【aeco ABP-1111 vs ABP-0202比較レビュー】
ABP-0202|ABP-1111構造編|メッキ比較編|ABP-1111総評編
台湾AECコネークターズの高級ブランドaeco製バナナプラグ構造編の続き、肝心の音質のインプレッションです。aecoのバナナプラグ以外でもメッキによる音質の違いについて参考になればと思います。今回比較したのはABP-1111の金メッキ、銀メッキ、ロジウムメッキ。ABP-0202R(旧型ロジウムメッキ)です。導体は高純度テルル銅。全て一般的に下地に良く使われているニッケルメッキを施さない純粋なダイレクトメッキで、メッキ品質は極めて良好。バナナプラグの数度の抜き差しで簡単に剥げるような脆いメッキではありません。
ABP-1111は旧モデルABP-0202と比べてかなり複雑な構造。新品初期挿入は固すぎず適度。樹脂パーツによるダンピングが吉と出るか凶と出るか? ベリリウム銅で作られた導通部のコンタクトヘッドは旧型より更に小さく、導体とプラグヘッド間のネジは1ヶ所止め。後部のネジはスピーカーケーブルの被覆を止めるものです。
テストシステムは前エントリの後半で紹介した3つ。条件が変わることである程度印象及びシステム毎の相性が変わりますので、個別のレビューが(他のシステムでは)絶対的な指標にはならない点も含めて、緩く参考にしていただければ幸いです。例によってパンドー29D若しくは消毒用アルコールとシルコットでクリーニングしつつ取り付け作業しました。
ロジウムそれとも金メッキ?オーディオ端子のメッキと音質について考察してみる。
ROTEL RDA-06 × audiopro Image12
実質Bang&Olufsen ICE PowerのデジタルアンプROTEL RDA-06とスウェーデンの小型スピーカーaudiopro Image12。センシティブ高解像度系のクールサウンドシステムです。スピーカケーブルは AET EVO-F125。新品ですので裸線接続で数日間聴き込んでからバナナプラグの比較をはじめます。※SPケーブルの単独レビューは後日別のエントリで書く予定。
ちなみに今回はアンプ側で無くスピーカーのaudiopro Image12側にバナナプラグを使ってみました。スピーカー側は振動がより激しく伝わるため、バナナプラグ使用によるメリットとデメリットがアンプ側よりもより強く出る傾向があります。尚、CDトランスポートはCREEK Evolution-CD。DACにオーストリア製のPro-Ject Head Box DSを使っています。
ロジウムメッキ ABP-1111R
音色が明るく、切れ込みの鋭いシャッキリとメリハリのある明快でハキハキしたハイスピードサウンド。定位感がクッキリと向上する反面、残響は僅かに整理される方向で、銀白色系光沢と云っても、聴感上は旧型ABP-202Rに比べて仄かにマット調、バナナプラグにありがちな金属付帯音による潤い感は少なめ。高品質ロジウムメッキで見た目はテカテカなのですけど、見た目ほどのカラーレーションは乗りません。音楽的には他のメッキに比べてやや表情が硬く、中~高域が少し目立つ感じはあるのですが、レンジそのものは広く、ダンピングが効いていて音楽の流れそのものはエネルギーが失われず前向きで快活。
銀メッキ ABP-1111S
ロジウムに比べて明らかに響きが多く、全域で音の立ち上がりに甘い丸みを帯び、耳当たりが柔らかくなります。メリハリやエネルギー感はロジウムに譲りますが、深みがあり、ニュアンスが豊かで内向的な方向での表現力は銀メッキに軍配。光と陰の影の部分が良く描写され、なぜかS/Nが良く聴こえる。高域に銀メッキらしい明るい艶が乗って支配的になるのかと思いきや、このプラグの場合は落ち着いた色調で大人のサウンドが持ち味。高域は銀メッキの癖が過剰にならずマイルドで聴きやすい。細部の情報が響きに埋もれて僅かにマスキングされている感じと、旧型ABP-0202Rに比べて光沢感は控えめなのはこちらも同じなので、プラスチックパーツによるダンピング構造の影響はかなりありそう。響きが少し夜霧のような感じになる。そういやCHORD CampanyのケーブルにはC-lineを除いてプラグに珍しく銀メッキが使われているのですけど、CHORDの個性は割とこのメッキによる影響が馬鹿にならないのではと思っていたり。
金メッキ ABP-1111G
