8年前に購入した時から時々調子がおかしい我が家のVienna Acoustics T-2。ごくたまに、片側のスピーカーのバスレフポートからジージリジリという共振ノイズが出てくるのです。特定のCD、クラシックのピアノやクラリネット、ホルン等でしか発現せず、湿度や温度の関係で症状が全く出ないこともままあり、再現性が低いのでちゃんと修理をしたことはありません。ここ数ヶ月は殆ど問題無かったのですが、今日、春一番の気圧変動の影響か、また片側のスピーカーからのジリジリ音が再発してしまいました……( ³△³ ).。o
とは云いましても内部に詰めたELACの制震材ELAC LS FILLER込みで片側30kg以上あるスピーカーを梱包して、輸入代理店のC.E.Cに送り、しかも修理代○万とかなると少々気が思いと云うか、正直やってられませんってな感じです。。。そんな感じで、自分で出来る範囲で原因を究明しようと、今日は思い切ってスピーカーユニットを外してみることにしました。。。
Vienna Acoustics T-2はバスレフポートが上下に二つあるデュアルバスレフというちょっと変わった構造です。ユニット構成も見た目は3WAYですが、トゥイーター以外の2つのウーファーはほぼ同相に近い動作(注:ある程度は違う)をしているらしく、変則的な2WAYとなっています。ちなみに後継機のウィーンアコースティックT-2Gは低域担当ウーファーを下側に離した完全3WAY構成に変更されています。
旧型T-2の特色である…やや逆相成分が混じり気味の中域の豊潤な響き感は、この同相マルチユニットの位相特性の僅かなズレがもたらしている感が多分にあり、3WAYとなった現行のT-2Gはよりワイドレンジで高音質になりましたが、引き換えにT-2の持つ豊潤感と演出された音楽性が少し抑えられ気味と云いますか、もう一歩退いた落ち着きと清潔感のある整頓された音になったように思います。(昨年全世界150ペアの限定販売されていたVienna Acoustics T-2G Limited Editionは、量産型のT-2Gとは比べものにならない程高音質だったらしいのですが、残念ながら実物に出会わずじまいでした。。。何と150ペアのうち100ペアが日本で売れたそうです。)
更に上位モデルのVienna Acoustics T-3Gは、ユニットを5つ使用した変則3WAYで、低音担当のウーファーが同相トリプルユニットなのですが、こちらはT-2の持つ独特の響きの豊潤感を更に強化したような音と活発な音楽性が持ち味で、うちにあるT-2は、より音質が洗練されたT-2GよりむしろT-3やT-3Gのふくよかな音調に似ていて、T-3Gをハーフサイズにスケールダウンしたような音色かなぁと個人的には思っていたり。※当然Gの付かない旧型T-3の方がT-2に更に似ていると言えばそれはそうです。
故障に話を戻しましょう。このジージリジリというノイズ。。。以前から気になりつつもどうも原因が掴めません。とりあえず、現状向かって左側のSPからのみ聞こえると云うことで、左右を入れ替えてみたところ、今度は向かって右側からノイズが発生。やはり原因はスピーカー自身であり、接続されたアンプ等コンポーネント側の問題ではないようです。
このノイズ、トゥイーターの丁度裏側にあるバスレフポート(二つあるポートの上の方)の中から聞こえるのです。そこでまず、プラスチック製のバスレフポート自体が共振しているのかと考え、ネジ止めされているポートをキャビネットから外してみるも全く症状に変化無し。次は思い切ってトゥイーターを外して左右を入れ替えてみます。トゥイーターを外すのなんて7年ぶりでしょうか。ユニットの着脱をすると必ず音質が変化する(良悪どっちに転ぶか判らない)為あまりやりたくはないのですが、この際仕方がないですので。。。尚、ユニット着脱にはT10のへクスローブレンチ(トルクスドライバー)が必要になります。
ウィーンアコースティックの場合ユニットと内部配線がハンダ付けされている訳ではありませんので、配線を丁寧に引っこ抜けば簡単に外せます。ツイーターは汎用品と思われるScan Speak(スキャンスピーク)D2905/93003。Made in Denmark。25mmのシルクドームトゥイーターです。こちらのリンク先では部品としてペア33000円。詳細は不明ですが、噂によるともっと上位のトゥイーターに交換すれば更に音が良くなるらしいです。スピーカー買い換えより遥かに安いですので、D2905/9700番とか、ネットワーク変更為しにポン付けで問題無いのでしたら、機会があれば交換してみたいところ。。。
肝心の入れ替え効果ですが、残念ながら症状に変化無し。トゥイーターはジリジリ音とは無関係だったようです。以前トゥイーターを外したときは、新品時に電動ドライバで取り付けられていたユニットの機械的歪みが取れたためか、当時悩まされていた慢性的なツイーターの歪みがものの見事に完全に解消され大成功した覚えがあるのですが、今回も左右入れ替えたら何故か少し音が良くなりました。。左右のネットワークとのマッチングとか、ユニットを勝手に入れ替えて良いのか?って感じですが、とりあえず左右の音量バランス等も問題無いみたい。
