CHORD C-lineは日本の季刊オーディオアクセサリー誌銘機賞2016(ケーブル10万円未満)と、英国WHAT Hi-Fi誌での2016年の5つ星Award、Hi-Fi Choice GROUP TEST WINNER、Hi-Fi World 5 Starsを獲得した、CHORDのラインナップでは最廉価でエントリークラスとなるRCAインターコネクトケーブルです。この手の低価格ケーブルには珍しくかなりの鳴り物入りの宣伝がされていて、現地では低価格ケーブルの決定版みたいな扱いになっていたり。ちなみにケーブルを作ってるThe Chord Companyと、アヴァンギャルドなハイエンドDACやアンプを作っているCHORD社は、同じ英国のメーカーですが名前が被っているだけで実は無関係です(紛らわしい)。
外観にはみなさん同じ印象を持つと思うのですけれど、ローエンドとは云えまがりなりにも高級オーディオケーブル扱いとしては正直なところかな~り安っぽい印象です。モールド一体成形の青いRCAプラグもオモチャみたいなプラスチックですし、ぶっちゃけせいぜい2000円くらいにしか見えません・・・(苦笑)。だがしかし♪白と水色の昭和レトロみたいな色使いは如何にも見た目にお金をかけたオーディオ製品らしくなくて、アンチ成金趣味の管理人的にはむしろこれが好感度高かったり♪
Chord C-line RCAケーブルの導入経緯
ちなみにC-lineの本国での価格は0.5mで£35。1mが£45です。2000円的な見た目と書きましたが実際はそこまではお安くありません。オーディオ専門店でんき堂スクェアでの購入価格(当時)を後で代理店サイト見たら、これってば定価じゃまいか、ま~じかっ!(≧◇≦) 楽天市場店ですのでポイントは沢山貰いましたけれども・・・♪ C-lineの内外価格差は個人的にはまだ許容範囲なのですが、CHORD製品は上位モデルになると価格差がかなり大きく広がります。しかも簡単に個人輸入できないようにメーカーと代理店が日本への輸出を禁止する協定を結んでいるらしく、グローバルな今時、日本人だけが異常に高いお値段で買わされるのって、ビジネスとしてなんだかな~と若干訝しく思うところもあったりなかったり。
管理人が購入したものは0.5m。実測は54.5cmでした。メーカーでは1m以上の長さが推奨とのことですが、1mより0.5mのが良かったとのレビューが海外で散見されたので、そこはまぁいつもの誰がなんと言おうと短いは正義の法則ですd(^_-) RCA端子のコンタクトは適度で、抜き差しで機器を傷める心配は全く無さそう。尚、C-lineについては英国のCHORD本社で手作業によって製作されている上位クラスのケーブルとは異なり、中国で生産されているようです。導体はOFC。Shawlineクラス以上のように銀メッキは施されていません。RCAプラグもCHORD独特の銀メッキではなく普通の金メッキです。接続方向の指定がありますが、逆にすると疑似バランス接続の効果を損なうかも知れません。
CHORD C-line 音質インプレッション♪
最初に繋げたのはONKYOのサブシステム。今現在はCREEK Evolution CD ⇒ Pro-Ject Head Box DS ⇒ ONKYO A-1VL ⇒ audiopro Image12となっています。はてさて、見た目の色や質感と出音の印象はかなり異なりました。背景の聴感S/Nが良く、間接音の響きがとても多いです。この間接音成分はどっから湧いて出たんだろう?というくらい多い。このクラスとしては楽器やボーカルの陰影描写に優れ、音場はウェットで潤いに満ちていますが、響きの多さにヴァイオリンなどの倍音・・・微細な粒子情報はやや溶けてしまう印象。音楽の流れは静かで淡々としています。ダイナミックレンジは確保されているものの、エネルギー感は控えめで、特に低域の弾力性に欠いているため、陽性で動的な音楽性は控えめな印象。音色傾向は仄暗く、色温度が低めで、イギリスの夕暮れ時、微かに肌寒い曇天の雨の中を歩いているイメージ。