こちらもロジウムメッキに比べて響きが柔らかく立ち上がりが甘めなのは銀メッキと同じですが、コンサートホールの白熱電球色を思わせる、金メッキ独特の華やかな色が音に付きます。真鍮のキャラクターに似ているのですけど、其処まで派手ではありません。中庸の表現力と安心感のあるウォームでリッチなサウンドが特徴で、解像度を保ったままバランスが下寄りになり、3種メッキの中では一番ウェルバランス。低域方向がよく見えるようになるためか、S/Nの深さが更に良く感じられます。
旧型ロジウムメッキ ABP-0202R
以前にレビューした旧タイプABP-0202Rです。良い意味ですごくロジウム。新型よりも旧モデルの方がよりロジウムメッキらしい光沢感と真鍮素材的な滑らかな潤いが乗る印象で、美音系の綺麗な余韻が印象的。旧型のレビューでは「鮮度が高く、クッキリと明るく溌剌としたハイスピードサウンド」と書きましたが、新型と比較してしまうと相対的にスピード感が緩く、立ち上がりがマイルドに聞こえてしまいます。上下のレンジの伸びも新型ほど拡張されておらず、全体のメリハリは控えめ。中域寄りでほんの少し丸みを感じる音場展開。表現力は中庸~僅かにポジティブ。
ROTEL RDA-06×audiopro Image12との相性では、新型のロジウムメッキが音質、快活さ、レンジ感、エネルギー感全てで一枚上。金メッキは低域の深みと音楽的なバランスの良さ。銀メッキは静的な方向性で独特の響きに包まれた陰影と世界観で、管理人みたいな銀好きは特にハマりそうなニュアンスが漂います。ただ銀メッキが若干思っていた傾向と違って、元々ハイ上がりでセンシティブな傾向が強いROTEL×audioproに限っては相性の面でいまいちでした。
Miuaudio MKTP-2 × QUAD L-ite2
真空管プリ+デジタルパワーアンプのハイブリッドアンプMiuaudio MKTP-2(CarotOne ERNESTOLO)と、英国の超小型2wayスピーカーQUAD L-ite2の組み合わせ。間接音成分が多く透明感の高い広い音場が特徴。このシステムはバイワイヤリング接続の為、クロスオーバー2200hz以上のトゥイーター側のみでのテストになります。スピーカーケーブルはAcoustic Harmony N1。平均的なスピーカーよりもトゥイーターがより低い帯域(いわゆる中高域)まで広くカバーしているため、高域側の変更による影響は大きいタイプです。CDプレーヤーはARCAM CD72T。
ロジウムメッキ ABP-1111R
旧型ABP-0202Rや新型シルバーメッキに比べて響きが少なく、ダンピングの効いた高域。ROTEL+audioproのシステムで使った印象では新型ロジウムメッキがベストでしたので、miuaudio×QUAD L-ite2でも最有力かと思いきや、う~ん…。敢えてバイワイヤのツイーター用に使うには残響感が不足している印象。意外ですが銀メッキと違って高域はそんなにキツくありません。高域に芯が出ますが表情が固いイメージ。強いて良い点を挙げるとすると旧型ABP-0202Rよりは集中力があります。
銀メッキ ABP-1111S
上品で甘みのある響きを伴う快活で切れ込みの鋭い高域、これは良い意味で銀メッキの質感が生きた狙い通りのサウンド。ウーファー側のエネルギー感に強く影響しないためか、ROTEL+audioproのシングルワイヤリングで感じられたエネルギー感の弱さや暗さはこちらでは殆ど感じられず。新型の持ち味であるパリッとした快活な音楽性も適度に感じられてウェルバランス。聴感上の解像度が高まる上にニュアンスが豊か。スピーカーケーブルの音質傾向にもマッチしていて豊潤且つリッチなサウンドになります。
金メッキ ABP-1111G
銀メッキほどではありませんが程々に響きが乗り、こちらも高域に明るく華やか暖色系の色が付きます。響きの量では旧型ABP-0202Rに一歩劣るけど、こちらの方が音像がシャープで表現も快活。音楽性と音質のバランスが良く、ダンピングの効いたカラッとした明るい傾向のサウンドです。
旧型ロジウムメッキ ABP-0202R
