実は先日の「サブシステムA」の再セッティングですが、本命はアンプの入れ替えだったりします。元々2005年に購入したONKYO A-1VLが15年以上もここに鎮座していましたが、新たに入るのは、カナダ・ケベック州モントリオール郊外に本拠があるハイエンドオーディオメーカーSimaudioのインテグレーテッドアンプ Moon Neo 220iになります。
カナダ本国での完全国内生産
Simaudioは完全なカナダ本国内での自社生産をしている数少ないメーカーで、構成部品等もなるべく自社生産及びカナダ国内にある製造元から調達しているそうです。現代では、ブランドの設計やデザインは欧米あるいは日本にあっても、生産や部品調達は中国の下請け工場やOEMメーカーが大半。純粋なカナダ本国生産と云う点も、ハイエンドオーディオとしてSimaudioの存在価値を少なからず高めているポイントになります。
上記を読むと解りますが、製品保証10年、想定する最低耐用年数25年と云った長期使用を前提に、オーディオ機器の製造に、ここまでこだわりを持つブランドは世界でも数少ないと思います。過去に発売されたモデル含め、ほとんどのパーツ類を完全に保管しているとのこと。
余談ですが、2017年に経営破綻した同じカナダのハイエンドメーカー「CLASSE(クラッセ)」こちらは再興して、現在の新しいモデルについては日本のD&M(デノンアンドマランツ)白河工場で生産しています。
Simaudioの呼び方
Simaudioは正式にはシムオーディオと呼びますが、自分は最初にシマウディオと覚えてしまったので、この呼び方が実は今でも頭から抜けません…..( ̄▽ ̄;)。ディナウディオ/ダイナオーディオみたいなものですが、シマウディオ呼びの方がシムオーディオよりも正直格好いいと思うので、個人的には脳内でシマウディオと呼んでいます。そもそもSimaudio(旧Sima Electronics)の創業者はユダヤ系カナダ人のVictor Sima博士(カタカナでシマorシーマ)。SimaudioはSima Audioが語源ですから、発音がシマウディオでも良いのでは?なんてね\(^o^;)/。※ちなみに最初に名前を見た時は、もしかして日系人の島さん?かと思いました~゜゜(´□`。)°゜。ちなみにNeoもネオではなくニーオと読むそうです。
Simaudio Moon Neo 220i 導入の経緯~メインシステム
Simaudio Moon Neo 220iそのものは2年半くらい前にメインシステム用途のつもりで購入し、暫くはメインシステムで使っていました。しかし色々あってその後に追加したAUDIOLAB 8300Aに置き換わった為、Moon Neo 220iは繋げる相手が居ないまま、しばらくリビングに予備機として飾ってあったものです…( ³△³ ).。o
メインシステムで長く使えなかったのには訳があり、組み合わせ試聴が出来ないまま自己推定で購入した結果、思っていたよりもVienna Acoustics MOZART T-2 Signatureと巧くマッチングが取れなかったのが理由です。上位モデルMoon Neo 250iとMOZART T-2Gの組み合わせで上手く行っているパターンを海外で見かけたので、こっちの組み合わせでも行けるかと思ったのですが・・・…( ³△³ ).。o
結局スピーカー側とアンプ側で、音楽を鳴らそうとするポイントと本質的な性格が違いすぎて、威圧感の強すぎる、アグレッシブで長時間聴き続けられない類の音が出てしまい、色々と試行錯誤しても、上手くマリアージュする道筋を見出すことが出来ませんでした。6Ω/60Wの小出力アンプですので、当初はドライブ力不足を心配していたのですけれど、MOZART T-2と組み合わせた場合、実際には駆動力が高すぎて、特にトゥイーターが過入力を受けきれずオーバードライブ気味。音圧感と低域方向の深い沈み込み、微動だにしないスタビリティの安定感は、とてもこのクラスのインテグレーテッドアンプの描写とは思えないハイエンドライクな描写力ですが、よりパワーのあるNeo 250iを選択していたら、正直、更に持て余していたかなと…( ³△³ ).。o
メインシステムの場合、結局元々入っていたTAG McLaren 60iの後継機に当たる、よりニュートラルで無難な傾向のAUDIOLAB 8300Aでは相性面での喧嘩は起こらず、リビングルームのプリメインアンプについては今ではそちらに落ち着いています。
AUDIOLAB 8300A (脇道)
