以前、短い間Cambridge AudioのDacMagic Plusを購入して使っていた時期がありましたので、記憶から完全に消えないうちに備忘録を書いてみようと思います。諸事情で直ぐに手放してしまいましたので、既に色々とあやふやだったりするのですけれども・・・(苦笑)
Cambridge Audioは英国を代表するオーディオメーカーの一つで、主にバジェットHi-Fi・・・即ち一般庶民向けの低価格ラインナップの製品を展開しています。Cambridgeなんて名前からついケンブリッジ大学を連想して少々スノッブなイメージを持たれたりしますが、これはメーカーの所在地がイギリスのケンブリッジなのが理由。実際の製品はハイエンドオーディオのハの字も無い、イギリスのオーディオメーカーの中でも最もリーズナブルなランクに位置付けされるブランドだたっりしますが、創業は1968年とのことで、それなりに歴史のあるオーディオメーカーだとは云ええそう。
歴代のCambridge Audio DacMagic
管理人が初めてCambridge Audioの製品に出会ったのは90年代初頭で、プリメインアンプのA1 MK3、初代DacMagicやS700 IsoMagic、A1と同型のCDプレーヤーD300に店頭で触れたのが最初です。確か最初のA1 MK3アンプは外部委託でマイク・クリーク氏が基本設計をし、CDやDAC系の設計では英ピンクトライアングルのジョン・ウエストレイク氏や、後のONIXのマーク・シフター氏の名前を小耳に挟んだ気がしますが、あまりに昔の話ですので確証はありません。当時の製品も単品定価54000円と学生にも手が届く価格だったこともあり、店頭で試聴を何度かしながら購入を検討したのが思い出されます。・・・結局入手までには至りませんでしたが、如何にも古き良きブリティッシュサウンドの流れを汲んだ割と好みの音色ではありました。
その後、2000年代に入ると古めかしい黒箱だったデザインが現行のスタイリッシュなスタイルに一新され、新世代Azurシリーズとして変わらずの低価ながらも幅広く色々な機種が展開されるようになります。DACのDacMagicやDacMagic Plusはそんな中で生まれたAzurラインナップの一つであり、90年代の黒いDacMagic/DacMagic2/S700 IsoMagicの系譜に続くものです。特に当時のS700 IsoMagicは丸いソフトインシュレーターを使ったアイソレーション型オーディオボード兼D/Aコンバーター(HDCD対応Pacific Microsonics PMD100チップ搭載)という革新的な製品で、お値段も定価8万円とお安く、購入すべきか非常に悩んだのを思い出されます。
DacMagic Plusは新星Azur DacMagicの後継機として2012年に生まれた2代目(オールドDacMagic/DacMagic2/S700 IsoMagicを入れれば5代目)モデルで、Plusからは中身がDAC兼ヘッドホンアンプになりました。また、ハーフサイズにコストダウンした単体DACバージョンの下位モデルとしてDacMagic 100があり、用途に合わせて選べるようになっています。
DacMagic Plusの導入経緯
管理人が購入したのはボリューム付きのDacMagic Plusですが、購入に至った理由は、デジタル入力がS/PDIF同軸/TOSが2系統(4端子)、USB1系統、アナログもRCAアンバランスとXLRバランス出力の2系統と、小型DACとしては豊富で、採用されているDACチップもWolfson WM8740がL/R2基と豪華。そこでそのままメインシステムでMusical Fidelity V90 DACと置き換えられるのでは?との目論見からです。
価格的に明確なグレードアップになるかは微妙なラインでしたが、内部回路的にはV90 DACよりは少しばかり豪華なのと、例によって英WHAT Hi-Fiのレビューを含め国内外のレビューを読みあさった上で、総じて高い評価を得ていたという事もあります。正直ヘッドホンアンプ機能は必須では無かったのでDacMagic 100でも良かったのですが、一応単体DACとしてもDacMagic Plusの方がDacMagic100よりも少し豪華な回路で音質も上との話があり、拡張性を鑑みてPlusを選びました。
DacMagic Plusの開発者Matthew Bramble氏のインタビューです。
実物はそこそこ良く出来ていて、中国生産ですが如何にも英国設計と云った感じの佇まい。重量は1.2kgですので見た目(215x52x210mm)の割に軽め。ヘッドホンアンプ機能含めたこの多機能さは、現代の単体DACに求められるグローバルでの要求を全て盛り込んだ上で、低価格を実現した結果なんだろうと思います。ただ、背面はネジが異様に多く、しかも分解がトリッキーで、ロングドライバーが無ければ簡単には基板にアクセス出来ない構造になっていました・・・これは正直なんだかなぁと。少なくとも設計者は背面のネジや端子のレイアウトが少なからず音質に影響を与える点をスルーしているようにも見えるのですよね。。。
Cambridge Audio DacMagic Plus 音質レビュー