クラシックでは短調の曲・・・メランコリックな精神性の描写やマイナス方向の音楽性に長けていて、見た目に反し、愁いを帯びたなかなか大人びた深い音がします。音数の多いオーケストラは少々集中力が足らない印象。ビートルズも英国の雰囲気感たっぷりでなかなかに辛口。女性ボーカルの帯域はほんのりと丸みと甘みがあって良いかも。アニソン系は意外とマッチして、電気的な乾いた響きがコンサートホールのように溶け合うアコースティックな響きに変換され、ボーカルに加えて楽器や効果音一つ一つの分離に優れ、音色の描き分けの意図が手に取るように判ります。色聴的にはダークなイメージが強く、爽やかな水色や白を想起させる明るくポップな雰囲気ではないです。
撚り線ですが、ARAY Technologyの効果か疑似バランス接続の効果か、中域から低域方向の音像はソリッド。過剰な量感を求めなければこの価格帯としては珍しく低域の解像度が取れていて、低音楽器の音色の違いを鮮やかに描き分ける質の高さがあります。低域から中域までは価格の割にはトランスペアレンシーに優れ、低価格ケーブルらしくない音場感を得られるのですが、高域の更に上方向への伸びは何処か抑圧的で頭を押さえつけられている感じがあり、音数・・・細部の情報量についてはエントリークラスのお値段相応です。あと(これは単にまだエージングが足りないのが原因っぽいですが)綺麗に磨かれているようでいて、少々歪みっぽさが感じられる部分があり、それがパッシブでメランコリックな印象に繋がっているのかも。。。ボーカル帯域となる中域~中高域にかけて仄かな明るさとピークを感じる帯域があり、音楽的な求心力と陰影感を演出していますが、全体のバランスとしてはナロー傾向で、いまいちF特のレンジが広いという印象には繋がらず。このあたりはローエンドモデルの限界かも知れません。
オーディオアクセサリー誌156号での林正義先生の評価を一部抜粋して引用します。太字は管理人が特に同意できる部分です。
明るくフレッシュ。素晴らしくS/Nが良く、オーケストラのステージ構造もリアルで3次元的だ。音の浸透性はコブラを凌ぐ。驚くのが女性ボーカルの表情だ。アナログ的な厚みが増して血が通い、ニュアンスが深い。究極のエントリーモデルだ。
他にも福田先生のオーディオアクセサリー誌159号のレビュー(抜粋)で「この価格でこんなに美しい音が得られるのかと思うだろう」等と書かれていますが、詳しくはCHORDCompanyの特集ページも含めてケーブル大全2017に全てまとめられて詳細が掲載されていますので、C-lineの購入希望者さんは読まれることをお薦めします。
オーディオアクセサリー誌のレビューでは、なんとなく高域は綺麗だけれど低域が駄目みたいなイメージでしたが、管理人にとってはむしろ中域から中低域方向の表現力にこそ魅力がある印象で、特に低域は、量感は足りてないのですが見通しが良く、楽器の質感がリアルでかなり良好な印象。低音域のピッチの変化が判りやすい音。このクラスのケーブルの場合、中低域の量感を弾力性で補おうと諸々甘くボケてしまうものも多いのですがC-lineにその兆候はあまり感じられません。逆に高域方向は中高域が表面的に磨かれているとは云え、暗い音色でいまいちうだつが上がらないイメージ。潤いに満ち、ある意味で磨かれた綺麗な響きがするのは確かにそうなのですが・・・物憂げに過ぎるというか。。。低域方向の見通しはともかく、重低音域についてはバスドラムのアタックにパルシブなスピード感が伴わないためか、WHAT Hi-FiやHi-Fi Worldで述べられているリズミカルな印象はなんでか皆無。
このクラスの他社のローエンドケーブルは、上位モデルに比べてレンジが狭く、解像度が低くて音質が微妙でも、その代わりに弾力があって陽性で快活なサウンドと音楽性が得られるものが多くあります。対してC-Lineの場合、低価格帯相応のわかりやすいチャーミングな音楽性指向というよりは、クラスを超える響きや表現の深みなど本格的なサウンドを想起させるイメージに振っているように感じます。ただその音質は英国Chord Companyのイメージする世界観に基づく独特の雰囲気を纏った大人の音質で、日本的な解像度が高くフラットでワイドレンジな薄い音とは全く異なるもの。総じてCHORDのサウンド傾向が好みに合う場合には、価格以上に魅力的な音質という評価になるのかと思います。例えば、イギリスで評価の高い歴代のMARANTZ 6006系や5005シリーズの入門機や、ケンブリッジオーディオのTOPAZシリーズなど、ローエンドやエントリークラスのオーディオ機器に多い、薄くブライトな音をしっとり落ち着かせるのに、C-lineは効果的に使えるケーブルになりそうな雰囲気。