AUDIOLAB 8300AとSimaudio Moon Neo 220iでどちらのアンプがより潜在的ポテンシャルが高いかと問われたら、それは間違いなくMoon Neo 220iの方なのですが、低価格な小型スピーカーや音源への守備範囲が広く、よりバーサタイルな性格で鳴らしやすいのはAUDIOLAB 8300Aだと思います。AUDIOLAB 8300AはAUDIOLAB(+TAG McLaren)の歴代同型旧機種とそのまま入れ替えた場合にも問題無い音作りがされていて、英国、欧州のフラット住宅、小さなリビングや書斎に於いて小~中音量再生でこそ本領発揮する、いかにもブリティッシュサウンドの流れを汲む、レンジ感を抑えたトラッドでスタンダードなサウンドが持ち味です。
但しどちらのアンプもポン置きで素の状態ではあんまりパッとしない部分があり、それぞれにセッティングを追い込む根気と腕が必要になるタイプのコンポーネントだと感じています。実際、両モデル共、完全新品から初期状態の音質はかなり悲惨でした。Simaudioではアンプが本来の性能を発揮する用になるまで400時間の初期バーンインを推奨していますが、実際のところ400時間程度では全然足りなくて、2台ともまともな音になるまで軽く半年以上かかりました。
Moon Neo 220iとNeo 250iの関係…旧 Simaudio Moon i-1 , Moon i.5
Simaudio Moon Neo 220iは、Simaudioのインテグレーテッドアンプの中では末弟機であり、一番下位のエントリーモデルになります。けれども、回路そのものは上位機Moon Neo 250iとほぼ完全に同一で、スペック及び回路上の250iとの違いは、自社製バイポーラトランジスタの出力を、250i=8Ω50W/4Ω100Wから、220i=8Ω40W/4Ω80Wと、-20%ほど絞っている点のみになります。その為、電源トランスが320VAと巨大な250iに比べて一回り小さい250VA仕様になっていますが、それでも同クラス他社製インテグレーテッドアンプと比較した場合には、220iでも十分に大きなトランスを積んでいると云えますし、おそらく、DAC付き多機能モデルの240iより大きなトランスが奢られています。よってNeo 250iとNeo 220iは、ドライブ力での差はありますが、直接同時に比較しない限りはほぼ同じ音質と見做して良いと思います。※220iは250iのお買い得版的な位置付けだと思いますが、本国では2017年、日本でも2020年にディスコンになっていて、2023年現在のローエンドモデルは250iと240iのみになりました。
実はこのSimaudio Moon Neo 220iとNeo250i。元々は2007年に発売されたSimaudio Moon i-1(250i)及び2009年発売のi.5(220i)がベースになっていて、カタログや説明書では便宜上同じ製品として書かれていたりします。
旧型番と何が違うのかと云うと、フロントパネルのデザイン。現在のMoon NeoシリーズはSilver/Black/TwoTone共にかなり格好良いハイエンドテイストなフロントパネルが奢られていますが、旧型のフロントパネルは90年代オーディオのデザインを引きずった、中途半端で高級感の無い、お世辞にも格好良いとは言い難いもので、正直、見た目でスルーしてしまう層もかなり居たのではと思います。2013年のMoon 「Neo」シリーズからは現在のデザインにリニューアルされていますが、合わせて中身の回路についても細かい部分がリファインされているかは不明です。あと、しょうもないデザインの安っぽいリモコンについては先代からそのままでした…( ³△³ ).。o。
しばしばSimaudioの音質は米国と北欧の音を足して2で割った音だと例えられますが、音質傾向についても北米ハイエンドオーディオの方向性を向いていて、英国的な、ミニマムスペースで鳴らしやすい箱庭バジェットHi-Fiサウンドでは無く、広い北米のリビングルームを前提に、しっかりしたスピーカーをがっつり鳴らすための音作りが為されており、それはこの弟機の驚くほどパワフル且つダイナミックレンジの広いサウンドからもヒシヒシと伝わります。
新型 Simaudio Moon 250i v2が2023年に発売されました
北米、英国、欧州圏のお話ですが、2023年に Moon Neo 250i の後継機として、Moon 250i v2がリリースされました。外観は従来のMoon Neo 220i / Moon Neo 250iと全く同じ。昨今の流行に合わせてアナログプレーヤー用のMM PHONOステージが追加されたのと、それに伴い、各入力のプリント名が変更になっているくらいです。あと、カタログ上の型番からNeoの字が無くなったのかな?
