【バナナプラグやYラグ端子はピュアオーディオに不必要?】
前編|後編|メッキの音質|AT6301|バナナプラグ音質比較
さて、真空管デジタルアンプのMiuaudio MKTP-2(CarotOne ERNESTOLO)はスピーカーターミナルが非常に小さく、裸線のスピーカーケーブルを直接配線することが困難で、少なくともアンプ側には何かしらのバナナプラグや、小さめのYラグ端子を介することがどうしても必要だったりします。
管理人のサブシステムではMKTP-2とQUAD L-ite2をバイワイヤリング接続にして、スピーカーケーブルには低域側にORB Innova TS7、高域側にAcoustic Harmony N1を充てていますが、ORB Innova TS7は両端が金メッキ純銅Yラグ端末処理済みの完成品、アコースティックハーモニーN1は裸線にバナナプラグのaudio-technica AT6301を介してトゥイーターに接続しています。
真空管アンプ側のスピーカー端子が小さすぎて無理繰り配線になっていしまい、裸線のスピーカーケーブルを常用する事は出来ないのですけれども、音を聴いた感じ安い真鍮バナナプラグは出来れば使わない方が明らかに望ましく、ここは何とかしなければなぁ~と常々思っておりました。
音質比較の概要とテストシステムの紹介
そんな訳でaudio-technica AT6301よりも音質が良さそうな、4個セット数千円~1万数千円で入手可能なバナナプラグをいくつか候補に挙げ、最終的にこれなら失敗は無いだろうと米国製ハイエンドバナナプラグCardas CABを導入してみました。しかしながらCardas CABはキャラクターが濃厚すぎてMiuaudio MKTP-2との相性がいまいち芳しくなく、結局直ぐに外してしまっていたり。。。
そこで先日のバナナプラグのレビューでも書きましたが、台湾aecoの輸入代理店aeco JapanStoreさんがTwitterプレゼント用に用意したバナナプラグを、ご縁があって1つだけフライングゲットさせて貰いまして(多謝♪多謝♪)、この機会にaecoを含め手元にある安価なナカミチとオーディオテクニカAT6301、数千円のaeco ABP-0202R、一万円超のハイエンドバナナプラグCardas CABの音質比較をしてみることにしました。
現時点の管理人宅のシステムでバナナプラグ接続が必須となる箇所は、Miuaudio MKTP-2のトゥイーター側配線のみですけれども、ここはつなぎ替えで色々手間取りそうなので取り敢えず後回に。代わりにスピーカーケーブルの繋げ替えが楽なCREEKのサブシステムで先ずは音質比較をしてみることにします。バナナプラグを接続するのはプリメインアンプ Sequel2側。スピーカーのEPOS ELS3側に繋げる方が音質的な影響力が良くも悪くも強く出るのですが、振動が直接盛大に伝わるが故にプラグ共振によるデメリットも気になってきます。その為バナナプラグを介在させる場合、管理人はなるべくアンプ側のスピーカー出力端子のみで済ますようにしています。今回のテストに使用したスピーカーケーブルですが、ケーブルそのものの個性が強いタイプは比較用に向きませんので、安価でプレーンな音質のフランス製 Real Cable CAT150を使いました。
比較試聴をするにあたり、バナナプラグやスピーカーケーブルの裸線に手脂が付くと徐々に音がこもるので、着脱組み替えで触る度にパンドー29Dをプラグやスピーカーケーブルの先に吹きかけつつシルコットで拭き拭き脱脂しています。※アンプとスピーカーのターミナル端子についても、予めパンドー29Dとオーディオ綿棒で磨いておきます。
ナカミチ Nakamichi 24K 金メッキ バナナプラグ
アマゾンで購入。ナカミチとありますが、カセットデッキで一時代を築いた日本のナカミチは遙か昔に倒産してしまいましたので、これはブランド名のライセンスを買い取ったかどうかした、海外(中国)の業者が販売しているものだと推測⇒見つけたサイトがこちら。見た感じ同一品で別のブランド名がプリントされたタイプも出回っていたり。尚、健在だった当時のナカミチにバナナプラグ等のオーディオアクセサリは存在しません。(バナナプラグと関係があるか判りませんが、カーオーディオのナカミチについては、製造元の台湾メーカーが、本家ナカミチが90年代に設計販売していた製品について、本家消滅後も暫く製造販売を続けた残り在庫が一部で流通しているようです。)