とりあえず以下のレビューは単品DACとして使用した場合の音質についてです。プリアンプとしての音質を確認しないまま、一ヶ月持たず手放してしまいましたので、そちらの性能ついては判りませんので悪しからず。メインシステムのCEC TL5100ZをCDトランスポートとして、デジタルケーブルAcoustic Revive DIGITAL-1.0R-TripleC-FM経由で音出しをして直ぐに思ったのは、ああこれは、残念ながらライバル機種であるMusical Fidelity V90 DACの代替にはならない・・・という点でした。見た目はDacMagic Plusの方がサイズも大きくやや豪華(&現地価格も£350で上)なのですけれど、クオリティ的には一段階下がる印象が否めないというか・・・。DacMagic Plusの音質は、響きが多めのアンニュイな音色で、良く云えば中庸。悪く云うと緩くてぬるいイメージです。力感やドライブ力に繋がる要素は少なめで、割と上品で小綺麗な傾向の美音系サウンドに纏められています。Musical Fidelity V90とCambridge Audio DacMagic Plusは両機共に低価格DACに良くある外部スイッチングACアダプタ経由のDC駆動。パワフルなサウンドを得にくい電源方式とは云え、それにしてもパッシブ傾向でぬるめかなぁと。WHAT Hi-Fiのレビューで-Againstにはっきりと“Lacks dynamic power“と書かれていた意味が良く分かりました・・・orz
これもまだ”AUDIO STYLE”ではレビューしていませんが、Cambridge Audioの製品では他に小型ブックシェルフスピーカーのSirocco S30(工事中)を10年くらい前から手元に置いてあったりします。Cambridge Audio Sirocco S30は割と元気の良い、中域~中低域の充実した如何にも英国庶民的でロックでホットな発音をするスピーカーなのですけれども、DacMagic PlusはS30とは全く雰囲気の異なる繊細な音質でした。また、90年代のオールドDacMagicの当時の記憶と比べると、共通点は名前だけであって音色的にはもう全く似た部分が無い別物のサウンドになっていると思います。現代的サウンドにリファインされているとは云え、もう少しウォームでトラディショナルなブリティッシュサウンドを期待していたのですけれども、どちらかと云うと中華アンプのTOPPINGに近いようなイメージの音質だったり。。。
サブシステムでの音質テスト
サブシステムでCREEK EVO-CDをトランスポート側に、光デジタルケーブルにAUDIOTRAK GlassBlack2+を使用した場合も同様で、中庸のバランスで響きが多く、蒸留水の如く美しい響きに包まれ、但し解像感はさほど高くはなく、ディテールは心地よくマスキングされる傾向に。ややハイバランスで大人しく繊細な出音は音像の輪郭や密度を殊更強調することも無く、むしろ緩やかにBGM的な使い方に向いているDACの様に感じます。良くも悪くも採用されているWolfson WM8740 24bit DAC(×2基)の透明感と爽やかな持ち味を活かしている印象ですが、同系統のDSD DAC Wolfson WM8742を使うONKYO C-S5VL程の輪郭の効いた解像感やスピード感は無く、更に(軽めの音の)C-S5VLと比べても輪を掛けてライトで腰高な傾向に。バジェットHi-Fiとしてクオリティの水準レベルではありますが、プレーンで個性が薄いこともあり、自己主張が少なく何にしても角が立たないのがメリットと云えるかも知れません。
デジタルフィルタにはAnalog Devices ADSP21261が使われており、DSPで384kHz/24bitまで常時アップサンプリングされる仕様です。DacMagic Plusにも位相の反転機能と3系統のデジタルフィルター切り替え機能があり、C-S5VL同様に音色の変化があって愉しめるのですが、フィルター切り替えでの音質差についてのメモを紛失してしまいましたので悪しからずm(__)m。レビューの間を空けるこれだからもう・・・orz どのデジタルフィルターを通しても云えるのは、本質的にはアップサンプリング系の現代DAC特有の乾いた粉っぽい音色が底に見え隠れしていて、そこにたっぷり潤いのある綺麗な響きを加味することで、アップサンプリングによるもわもわ感を上手に誤魔・・・料理しつつ優しく纏め上げているような印象でした。DacMagic Plusはアップサンプリングを切ることが出来ませんので、そういった現代風に味付けされたハイレゾ的綿密感のあるサウンドを受け入れて使うべきものだと思います。
ヘッドホン端子を使った場合の音質傾向も殆ど同じような感じであまり印象に残っていません。安価なSACDプレーヤーのONKYO C-S5VL直や、CREEKやTAG McLarenなどの英国製プリメインアンプに内蔵された(やたら出来の良い)ヘッドホン出力の音質に比べ質感や力感でやや劣るため、管理人の環境下では敢えてヘッドホンアンプ単体機として併用する意義はあまり感じられず。このあたりは相対的にどのクラスのヘッドホンアンプと比較するかで勿論変わって来ますけれども、デスクトップオーディオとして使うような場合を想定し、PC直での音質に比べれば相対的に驚くほどクリーンな音質になるだろうとは思います。
~まとめ~
今回は若干辛口のレビューとなってしまいましたが、DacMagic Plusは購入当時の実売価格で6万円台だった事もあって、その価格帯で音質比較をした場合、同クラスの単体CDプレーヤーや他のDACと比べて割と微妙な立ち位置にある様に感じたのが個人的に大きいのかも知れません。結構余所のレビューでは普通に絶賛されていますので僕が変なのかも知れませんが・・・(滝汗) 逆に概ねこの音質で、お値段も筐体サイズも約半分以下のDacMagic100を手にしていたとすると、これはこれで♪・・・となってたぶん手放さなかったのだろうなとも思います。こんな事を書いていると、モデル終盤で更にお買い得になったDacMagic100をあらためて買い戻しても良いかな?なんて考え始めてしまうのが管理人の困ったところで・・・とは云え小型DACを集めすぎて手持ちで予備役に回っているものが多くなっている現状もあり、なんとか自重したいところではありますけれども(苦笑)