元々miuaudio×QUAD L-ite2ではこれを使っていましたので、上の新型のレビューはここが基準になるのですが、比較すると新型に比べてホールトーンの響きが多く緩めの音で、より美音傾向が強まります。ただ解像感や音像描写の点では若干集中力が足りない傾向があり、音質と音楽性の面では新型の方がより明瞭度が高く、快活で愉しめるサウンドです。スピーカーとスピーカーケーブル次第でどちらが合うかはなんとも言えませんが、miuaudio+QUAD L-ite2のトゥイーター側には銀メッキのABP-1111Sが圧倒的に良好な結果でした。
CREEK Sequel2 × EPOS ELS3
レトロ調ブリティッシュサウンドの音楽性重視システム。ウォームな音色で高域の解像度はそれなりですが、直接音の音密度が高く、前2つのシステムに比べてエネルギー感が強く低域もそこそこ出ています。バナナプラグはアンプ側のスピーカー端子に。CDトランスポートにはCREEK CLASSIC CD。DACがMusical Fidelity V90 DACと云う構成です。
ロジウムメッキ ABP-1111R
残響成分の粒子情報がやや削られるものの、音像のサーフェスが滑らかで聴きやすく、直接音の音密度が上がり、エネルギー感、ダンピングが向上する方向性。音色にロジウムらしい明るさも加わり、快活で朗らかな雰囲気に。厳密にはバナナプラグ未使用時に比べて僅かに解像度が落ちるのですが、そもそも音楽性重視で敢えて選んでいるCREEKに現代的なディテールの解像感は求めていませんし、なによりも動的音楽性が向上するため、バナナプラグ無しよりも音楽再生機としてはむしろ好ましい音傾向になります。
金メッキ ABP-1111G
金メッキ特有の暖色系の色彩が加味されますが、元々のCREEKのレトロなセピア色の色彩と混じっても違和感が出にくい暖色系のためか、カラーレーションでの違和感は無し。突出した偏りがなく中庸のイメージながら、こちらも音像のエネルギー感とダンピングが向上し、動的な音楽性が向上します。滑らかさと輝き感ではロジウムメッキが魅力的ですが、こちらはよりオーソドックスなバランスで低域方向の厚みが増し、華やかさと深みを兼ね備えた音に。金メッキもなかなか魅力的でロジウムメッキと甲乙付けがたい印象。
銀メッキ ABP-1111S
金メッキに比べてより立ち上がりがスィートで響きも更に多く乗ります。元々このCREEKのシステムはトゥイーターの響きが不足している印象があるのですが、そこが見事に払拭される印象。金メッキに比べてハイ寄りで低域のレンジが狭くなりますが、暗く沈み込んだ背景からふわりと立ち上る光の粒子のようなニュアンス豊かな表現が魅力的な大人っぽい音質。聴感f特も中域がふくよかに張り出すマイルドなイメージ。元々エネルギー感が強いので若干のパッシブ傾向はむしろバランスが取れる方向性に。美音や個性を求めるならこれだと思います。
旧型ロジウムメッキ ABP-0202R
先日のこちらの記事でも比較レビューしましたが、別条件ですのであらためて。新型に比べて響きが多く美音系。硬質で滑らかな音像と潤いのある間接音、こうやって4種類を比べると、ことさらロジウムメッキである事を意識する必要は無い印象です。新型に比べてパッシブ傾向になるかと思いきや、元のシステムの押し出し感が強い場合には、むしろ旧型の方がバランス的に良くなる傾向も。
CREEKのシステムでは、4種類どれを使っても、バナナプラグを使わない裸線接続よりも音が良いという、シンプルイズベター推奨の管理人としてはあんまり認めたくない事実に遭遇してしまいました・・・(≧◇≦) 音質面では何れも功罪あるのですけれど、音楽性の面では明らかにプラスになっているので、「使わない」という選択肢が自ずとなくなってしまいました。新型の銀メッキはMiuaudio MKTP-2に相性面で決定しているので、新旧ロジウムと金メッキ、3種類のうちどれかを常用すべきな感じですが、これ凄い悩みます・・・(今のところ決められず。たぶん新型ロジウムか金メッキになるとは思う・・・。)
英国 Musical Fidelity V90 DAC 小型D/Aコンバータのレビューでございます♪
バナナプラグ4種類を音質比較してみました♪【数百円~1万円超】
6000文字近くなりましたので、ここでまた記事を分割することに(^^;)。後半はメッキの違いにかかわらず、新型バナナプラグaeco ABP-1111について感じたメリット・デメリット双方についての総評をまとめてみます。
【aeco ABP-1111 vs ABP-0202比較レビュー】
ABP-0202|ABP-1111構造編|メッキ比較編|ABP-1111総評編