当初、商品画像から、audio-technica AT6301を供給しているOEM製造元と同じものかと考えていましたが、実際に実物を並べて比べてみると、画像手前のaudio-technica AT6301に比べてバナナ本体が少し小ぶりで、24金メッキ?の色味も真鍮色に近く、メッキ品質的にも劣るようです。
一番気になったのは肝心のバナナ本体の出来があんまり良くなくて、特にネジとねじ切りの製造精度が悪く、ネジ止めが少しばかりし辛いことです。この辺りは価格相応の安っぽさですね。新品時は入れる際にaudio-technica AT6301に比べてかなり固く、逆に抜くのは簡単でした。その代わり艶消しシルバーにNakamichiとプリントされた円筒カバーの造りは意外と良好。カバーの素材はネジ部分が真鍮、円筒部分がアルミニウムのハイブリッド構造だと思われます。
音質は、真鍮的な輝きが乗る明るい音で、レンジは少し狭く、全体的に可も無く不可も無い印象。音楽的にはまあまあ快活。出所がぁ ゃι ぃのでもっと酷い音がするのかと思ったのですが、そうでもない。やや散漫な傾向ではありますが、抜き差しの多い使い捨て的な用途を含めて割と普通に使えるレベルです。箱庭ピュアオーディオで積極的にお薦めすべきクオリティの製品ではありませんが、安価ですし、後述するアルミニウムカバー部分目当てで購入するのはありかも。
audio-technica AT6301 ※プラカバー無し
太古の昔より。箱ピュアで紹介してきたバナナプラグの基本モデル。旧英国IXOSで販売されていた一番安価なバナナプラグや、模型用品として出回っているイーグル2815と中身は同じ物(※イーグル模型の最近の画像を見た感じ、型番が同じままでヘッドの短い別製品に入れ替わってるように見えますので要注意)。但しaudio-technica謹製のものはカバーにブランドロゴがブリントされています(これも実は昔はプリント無しでした)。IXOSのものは、80-90年代にCREEKのアンプがまだバナナプラグ接続専用だった頃、アンプの純正パーツとして付属されていたものがこれだったりします。
テストはプラスチックカバー無しで。このプラスチックの赤黒カバーは絶縁目的以外に音質的にはメリットが無いので昔から使っていません。こちらも中高域に真鍮的な輝きが乗ります。ややカマボコ帯域的な樽型収差はあるのですけれど、ナカミチに比べればレンジが広がり、響きが多く、音楽性も高くなります。どちらかと云うと上下両端はロールオフ気味で中~中高域が目立つ音。
AT6301については昔からレビューを書いていますけれども、この値段でこのお音質が得られるのでしたら御の字と云いますか、予算が極めて限られる場合、とりあえずはこれでまともな音質が得られますので、管理人的にはaudio-technica AT6301をバナナプラグのベンチマークとして考えています。
昔、ドイツWBT製で4本セット1万円もする高価なバナナプラグ WBT 0644R Midline Banana Plugを使用していたことがあり、比べてみたらそれが遥かに安価なAT6301よりも音質的に良くなかったのもトラウマだったり(滝汗)
audio-technica AT6301+ナカミチカバー
この二つのバナナプラグ、バナナ本体のサイズは少々違うものの、良く見るとカバー嵌め込み部のネジピッチが全く同じ。ものは試しにとNakamichiのカバーにAT6301を入れてみたところ何と綺麗に入りました(゜ワ゜)。そして出てきた音にビックル一気飲み♪w
AT6301の聴き慣れた中庸且つ平凡な音が、シャープに洗練された高級感のある音色に変貌。カマボコ帯域がワイドレンジ&フラットになり、音像が絞られ、直接音に集中力と密度が出てダンピングが増した印象。中高域の真鍮臭い艶と金色の輝き感はかなり減り、ほんのりとマット調に・・・とどのつまりアルミのキャラが乗って真鍮の固有音を打ち消し合いつつ折衷するイメージです。S/Nが良くなり、間接音もとい付帯音的な響きも減ります。音色傾向は暗めでややクール基調。散漫さが解消して楽音への集中力は上がるのですが、ただ、暫く聴いていると、それっぽい雰囲気の音にはなっただけで、本質的なクオリティが大きく上がった訳では無く、音数そのものはあまり増えていないかな。。。フラットになるぶん少々表現としてはつまらない傾向で、エネルギー感が少し下がる印象もあり、動的な音楽性についてはやや抑制傾向になります。