仕方がありませんので、次はミッドウーファーユニットの左右入れ替えにチャレンジです。T-2のドライバーを外したことは今まで一度もありません。ユニットは奇麗なスケルトンのXPPポリプロピレンウーファー。触るとかなり弾性のあるソフトな素材で、Vienna Acousticsに共通する独特の弾むような柔らかい音色は、このユニットの性格が色濃く反映されたものです。こちらはノルウェーのSEAS(セアス)製。型番表記が無く、Vienna Acousticsのラベルが貼られていますので、多分ウィーンアコースティックの特注?では無いかと思うのですが、噂によるとセアスの汎用品でT14RCだかT14RCYという型番が近いらしいです(注:ウィンアコOEMの細部は微妙に違うみたい)。こちらもポン付けできそうな近似ユニットが市販されていますので、壊れてたらこの際ユニットのアップグレードに挑戦してみるのも面白そうです。(RCY系は低域方向がタイトらしく、バランスが変になる可能性も…)
ユニットのボイスコイルにゴミが入ってジリジリとしたノイズが出るという話は良く耳にしますが、観た感じゴミが外部から侵入する余地は正直あまり無さそう。この時T-2のエンクロージャーの中を見て驚いたのですが、上二つのユニットと下のユニットの間に、斜めに仕切りが入っていた事。ほぼ同相で駆動されているとはいえ、キャビネット的には別スペースなのですね。どうりで耳を近づけると上下で少し違う音がするというか、ドラムやティンパニが鳴る際にウーファーのストローク量が上下で違うのです。バスレフポートが上下に二つ付いているのも、キャビネット内が仕切られているせいだったのか…。上側だけ観れば完全にバスレフ型の小型ブックシェルフスピーカー。構造を例えると、ハイカットされたフルレンジのトールボーイスピーカーに、HAYDNことウィーンアコースティックS-1が乗っかっているようなものかも。
この時にふざけてミッドウーファー抜きで音を出してみたのですが、この音がまた良いのです…。、まぁドンシャリ気味ではあるのですが、なんというか、スキャンスピークのトゥイーターの繊細で解像度の高い神経過敏な音質がクローズアップされ、まるでB&WのNautilus(ノーチラス)805Vみたいな分解能の高い明瞭な音質になり、大笑いしてしまいました。たぶん、皆さんにこの音を聴かせたら、これはこれでかなり高音質だって納得するんじゃないかと…( ̄▽ ̄;)。
さて、それでは上側のウーハーユニットを外して左右を入れ替えてみます。結果、ジリジリ音完全消失…V(^_-) ユニットに問題があるとして、ジリジリ音が左側へ移動となるなら解るのですが、見事に全く治ってしまいました。ただ、音質は独特というか、響きが増えて音場がかなり広がった感じです。歪みっぽさも全くなく大変気持ちよいのですが、引き換えに逆相成分が増えているというか定位がやや不明瞭になってしまいました。※配線の±は正しく結線してます。ウーファーの左右の特性差とネットワークでの補正とか、個体毎に揃えていそうですので、勝手にユニットだけ入れ替えちゃ不味いような気もしますが、まぁVienna Acousticsは左右ペアマッチングの上で製造番号付加しているらしいので、大丈夫なのかな~?にしても音質激変気味ですけど。。。ホントはこの場点で、特性を上下でマッチングしてるであろう?下のユニットも左右入れ替えすべきなのでしょうが、とりあえず今日はめんどくさいので保留しておきます。
2008/3/10 追記:
昨日めんどくさくなって途中で放り出した下側のウーファーも左右入れ替え。これで3つのユニット全てが左右で入れ替わりました。それと、昨日はストレートのヘクスローブレンチで仮止め…最後の一締めを加えていない状態だったユニットを、L字型ヘクスローブレンチできっちりと最終増し締め。響きがワーッと広がり緩かった音が、タイトで定位も明瞭になりました。以前よりもトゥイーターのネジ止めトルクを高めたのですが、高解像度でHiFiになった分、やや緊張感が出過ぎかも。。。緩めの方が音楽的だったなぁ。そして低音が不足気味。エンクロージャーとユニットがさすがに馴染んでないからでしょうか。なんか鼻詰まりっぽく聞こえてきたのでネジをほんの少しだけ弛める。緊張感は改善しましたが、低域は出ませんしなんだかユニットが馴染んでない雰囲気のする音。本来のコンディションに到達するのは暫く先になりそうです。
まぁこの辺りはユニットに手を出した以上仕方がありませんので、エージングによる調和を気長に待ちます。そうだ、ユニットと内部配線の接続部分ですが、昨日トゥイーターと中央ユニットを入れ替える際にクリーニングど忘れ。ユニット着脱を繰り返すとキャビネットのねじ穴がバカになって来そうですし、あえて外してクリーニングはしないでおく。下のユニットの端子部はソルベントで奇麗にしました。ほんの少しだけですが汚れてました。
2008/3/11追記:
Vienna Acoustics T-2の左右ユニット入れ替えの結果、ノイズは無くなったものの、音質の調子はなんだかイマイチ。低音が足らないのと音が鼻づまりっぽい。まぁユニットとエンクロージャーが馴染むまでしばし我慢ではあるのですが、私は気長にエージングを待つってのが苦手で、元々出ていた筈の良い音が出ないというのは、ちょっと気分的にダウンなのです。
コメント一覧 (1件)
はじめまして。
モーツァルトグランドを愛用する素人愛好家です。
実は、我家でもこの記事と殆ど同じ症状がでておりまして、大変参考になりました。
ありがとうございます(^-^)
へクスローブドライバーを購入して、今週末にでもユニット着脱を試してみようと思います。
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