え?箱庭なのにトールボーイ?いいえ、これは箱庭です。いみわからん前置きはこれくらいにして、このスピーカー、トールボーイの割に結構価格が安いのです。何しろ他のスペンドールの小型ブックシェルフよりも安いというので紹介してみたいと思います。
定価¥189000(ペア/税込)実売10万円台半ばといったところですが、安いか?という問いに答えるとすると、英国本国の価格は£1,295.と書いておきます。なんと送料かかってるのに今のレートだと日本の方が安いです。個人輸入完全敗北です。たまにはこんな事もある。。。と云うか輸入元のトライオードが良心的なのですね。
スペンドールはBBCモニターの流れを汲むイギリス伝統のスピーカーメーカー。BBCモニターで知られるLS3/5Aは、RODGERS/スペンドール/KEF/HARBETH等々のメーカーが作っていたのですが、近年のKEFはもうトラッドから脱却し完全にインターナショナルブランドに転向、ロジャースはずっと行方不明に近くて、最近LS-3/5aと、その65Th Anniversary Editionを復刻。という事で、昔ながらの伝統的なブリティッシュサウンドをLS3/5Aに止まらず今でも色濃く継承しているのは、旧BBCモニターのメーカーではこのスペンドールとハーベスくらいになってしまいました。
そんなスペンドールは、今でも伝統のシンプルでソリッドな英国家具デザインのまま、昔の乳白色の透明なポリマーコーンウーハーを継承しつつ、内容をブラッシュアップしつつ新製品を送り出しています。A3はそのなかでも「Aライン」という高級なラインナップの末弟機。日本では価格帯をおもいっきりウィーン・アコースティクスにぶつけてきている感じですが、ウィンアコもそうですが、このクラスのスピーカーは基本的に上級ハイエンドスピーカーの部品品質やネットワークを維持したまま、サイズやユニット数をシンプルにして低価格化しているだけですので、AV系の所詮安物SPが肥大化したタイプと違って、小さくても真っ当な良い音がするのが特徴です。例えば高級車と同じ部品で作られた小型車のようなもの。ちなみにA3はLS3/5Aを元に設計されたSpendor S3/5Rの派生後継機として、フロアスタンド型の上級機A5と高級ブックシェルフのSA1の技術を元に設計されたとの事です。
2024年現在、日本国内ではSpendor A-LINEとして小型ブックシェルフA1と共に旧A3とほぼ同サイズになるA2、上位モデルA4、A7の2WAYトールボーイが販売されています。
A3は(幅)165x(高さ)755x(奥行)250mm、搭載ユニットが15cmポリマーコーンウーハーと、22mmソフトドームツイーターの組み合わせ。サイズは箱庭コンパクトサイズのブックシェルフ・スピーカーを縦に伸ばした程度のスリムトールボーイですが、フロアスタンド型と言っても高さは755mmですからかなり低めです。テレビの両側に置くにしても、26型や32型など中小型液晶テレビとバランスが取れるサイズといえは判りやすいでしょうか。リアの端子はバイワイヤー仕様でWBTの高品位ターミナルが使われています。クロスオーバーは高く4.2kHz。ユニットの繋がりによる違和感は少なそう。インピーダンスは8Ωですが能率が今時のスピーカーらしく85dBと低めですしので、昔のSpendorの音のスカスカ感はある程度緩和されてきてるのかな。。。それとフロアスタンド型ですので、別途高音質なスパイク受けが必須になると思います。
で、A3は出たばっかりなので未だ試聴してませんけれど、上位モデルトールボーイ型スピーカーの印象を述べると、相変わらずスペンドールの音は健在だな~と思いました。今時の高音質Hi-Fiからは一歩引いたところにある、英国伝統の自然なトーン、ウッドキャビネットの箱鳴りを生かしたナチュラルで端正な音色です。今時のHi-Fiオーディオが目指している広大なレンジや金属的な立ち上がりの速さ、ツヤ感、膨らみを演出された音場などとは正反対、基本的に「高音質っぽい誤魔化し」という類のはったりが利かないソリッドなサウンド。しょぼいシステムで鳴らすと大層しょぼい音がしますので(~~; スピーカーの値段に関わらずそれなりの音がする出来れば小洒落たヨーロッパ製の真空管アンプやソリッドステートアンプを合わせて聴いて欲しいところです。