audio-technica AT6301+純正プラスチックカバー
プラスチックカバーの音が乗って、あたりのナチュラルなソフト基調の音色に。真鍮的な響きはある程度整理されます。カマボコバランスで中域~中高域が目立つのは変わらないのですけど、全体にレンジが狭まり音が丸みを帯びるため、音像が膨らんでぼんやりする傾向。耳当たりがキツいときに音を丸めるためには有効かも。真鍮の付帯音が気になるときや、システムの音調がキツいときには、プラスチックカバーを被せるとある程度ダンピングされてマイルドな出音にはなります。でも音質的にはカバーが無い方が良い。カバーを付けたまま使用する場合、ナカミチ(アルミカバー付き)と大差ないかそれ以下のクオリティ。
aeco ABP-0202R (ロジウムメッキ、ネジ式)
今回の4種類の中で最も切削精度が高く、ミクロン単位で精密。小型でバナナプラグとしての質量が少ない為、信号経路に余計なキャラクターを付加しにくいメリットがあります。ただあまりに小さいので導体が太いスピーカーケーブルは入りません。0.75SQ~2.0SQ迄は何とか大丈夫そうでしたが、AT6301にはそのまま挿入可能なSUPRA CLASSIC 2.5Hなどの2.5SQクラスになると芯線を間引かないと難しそう。導通部のロックヘッドは高品位なロジウムメッキが施された導電率の高いテルル銅(テルニウム銅)。ネジは真鍮ロジウムメッキ。黒いカバーは真鍮製。当初、バナナ部分が固くて全く端子に刺さらなくてどうしたらいいのか問い合わせたところ、時計回りにねじ込むと良いとのことで、やってみたらあっさりと刺さりました\(^o^;)/
音像のサーフェスが滑らか、抜けが良く硬質、高域は良く伸び、明るい水銀灯のような非常に明るい音色で、良く整った綺麗な音像が並びます。裸線接続に比べれば響きは少しばかり整理されますが、鮮度感は高く、演奏のエネルギーは溌剌としています。新品ロジウムですのでハイは少し刺さりますが、素性の良い鳴り方ですのでエージングで解決するでしょう(後日注:解決しました)。ピアノの左手方向は適度な重さが乗っていて、ロジウムメッキらしく少々ヌメッとした滑らかさがあり、少しだけ硬質。分解能は高く、上下共に抜けが良くレンジは広いです。バナナプラグを使うことでの鮮度感の低下を最小限に留めつつ、高品質なメッキによって+αの明るさと滑らかさを付加するイメージ。鮮度感が高く保たれていて、流石にこのくらいの製品になってくるとバナナプラグを使うことのデメリットを殆ど意識しなくて済むようになります。
更に詳しくはこちらのレビューで
Cardas CAB Banana Plugs
今回唯一となる4ピース1万円超のハイエンドバナナプラグ。ストレートサウンドのaecoとは正反対に導通部の質量を大きく取った重量級です。この様にYラグが共締めできる構造のバナナプラグは種類が少なく、その手の製品で定番だったGOLDMUNDのバナナプラグが製造終了で既に入手困難。後継のTechDAS Super BANANAにしてみようかと逡巡していて、結局Cardas CABを選んでみました。真鍮ボディにシルバーメッキ+ロジウムの二層メッキと金メッキナットの組み合わせ。細かいネジを一切使わないツーピース構造が特徴で、後部に更にバナナプラグを連結したり、前述したようにYラグを止める端子としても使用可能です。重くて非常に剛性感が高いのですが、シルバーロジウムメッキに傷が入ると案外剥げやすい点が微妙・・・使う以上は注意のしようが無いのですけれど。尚、同等のメッキを施した壁コンセントCARDAS 4181US(工事中)に音色が少し似てます。