管理人はローエンドのC-lineが好みに合えば、次にデジタル同軸ケーブルのClearwayかShawlineの追加購入も考えていたのですが、このC-lineがエントリークラスとは云えCHORDのフィロソフィとエッセンスを正しく継承しているモデルであるとしたら、正直、個人的な好みからはやや逸れると云いますか、同一メーカーでのステップアップを躊躇してしまう感じは無きにしも非ず。上位モデルではボーカルが色っぽいとか、明るく柔らかいとかいったレビューが多いのですが、管理人が手にしたC-lineに関しては、ボーカルの甘みはともかく明るく陽性のイメージは殆ど無いです。
総評としては、正統派ブリティッシュサウンドの雰囲気を色濃く残しつつも、現代トレンド的なサウンドバランス得られるのがポイント。バジェットHi-Fiマニアとしては、1万円以下のクラスでC-lineよりも陽性方向での音楽性が高く、音質的にもそこまで負けていないインターコネクトケーブルの選択肢が他にもあると思いますので、WHAT Hi-Fiや他の英国雑誌での喧伝(敢えてそう書く)は、お国贔屓でやや誇大広告気味かもしれないな~なんて思ってみたり。なんというか、もしCHORDのケーブルに興味をお持ちの御仁がいらっしゃる場合は、悪いことは言いません、イギリス本国で手作り生産されているClearwayかShawline以上のモデルにしておくのが、たぶん長い目で見なくても正解だぉ・・・みたいな。
英国CREEK×Musical Fidelity V90 DACのサブシステムで試してみた
現在はCREEK CLASSIC CD ⇒ Musical Fidelity V90 DAC ⇒ CREEK Sequel2 ⇒ EPOS ELS3です。元々音像描写偏重で残響情報が足りてないレトロサウンドを追求したシステムで、普段敢えて音質面では時代遅れのMonster Cable M350iを繋げてていることもあり、C-lineを入れると一気に残響成分が醸成され、まともな現代英国風の音場型システムにブラッシュアップされるイメージです。かといって音像がふやけて薄くなる方向でもなく、あくまでそこはソリッドな分離感は維持されてます。ただ、ウォームで闊達なサウンドが身上のシステムがメランコリックになり、翳りの多い雰囲気暗めのサウンドになります。
中高域は独特の意思の主張があり、甘いボーカルにはスポットライトがあたる感じで、後ろのピアノは右手がしゃくれて聴こえる印象。音場型で大人しめのMusical Fidelity V90とは傾向的になんとなく合いそうな気がしたのですが、実際に組み合わせてみるとC-lineのウェットな個性が前面に出すぎて、V90 DACの持ち味であるディテールの情報量や、上下後方に広い音場感を意外とスポイルしてしまい、採用は却下。
英国 Musical Fidelity V90 DAC 小型D/Aコンバータのレビューでございます♪
デスクトップのPCオーディオで
実はサブシステムで使えなくてもPCオーディオでしたらC-lineが使えるよね?時な目論見での購入でもあったり。PCデスクが白いので白色のケーブルでないと見た目的に合わないのです。このシステムはアルミ&ペーパーコーンのELAC CINEMA 2SATがフルレンジ的でドライな傾向のスピーカーのため、何をやってもモノクローム基調でドライという印象が付きまとうのですが、C-lineのウェットな響きの多さがオーバーフローするために完全にスピーカーのドライ傾向を払拭してしまいます。
問題は音場の展開位置でした。音場は高域の頭が抑えられるためかバランスが下寄りで、細身でフラットバランス傾向のISODA HA-08PSRでは左右のスピーカーの上、デスクのモニタ裏側の眼前に展開していた音像が、目線の下方向のスピーカーの間から更に斜め下奥方向へ広がるかなりのローバランスなイメージに。音の色はモノクロームと云うよりは、更にダークブラウンが加味された濃色系になり、深い夕闇を感じる暗く濃い色彩感になります。メランコリックでものすごい大人っぽくなるのですが、音場が下方向にしか広がらず、抑圧されたナローなイメージに。※その後逆接続で試してみると音像定位もここまで下寄りになり過ぎず、それなりに使えそうなバランスになりました。ただやはりニアフィールドでもこぢんまりとナローな印象はあり、もう少し上下左右の空間が広いと楽しめるのですけれども。