Spendorのスピーカーが似合う音楽。ブリティッシュロックやポップスを今時のドスの利いたパンチ力では無く、当時の雰囲気たっぷりに再現できるのは鉄板として、ここはやはりクラシック音楽。それも現代的なクラシックよりも、古めの録音、バロックや室内楽の相性が良さそう。端正で極めて英国的な空気感ですが、ヨーロッパ系にありがちな濃厚な音では無いと思います。基本的に年月が経つほど味が出る、そんなぶれない生活をしていらっしゃる方に似合いそう。長年のレコード収集や研究書籍が詰まった洋風の書斎にスペンドール・・・うぁ、書いていて管理人自身が欲しくなっってきました。 ただ日本には価格が安い代わりにチェリー仕上げしか入ってないんですね。本国ではチェリーの他にライトオーク、ダークウォルナット、ブラックアッシュがあるみたいですので、日本でも少なくとも特注が出来れば良いのにと思いました。
Spendor A3のイギリスWHAT Hi-Fiでの評価は4つ星。Spendorの製品は5つ星の常連ですのであれ?という感じですが、どうやらレビュアーはパンチが効いていて中~高域の質感は高いが、低域の量感がイマイチ気に入らないらしいです。高さが3cm高いだけのA5の方が余裕があって良いと。ウーファー付いてるもんそりゃそうだ。でもA5はA5で、5つ星ではありますが、スケールの大きな価格を超えた音質だけど、小さいくせに小さい部屋では使えないよ!との評価、あはは~♪
Hi-Fi Choiceの方でも、音の出方が端正で丁寧過ぎるくらいで、デリケートな中域と良い音像展開、特に声が良い。高域の伸びと輝きはイマイチ、低域はドライ、中域の品位が高い反面、熱意とパンチが足りず音の出方が少しソフトでやや表現がコンパクトに過ぎる・・・レンジは程々で、ダイナミズムには欠けるとの評価です。セッティングや試聴機器の違いからか、後半はWHAT Hi-Fiとはやや異なる事が書いてありますね。管理人個人の印象としても Hi-Fi Choiceのレビューの方がSpendorの持ち味としてしっくり来ます。バスレフ型ですので、低域の量感については背後の壁との距離である程度まで調整すべきポイントになりそう。ある程度フラットに出せる公称音域が70Hz-20kHz程度ですから、レンジを小型スピーカー並みにコンパクトに纏めてきているのは仕方ないと言ったところでしょうか。
でもこれ、日本のようなうさぎ小屋生活で、小さめのテレビと一緒に比較的小さめの音で使う場合、A3の方がA5よりバランス良い音で聴けそうじゃ~ん!と思ってしまったのでした。とりあえず、もうDALI RoyalTowerが入手できない現状、Spendor A3とVienna Acoustics BACH GRANDは、このクラスのトラディッショナルでヨーロピアンな音のするコンパクト・トールボーイSPとして、トップクラスの選択肢の1つになりそうです。
ちなみに管理人の場合、メインシステムのトールボーイ型はVienna Acousticsでじゅうぶん満足できてしまったので、サブシステム用の高級ブックシェルフとして、Spendor A-LINE A1か、S3/5R(2007年)、S3/5R2(2010年)、Classic3/5(2017年)の正常進化となるClassic 4/5が欲しいところ。高さ30.5cmのほぼ同サイズで実売価格も大差無し。ユーザーの音質指向に応えて敢えて異なる設計で併売されているスタイルです。管理人の場合、A1とClassic 4/5のどちらが好みなのか!?滅茶苦茶悩みそうな感じではありますけれども~゜゜(´▽`。)°゜。
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貴殿のブログに惹かれ、A3実機到着致しました!音はセッティング中ですが、低音域は結構出てますよ♪因に、ターミナルはバイワイヤ仕様ではなくシングル仕様です。