バランス的には中域~中低域が厚いサウンド。音場が奥に引っ込み、響きが潤います。未使用に比べるとややパッシブな傾向ですけれど、美音系でハイエンドっぽい空気感で何ともいえない高級感が漂います。高域はロジウムの割にキツさが全くなく大人しいかと思いきや、歪みっぽさがないのに解像度も高く、それなりに溌剌としています。ロジウムらしい脱色感やヌメッとした滑らかさはこちらにもあるというか、aeco ABP-0202Rよりも更にメッキのキャラクターが濃厚。低域方向は少しスピードが落ちてなまる傾向。密度感は高いのですけれど、音像そのものはやや太め。良く云えばトーンの安定したまとまりの良い音。悪く云うと響きがオーバーフローする感じになり、音源によってはもっと分離感が欲しい事も。
Miuaudio MKTP-2では鮮度感が少し後退して予定調和的に小綺麗に纏まってしまうため暫く使った後は外してしまったのですけれど、CREEK Sequel2とEPOS ELS3の間では良い塩梅にスピーカーのチープ感を払拭してくれますので、これはこれで魅力が加わると云いますか、邪道かも知れませんがハイエンドライクな質感を加えるだけのために敢えて介在させても良いかも的な雰囲気に(謎)。メインシステムのVienna Acoustics MOZART T-2で、radio.wave.cutの接続用として使ってみるのも面白そう。流石に高級バナナプラグだけあって、良くも悪くも否応なしに介在する自己主張があり、それをポジティブに捉えるかネガティブに捉えるかで全く評価が変わりそうなバナナプラグ。CARDASのキャラクターを愉しめるかどうかが選択のポイントになると思います。
~まとめ~
基本的に箱ピュア管理人としては、余計な接点を増やすバナナプラグは、どちらかと云うと音質よりも利便性を重視した構造の接点であり、使わなくても良いなら使わない方が良いというスタンスでした。基本的に、成型済みの高級SPケーブル等で端子を選択できるケースでは、圧着式Yラグがバナナプラグよりもベターであると考えています。ただ、冒頭で書いたようにMiuaudio(CarotOne)の超小型真空管アンプや、それ以外でも最近のSP端子間が極端に狭い小型デジタルアンプを使ったデスクトップPCオーディオの場合、バナナプラグを使用しなければスピーカーケーブルの配線が事実上困難なアンプも少なくありません。また、高級スピーカーケーブルについても、ケーブルの屈曲性と設置クリアランスの関係で、直角挿入のYラグ端子では配線困難となるケースも意外に少なくなかったり。そうなると、音質的なデメリットが少ないバナナプラグがどうしても必要になってくる訳です。
そういった都合を踏まえつつバナナプラグを選ぶとなると、接点や共振増加のデメリットが霞んでしまう程度に、そのバーターとしてちょっぴり聴感上の音が良く聴こえてしまう味付けがあると嬉しかったり♪ 今回、その辺りの質的なバランスが一番良く取れているように感じたのがaeco ABP-0202R。本来構造的に不利なはずのネジ式バナナプラグとは云え、素材や精度へのこだわりの差は大きく、安物の真鍮製Yラグを使うよりは明らかにこちらの方が数段まともな音がしますし、たぶん(今回の比較レビューに入らなかった)数千円クラスの他社製バナナプラグと比較した場合でも、トップクラスのクオリティを示すのではと推測してみたり♪
それに対し、むしろ積極的にハイエンド風味のキャラ付けをがっつり乗せてしまおうというタイプがCardas CAB。この2機種の音質に比べると、audio-technicaとナカミチのバナナプラグは未使用時の裸線との比較では明らかにデメリットを感じてしまうレベルです。とは云え、audio-technicaのロックヘッドにNakamichiのアルミニウムカバーの組み合わせは個人的にけっこうツボりました。ロジウムメッキと違ってかなり暗めの音色ではありますが、出音がフラット指向になり、安っぽい真鍮のぼんやりした響きと音場の樽型収差から解放されますので、どちらかのバナナプラグを既にお持ちの方は、試しにカバーor本体をニコイチにしてみるのも面白いのでは~と思います。
次回はなんとなく低価格スピーカーケーブルの一斉比較テストを予定していますが、たぶん間にいくつかの製品の個別レビューが入ってからになる筈。箱ピュアオーディオ管理人はいつもふらふらきまぐれですので~゜゜(´□`。)°゜。