内部回路も見た目はほぼ同じですので、ナニコレ?MM入力増やしただけ?(代わりにLINE入力が1系統減)と思いきや、パーツレベルでは各所にブラッシュアップが施され、回路を踏襲した実質新設計だそうです。具体的には、トロイダルトランス変更、追加の内部シールド(フォノステージ対策)、自社製パイポーラトランジスタの上位クラス600i及び888モノラルアンプと同一品に変更。プリント基板及び全トランジスタを新世代に更新。コンデンサーにニチコン製、バージョンアップされたアルプス製ボリュームコントロールなど、高品質な日本製部品の採用も見られます。従来Simaudioは部品単位でカナダ及び北米内製に拘っていましたので、音質向上のためにグローバル化されたのかも知れません。
・・・見た感じ、右側手前にPHONOボードが追加され、その下の基板が斜めにカット。トロイダルトランスの直径が一回り小さくなっているのと、メインキャパシタが変更されています。まぁでも、基本的にはあくまで同じアンプのプラッシュアップですね。電源が100V-50/60Hzの独自仕様となる日本で発売されるのは、旧型250iの代理店在庫が掃けてからでしょうか。
Simaudio Moon Neo 220i サウンドレビュー
久しぶりにセッティングしたサブシステムAに、長年連れ添ったONKYO A-1VLとリプレイスする形で、初顔合わせとなるSimaudio Moon Neo 220iをセッティングしてみます。尚、スピーカーはaudiopro Image12。スピーカーケーブルはTAG McLaren F3-10-SPKです。実のところ、このリーズナブルなシステムと狭いスペースでのセッテイングに、雄大なサウンドが持ち味のMoon Neo 220iを組み込むのは、価格以前に本質的にかなりの贅沢と云いますか、まともにアンプの高性能を引き出せるのか?正直かなり不安でした。
実際に音を出してみると、まぁまるでONKYO A-1VLとは音の出方そのものが全くと異なります。大袈裟では無く、システム全部まるっと入れ替えてしまったくらい、音楽の提示の仕方、ステージの鳴り方がまるっきり違います。どのアルバムも、別のコンサートホールで撮った別録音みたいな印象になるとでも云いましょうか…(@_@;)。
先ず、非常に奥行きの深いパースペクティブな音場の中に、各楽器が整然と並びます。A-1VLではより手前、スピーカーの周囲に楽器が並んでいましたが、Moon Neo 220iでは音像の位置が遠く、定位が明らかにずっと奥側になります。A-1VLの音がコンサートホールの最前列で聴く音だとすると、Moon Neo 220iはより大きなコンサートホールの真ん中あるいは少し後ろの方で聴いているイメージです。スピーカー間が狭いセッティングですのでステージがミニチュアライズされるのですが、音量を絞ると感覚的には大きなコンサートホールの後方や2階席からステージを眺めるイメージでしょうか。小音量でもピンポイント定位が崩れず、そのままミニチュアの奥行きの深い音場空間が生成されます。
音場の広い空間型の描写ですが、同時に直接音の音像は高密度でシャープ且つソリッド。密度感や音圧感もかなり強め。リニアリティが直線的でハイスピードながら、どこか当たりがウォームで血の通ったまろやかさがあるのですが、これは5WまでA級動作していることに起因しているのかも知れません。
聴感S/Nは良く、背景が黒くグッと沈み込むタイプ。全体的に切れ味が辛口で厳格、極めて大人びた雰囲気で、内向的で緊張感が伴い、悪く云うとやや神経質な性格とも云えます。陽性なおおらかさだったり、良く歌う抑揚豊かなサウンドとはある意味で対極にあるタイプの音楽性ですが、聴き手を内面に引き込ような深い描写で求心力は非常に高く、背筋がぴんと伸びるような、クラシック音楽の理解が知的に深まるタイプのサウンドです。冷静かつ辛口で、音場をカメラレンズを通して眺めるような客観的鳴り方なのに、一音一音への求心力があるのは不思議ですよね。
このほの暗さと大人びた雰囲気、直接音は濃くウォームなのに、空間はひんやりとクールに響く鳴り方は、北欧デンマークのPRIMAREにも少し似ていますが、Simaudioはより辛口且つタイトで音像がソリッドに引き締まった描写です。