あらためてONKYOのサブシステムで
CREEK Evolution CD ⇒ ONKYO A-1VL ⇒ audiopro Image12・・・今度はDACのHead Box DSを通さずに。こちらでは相対的に透明感の高い音。C-lineは大人びたメランコリックな雰囲気など、EVO-CDの音と何処か似ている部分があり、イギリス風味を味わうにはなかなか悪くありません。それでも長年使用している同じくエントリークラスのDH Labs Silver Sonic Phantom RCA(米国のショップから$19で購入)と比べると、透明度や解像感には優れているものの音楽性の面で及ばない印象で、敢えてリプレイスする意義は薄そう。ここでふと、禁じ手の気がするC-lineの逆接続を試してみたのですが、これが案外良くて、レンジが広がるぶん若干キツくはなりますが高域の抑圧感が軽減されて、音楽的にもシックすぎる印象からニュートラル方向への闊達さを多少なりとも取り戻す印象です。メランコリックな空気感や残響感の部分が少し薄まり、より普通の出音になってしまうとも云えますが、個人的にはこの逆接続の方が正直好みかな。他社のRCAケーブルを逆接続にした場合の変化と傾向としては同じですので、システムとの相性面で疑問を感じる場合には、指定方向に拘らずに聴感重視で逆接続を試してみるのも良いと思います。ただ、弱点として聴感上のS/N感が悪くなるようにも聴こえますので、同社が誇るARAY Technology(アレイ テクノロジー)の効果や電磁波対策のメリットを逆接続の場合には充分活かせてない可能性はありますけれども(滝汗)。
ARCAM CD72TとMiuaudio MKTP-2のサブシステムで
ARCAM CD72T ⇒ Miuaudio MKTP-2 ⇒ QUAD L-ite2の構成です。この後C-lineのエージングを3ヶ月以上済ませてから、普段はNORDOST Blue Heavenを奢っているこのミニチュア真空管プリアンプシステムのRCAラインケーブルをCHORD C-lineにリプレイスしてみました。流石に格上の単線ケーブル相手では撚り線の滲み感を感じますし、NORDOSTの持ち味であるF特のフラット感と比べると、中域中心に纏まったナローでややコンパクトな印象のサウンドになります。強いて云えば、温度感の低いBlue Heavenよりは暖かみのあるマイルドな音ですね。
やはり良くも悪くも暗めのトーンの中に浮き立つ中高域に載るブライトな明るさが自己主張的な個性となっていて、仄かに甘く切なさを感じさせる女性ボーカルやギターの立ち上がりなど、特定の楽器になると陰影感や味わいが良い方向に作用して音楽的な本領を発揮する印象。初期状態では気になったパッシブな抑圧感はエージングで緩和され、中域の暖かみに加えてメロディラインにリズミカルな闊達さも出てくるようになりました。けれどもレンジの広いピアノでは右手方向の棘が聴き疲れに繋がってしまい、まだ少々気になってしまうかな・・・。総じて個性から来る得手不得手がある事が逆に面白さに繋がってる印象。全体としての相性は悪くない組み合わせかも。
~まとめ~
エントリークラスにもかかわらず実際に組み合わせてみないと相性が判りにくい独特の味わいと個性のあるケーブルですけれども、聴き手の好みに合えばそれなりにお買い得だと思います。ただ、個人的にはC-lineの音質的な品位にはまだまだ改善の余地がある様に感じました。お財布に余裕がある方にはせめてClearwayかShowlineに飛ばれた方が、近年多くのオーディオマニアの方が嵌まっているCHORDでしか得られない表現力の魅力やメリットを、よりデメリットが少ない形で享受できるはずです。
ちなみに管理人はこの後、C-lineをLUXMAN真空管ハーモナイザーの入口側に逆接続で使っています。敢えてエフェクターとして信号に脚色して個性を演出するための真空管の味わいに、更に響きの多いC-lineの個性を加味してより濃くしてあげようという目論見。入口側に使うことで撚り線的な滲み感などが気にならず、出口側により品位の高いNORDOST Red Dawnと組み合わせた結果、まぁまぁこれはこれでアリなのではないかしら?な~んて感じでお後が宜しいようで♪