△3 ).。o
MENUETの塗装と仕上げの違いによる音質的影響
現行DALI MENUETのカラバーリエーションは、本国では無印の場合で、ブラック、ロッソ(赤)突き板、ウォルナット突き板、ホワイトの4色。日本国内に導入されているカラーラインナップは、ホワイトを除くロッソ、ブラック、ウォールナットの3種類になります。そのうちブラックとホワイトの2色は光沢のあるハイグロス仕上げ。インテリアにもこだわる管理人としては当初ホワイトが欲しかったのですけれど、正規輸入されていないためウォールナットを選んだ経緯があります。
ここで気になるのは仕上げの違いから来る音質の変化。ロッソとウォルナットはベニヤ、即ち突き板仕上げになっていますが、このふたつの外装はスベスベした半艶消し。対してブラックとホワイト、SEモデルのワイルドウォルナットでは、ウォルナット・バールの突き板の上から、更に光沢のある多層ハイグロス仕上げになっています。
これはスピーカーあるあるですが、無塗装や半艶消し塗装とハイグロス塗装を比べた場合、同じスピーカーでもハイグロス仕上げの方がより潤いと艶やかな響きが得られるため、好ましい音質に聴こえる事が多いです。また、塗装コスト的な面からも、、B&Wなどメーカーによって同じスピーカーでもハイグロス仕上げの価格を上げているケースを屡々見かけます。よってブラックorホワイトを選べば音質的にはより好ましいハイグロス仕上げになったのですけれど、管理人はインテリアの兼ね合いからウォールナットを選んだこともあって、やはりどうしても音色のマット感、艶消し感がより強くなってしまっています。。。
個人的趣向では出来れば光沢ホワイトモデルを選べたらなぁと少々不満がありましたが、日本では白いスピーカーはあまり売れ無いと踏んで正規輸入されなかったのでしょうね。。。とは云えウォルナット突き板仕上げの雰囲気は北欧的で清潔感があり、英国製の家具で揃えた管理人宅のインテリアにも良くマッチするもので、外観的にはとても気に入っています。尚、これはあくまで好みの問題ですので、そもそもマット寄りの音色がお好みの方の場合には、MR/ロッソか管理人と同じMH/ウォールナットをお薦めします。※尚、日本で一番人気があるのはロッソみたいです。
DALI SPEKTOR1 ZENSOR1 ZENSOR PICOとの音質比較
多くの読者さんは、DALI MENUETとほぼ同じようなサイズの超小型ブックシェルフであるDALI ZENSOR1、ZENSOR PICO、そしてSPEKTOR1との違いが気になるところだと思います。これらのエントリーモデルはDALI本国では無く中国で生産されることで製造コストを下げているため、超低価格ながら品質の割に高音質が得られ、コストバリューに非常に優れていると感じます。MENUETと直接比較した印象としては、どちらも音色は更に艶消し感が強くやや粗め。特に旧ZENSORシリーズはドライ傾向。特に絶対的な音質クオリティが明らかに2クラス以上レベルが違い、価格差ほどでは無いにしろ実力的な差はあるように感じます。
しかしながら、SPEKTOR1もZENSORはMENUETのような音場の独特の歪曲収差は無く、聴感F特の広がり方は小型スピーカーのサイズなりに極々オーソドックスなタイプです。その為より多くの音源に過不足無くバーサタイルに対応するという面では、MENUETシリーズよりも、ZENSOR PICO、ZENSOR1、そして更にSPEKTOR1の方がより優れているように感じました。クラシック音楽や生録のジャズはあまり聴かない・・・ポップスやアニソン等女性ボーカルや打ち込みの電子音が多いリスナーには、MENUETよりもSPEKTOR1やZENSOR PICOの方がより適応力があると思いますし、そういった音源をより耳当たり優しく穏やかに聴かせてくれる良く出来たスピーカーと云えます。
ZENSORとSPEKTORは好みでどちらも良いスピーカーですが、管理人が敢えていずれかを選ぶとするなら、音楽性の高さの面でSPEKTOR1に軍配を挙げます。SPEKTOR1はZENSORよりも音楽の流れがノリノリで、ある意味、MENUETに迫る音楽性を持ち合わせています。特にSPEKTOR1はホワイトカラーのモデルが用意されていることもあり、実は以前からずっと購入を考えていたりします。ただ今現在は使う場所が無い事もあって先送りにしていたところ、いつの間にかSPEKTOR1の実売価格がかなり上がってきてしまい少々複雑な気分。。。とは云え、実売ペア3万円程度で手に入るスピーカーとしてはとても良くできていますので、解像度重視では無く、あくまで音楽的な表現力重視で選ばれる場合には、今でもSPEKTOR1がこのクラスではベストバイになると思います。
~まとめ~
MENUETは小型ながら基本的に非常に個性が強く、アコースティックな響きとキャビネットの箱鳴りによる付帯的残響の多さを受け入れられる、クラシック音楽を中心に生楽器の音を知っている人に使って欲しいスピーカーです。クラシックのコンサートホール、特に300-500席の小ホールの響き・・・例えば首都圏であれば王子ホールやフィリアホール、府中の森芸術劇場ウィーンホール等々に通じる音質傾向は、クラシックの演奏会に通い慣れている方ほど、MENUETの持つ質感が高い実体感を伴って魅力的に感じられると思います。そして単純に音色が生楽器&ホールの響きに近いと云うのみならず、音楽的に有機的で能動的な生命力のある表現が得られます。
逆にオーディオ的な意味でのシャープなピンポイント定位、解像感やワイドレンジ感等々は、どうみても他のスピーカーにもっと優れた物が色々ありますし、そういったフラット&ワイドレンジな高音質を狙って選ぶスピーカーではありません。脚色が強いため、録音の素をさらけ出すモニター的な用途にも向きません。管理人はそういったMENUETの個性・・・裏返せば弱点を事前に理解した上で尚、音楽的な表現力の高さに惹かれて導入しました。もっと云えばクラシック音楽も含めて録音ソースによっての相性が激しいため、あくまでサブシステムで使うことを目的に割り切って導入したものです。別の言い方をするとMENUETのみで、全ての音楽をカバーしようとするのは無茶ですし、音楽を幅広く楽しむという面からも、ただ一つのメインスピーカーとしてMENUETを選ばれるのはあまりお薦めしません。小粒ながら、はっきりと目的と使い手を選ぶスピーカーであると感じます。
また、MENUETの持つ最大の魅力である有機的な音楽性、音楽表現力の高さは、接続するシステムの機材の組み合わせのみならず、ケーブルやアクセサリ、電源などのたった1ヶ所の問題でも簡単にスポイルされてしまい、生かされなくなってしまうデリケートなものです。セッティングの勘所を踏み外してしまうと只の篭もった音のする冴えないスピーカーになってしまいますので、「音楽性」と聞いてピンと来ない方の場合には基本的にお薦めしません。逆に云うと、オーディオ再生にとって何よりも音楽性が大事だと感覚で明確にイメージできる皆さんには、是非聴いてみて欲しい、手元に置いて欲しいスピーカー、それがDALI MINUETシリーズです。※使いこなし編に続く。
コメント一覧 (1件)
ダリらしさを最も感じるのはROYAL MENUET 2
マッキンやラックスマンの高級アンプで鳴らせるなら現行MENUET SEが、最強です!