︙低域
音場スケールが上下左右、特に奥行き方向に大きく、ソリッドな音像描写にリニアなピラミッドバランス。意思が強く、スタビリティに優れているのがSimaudio Moon Neo 220iの特徴だと思います。
最も特徴的なのは低域の再現性で、管理人がこれまで手にしたプリメインアンプの中でも群を抜く沈み込みの深さとスケールを伴うディープな低域再現力には驚愕しました。メインシステムに繋げた際、あまりに低域が出るので、初代Vienna Acoustics T-2 Mozart Signatureでも、組み合わせによってはここまで深い低域が出るのかと驚きました。マンションでの小~中音量再生ではぶっちゃけ過剰な低域と云いますか、良く云えばこの点が欧州製では無い、アメリカンハイエンドサウンドの音質傾向を受け継いでいる部分になると感じます。また、制動力の高さから来るスタビリティの優秀さも特筆もので、所有する他のアンプの音は総じて空間そのものがふらふらしていることが判ります。
︙中域
定位は硬質且つタイトでソリッド。手前に出てくるタイプでは無く後方に深くピンポイント定位します。また、手前に来ないのに音圧感は強いです。完全な高解像度系の輪郭強調タイプでは無く、あたりに欧米製品特有のまろやかさはありますが、全体に緊張感が伴うカッチリとした雰囲気で、ダイナミックレンジがとても広い反面、官能的な抑揚表現はやや控えめ。女性的と云うよりは男性的な表現です。
︙高域
低域に続き中高域(楽音帯域の高域)の出方もこのアンプの特徴で、ヴァイオリンやピアノの右手方向、ソプラノ等々、非常にハイスピード且つリニアリティが高いのですが、逆に云うと楽音帯域の高域がしばしば攻撃的でストレートに過ぎ、セッティングを外したり元々のスピーカー(トゥイーター)との相性が良くない場合、音量が上がった時に耳の危険を感じるレベルで圧迫感を感じる場合があります。
特にピアノの高音部は必要以上にカンカン響く感じで、組み合わせるスピーカーの選択含め、このミッドハイの個性をどう手懐けるかが、Simaudioを巧く使いこなす最大のポイントになる様に感じます。
それより上の帯域はむしろ控えめなのか、フロアのS/Nは良く聴こえるのですが、細かいディテールがリダクションされて何処かに消えてしまっている印象が無くも無く…何かがボトルネックになっているような・・・?せっかくの辛口で高S/Nな描写にもかかわらず、A-1VLに比べるとディテールの音数がやや少ない印象はあります。
今後の使いこなしでは、中高域~高域の歪み感を出さずに、適度な明るさを加え、微小解像度を上げる方向でセッティングを詰める必要性を感じています。Simaudioが特にディナウディオのスピーカーと相性が良いのも、この高域方向の神経質さが、ナチュラルでマットな音色のディナウディオのトゥイーターに入力面の余裕があり、歪みにくいという理由が多分にありそう。
Moon Neo 220iが持つダイナミックレンジの広さ
これまでのONKYO A-1VLが展開する音場は、クリアな音色ながらも、イギリス的な箱庭サウンドに意外と近いものがあり、ダイナミックレンジがそれほど広くなく、程々に抑えたメリハリの中で、日本のONKYO製品らしい解像度の高さと輪郭強調されたハイスピードクリアネスを聴かせるタイプでした。小音量でも音痩せせずに明瞭に聴かせるアンプです。
対してSimaudio Moon Neo 220iは、まずもってダイナミックレンジが格段に広い。ONKYO A-VLやAUDIOLAB 8300Aで聴く際に無意識に基準としているpp~pの小音量旋律での音量中央値に合わせると、f~ffフォルテの強奏時に思わぬ破壊力を伴う爆音が出てしまうため、びっくりしてボリュームを下げる羽目になります。※要するに音量を均質化するcompressionと逆の現象です。ですので、先ず気をつけるのは、Simaudio Moon Neo 220iで音楽を聴く際は、これまでのアンプよりも努めて一段から二段、音量を更に抑えて再生しないと、大音量再生があまり得意では無い僕には少々厳しい部分があります…( ³△³ ).。o。
消費電力と発熱
A級動作5Wと云うと、通常のアンプで家庭内の小~中音量で再生する際には超えないだろうと思っていたのですが、Moon Neo 220iで実測してみると演奏中の音量の大小と消費電力の上下がびっくりするほどリニアに連動していて、小~中音量でも頻繁に5W以上変動し、ちょくちょく30Wオーバーになります。この音量に対する電力供給のリニアリティの高さが、そのままダイナミックレンジの広さに繋がっている印象。
ちなみにアイドリング時の消費電力は19W。スタンバイモードでは17W…( ³△³ ).。o。これは実はCREEK CLASSIC CDでも同様なのですが、実はスタンバイモードはフロントパネルの消灯以外、節電には殆ど意味無いのでは…( ³△³ ).。o。背面のスイッチをオフにすれば待機電力0Wになりますが、長期外出時以外、毎日音楽を聴く環境では常時通電が望ましいと暗に示唆されている気がします。実際、リアの主電源を切って丸一日以上完全に冷やしてから再び音出しをする場合、最初の数時間はガサツいた音質傾向が残っててしまいます。かといって、スタンバイモードからの復帰でもやはり暫く音質が歪みっぽいので、このアンプについては常時通電の必要性を痛感させられます。
部品劣化を抑える目的から、メーカーでは長期外出等以外はスタンバイモードでの使用を推奨しています。ただ、管理人の場合は複数のオーディオシステムを気切り替えて運用しており、一つのシステムを数日以上鳴らさない事も実は少なくないため、Moon Neo 220iについては主電源を落としています。BGM用にだらだらと聴き流しで鳴らすよりも、音楽とがっつり対峙する時により向いたアンプだと思っています。
5W迄のA級動作ながら、意外にも発熱については極少で、天板が熱くなる感じはほぼありません。内部基盤には大抵のアンプに実装されている大きなヒートシンクは無く、構造的にアルミニウム製の低板がヒートシンクを兼ねています。普通に使う限り常温に近いですので、上側にCDプレーヤーを乗せたとしても全く問題無いと思います。強いて難があるとすると、放熱が少ないにもかかわらず天板のスリット穴が大きいため、ゴミが中に入りやすいことです。※個人的には少なくとも年一で内部清掃が必要だと思います。
欧米専門誌でのレビュー評価
今回は敢えて僕の評価の前に、英国WHAT Hi-Fiと米TechRadarの評価を紹介します。※Moon Neo 220iのレビューではありませんが、ほぼ同じ回路の先代Moon i.5のレビューと、兄弟機250i相当のi-1及び、参考としてDAC内蔵型の別設計モデルNeo 240iのレビューを紹介します。
Moon i.1は低音に優れ、細部までよく響き、実用的で整った構造になっている。このアンプは音楽をよく表現し、素晴らしいドラマを作り出し、かなり心をつかまれる。ただし、ボーカルや明るい音のメロディ楽器には時折音が荒くなることがある。
ハイエンドメーカーの隠れた逸品。ベースは非常に説得力があり、それなりにエネルギッシュなサウンドですが、ボーカルの流れは驚くほど把握しにくい。ただし、多くの楽器ラインはより明瞭で、ダイナミクスのセンスも良好。人々の好みとしては、何よりもまずベースを聞くかボーカルを聞くかによって決まるのは明らかです。i.5 の声の不確実性にはある種の一貫性があり、面白いことに、コーラスでは比較的良好に聞こえるが、楽器伴奏を伴うソロボーカルがある場合、楽器の方が優勢であることが多くなります。
Moon i-1のアプローチは、スリリングで流麗なパフォーマンスを提供してくれ、おそらくテスト機中最も大きく深いサウンドステージを作り出し、常に聴いていて楽しいサウンドです。低音はドキドキするほど低く、中音域のドラムは驚くほどコクがあり、トラック全体が滑らかなダイナミズムに浮き沈みしています。ただし、その流麗さには妥協が必要で、それは精度と解像度という形で現れます。曲の静かな部分ではソロ・ヴァイオリンの質感と繊細さを十分に表現されておらず、その低音は非常に深みがありますが、今回テストした他のアンプと比と、少しばかりルーズで威圧的です。
旧Moon i.1とMoon i.5について、TechRadarとWHAT Hi-Fi?の評価はどちらもベストとは云えない★4つで、TechRadarでは総評でディテールが良いとしていますが、本文中ではWHAT Hi-Fiと同様に悪くはないけれど”perhaps, not quite the best.”と最高では無いと注釈されています。これについては僕自身の印象も同じで、本来解像度は最高クラスであってもおかしくないタイプの音質傾向にも関わらず、細かい音がマスキングされているため、何処かに解決すべきボトルネックがありそうだと感じています。また、女性ボーカルや明るい音色の楽器が時にキツい事も触れられていますが、スピーカーによっては中高域に飽和感が出やすく、これをコントロールできるかが使いこなしの最も重要な課題と云えそう。
Moon Neo 240i 新設計の姉妹モデル DAC内蔵 及び MM PHONO入力対応
控えめでありながら非常に優秀、繊細さとダイナミズムを前面に押し出したアンプ。タイミングは機敏かつ正確で、すべての楽器の糸がピンと張り、よく整理されている。音符のエッジは鮮明で明確で、静寂は峡谷のように深く、ドラムやギターの闊達さは深い満足感を与えてくれる。滑らかな表現だが、聴きやすくするために細部を犠牲にしているわけではない。しかし、筋肉質なアタックを好む人には向かないアンプかもしれない。
Moon Neo 240iを最大限に楽しむために隣人を怒らせることを心配する必要はありません。静かな音量でこれほど魅力的になサウンドを奏でるアンプは珍しいです。ボリュームを上げると音が大きくなるだけで、音のキャラクターは変わらず、硬くなることもありません。音量が大きすぎるようにも聞こえず、Moonのパフォーマンスがいかにクリーンで歪みがないかを示しています。曲の精神を忠実に伝えることが出来るため、私たちは魅惑的なサウンドをただ楽しんで、音楽ライブラリのトラックを次々と再生することに惹かれていることに気づきます。
AV用途に多機能化された姉妹機種 Moon Neo 240iについては、あくまで参考程度になりますけれども、WHAT Hi-Fiのレビューでは大絶賛されています。DAC内蔵 及び MM PHONO入力対応し、回路的にも完全な新設計となります。とは云え、書かれている長所と短所の傾向は、そのままMoon Neo 220iと250iにもある程度当てはまるように思います。Moon Neo 240iは一回り小さいトランスでドライブ力をセーブしている反面、小音量再生に強く、現代的な繊細さと解像度がより際立つ方向にチューニングされているようです。
~まとめ~
箱庭的”AUDIO STYLE”管理人の個人的な評価はこんな感じです。珍しく美点に対し欠点も多く並べる評価になりましたが、ハイエンド指向のテイストを感じる優れた部分と、その引き換えとなる気難しい部分が混在しているため、どちらかと云うとオーディオ上級者向けで、使い手を選ぶサウンド傾向に感じています。特に組み合わせるスピーカーとの相性はなかなかにシビアですので、購入を検討される際に「店頭試聴含め」くれぐれもご留意いただければと思います。
残念なのは、為替その他の影響により、2023年時点でMoon by Simaudio製品の日本国内販売価格が、3年前の軽く2~3倍以上になってしまったこと……( ³△³ ).。o 。この記事の商品リンクを探した際にあらためてお値段に驚愕しました。もはや、普及価格帯の製品では無くなってますね。。。
Moon Neo シリーズ、欧米ではハイエンドに満たない低~中価格帯程度のマスレンジに於いて長年トップを争う人気機種ですが、こういった音楽再生機として優れたオーディオ機器が、日本ではなかなか評価されづらく存在が目立たないのが残念。あらゆるタイプの音楽と音源にすべからく合うタイプではありませんが、ジャンル問わず、精神性や深みを求める種類の音楽では、Moon by Simaudioのシステムを手にすることで、その音楽に秘められた深淵を覗き込むことが出来るかも知れません。