今回紹介するBELDEN8470及びベルデン8460は、ローエンドオーディオ界隈で人気のある某店の影響もあって、近年、低価格オーディオの定番となっている白黒の米国製のスピーカーケーブルです。元々は米国で放送やレコーディングスタジオ等の丈夫な業務用SPケーブルとして太古の昔から存在する化石みたいなスピーカーケーブルですが、普及価格帯~ミドルクラスのホームオーディオで心地よい音楽を目指す箱庭的”AUDIO STYLE”管理人の視点ではどう聴こえるか?今更ながらレビューしてみたいと思います。
用意した長さは片チャンネル2.5m。BELDEN8470の仕様はETP高導電率錫メッキ銅撚線5.33mm/16AWG, 1.31SQ 白黒のジャケットはPVC。同一素材の白黒線であるBELDEN8460は8470よりも細く4.57mm/18AWG 0.82SQ。一般的に低域重視では8470、高域重視で8460といった住み分けになりますが、どちらもスピーカケーブルの芯線としてはかなり細く、諸々のオーディオ用SPケーブルと相対的に比較した場合、8470が高域重視、8460は更に高域重視と見做して良さそう。
本物?偽物?購入したBELDEN8470について
巷の噂に拠るとBELDEN8470/8460は製造ロットによる仕上げの差が大きく、低価格にもかかわらず本物or偽物論争が絶えないスピーカーケーブルとしても知られています。とは云え音楽業界的に最も信頼性の高い販売店と云える音響機器通販のサウンドハウスであれば、販売価格も良心的ですし、仕入れ元も某大手輸入商社ですので、偽物を掴まされる可能性はまず無いと思われます。価格設定の安さもありますが、業務用音響機器関係で迷った場合、管理人はサウンドハウスを選ぶことが多いです。
尚、BELDEN8470には方向性の指定や印字がないため、ステレオ2本にカットする際には左右の製造方向が逆にならないよう印を付けつつカット。ハサミでも電工ペンチ(1.25sq)の刃でも、被覆を剥くのは超簡単。触ってみると黒と白(ベージュ)では被覆の硬度が微妙に違いますが、導体が単線に近い質感でかなり硬質なため、今回は敢えて若干粘りがあって柔らかい白(ベージュ)をスピーカー/アンプ側のプラス側(赤)に配線しました。※これは経験則として音が固くなりすぎることを危惧したからです。
BELDEN8470音質レビュー
独特の明晰さと明瞭感があり、全域でカッチリとした輪郭の硬質な抜けの良い音質に耳を奪われます。描写に音楽的なしなやかさは少なく、中域はやや大雑把な描写且つアタックがゴリゴリしている印象で、エネルギー感もあり、男性的でロック向きの描写。その反面、軟らかな表現は苦手で、クラシック音楽や女性ボーカルではかなり表情が硬いと感じさせます。
高域方向は切り込みが鋭くキツめですが明瞭、響きの分離感も良好。意外な程の情報量もあり解像感も高いのですが、ディテールがザックリと荒れ気味の為か美音系にはならず、音の純度的には細部にタフピッチ銅臭い粗雑さを感じます。その為、音色の綺麗さという面で選ぶ場合にはベストな選択肢では無いと思います。でもこれ、逆に音抜けが悪いミニコンポや特性劣化したバブル時代の古いオーディオなどには合うかも知れません。
ピアノの中高域が甲高く、アピールポイントがミッドハイにやや偏っている印象。低域はタイトでストレート。但し量感そのものは少々もの足りないかも。固い傾向の響き且つガッツのある音質傾向で、他に似たものがあるとすると御影石ボードの持つ音質傾向にやや近い。取り付けた当初は歪み感と硬さが先行し、かなり聴き疲れする印象の音質ですけれども、経験上、数週間使い続ける事で高域の歪み感が減退し、柔らかさやまろやかさが多少なりとも出てくるだろうとは思います。・・・但し、そこまで待つのが正直辛いかも…( 3△3 ).。o
~まとめ~
管理人の場合、価格的に数倍~数十倍もする高純度素材のスピーカーケーブルに慣れてしまっているのもあり、質的な意味で重箱の隅を突くと、導体に使われている錫メッキ銅の純度の低さから来るディテールのナマり感と歪み感が強く、正直なところ音質的な許容レベルを下回っている印象です。
但しこれは、ある程度システムのグレードが上がった場合にはじめて浮き彫りになる話で、エントリークラス以下の機器や古いスピーカー、ミニコンポ付属のスピーカー等々ではそこまでデメリットにはならない可能性もありそう。総じて、音抜けが悪く混濁傾向の安価なミニコンポや、経年により特性が劣化して、混濁、ナローレンジ化したバブル時代の古いジャンクオーディオなどで、モヤモヤ感を払拭しつつ音抜けを改善して目を覚まさせるのには効果的かも知れません。HARD OFFで転がっているジャンク&オールドHi-Fi(敢えてビンテージとは云わない)や、特性劣化したスピーカーとのマッチングは案外良いだろうと推測します。
ただ、近年オーディオ専業メーカーの手で音響用に設計されたm/数百円のスピーカーケーブルで、BELDEN8470より純粋に音質の悪いスピーカーケーブルが存在するかと云えば、敢えて書きますけれど僕が知る限り皆無です。機材との相性や好みの問題があるとは云え、普及価格帯のオーディオ機器であったとしても、機器側の品質(経年劣化含む)とセッティングに問題が無く、十分なトランスペアレンシーが確保されたピュアオーディオ、オーディオビジュアル環境であれば、オーディオ専業メーカーがヒアリングを重ねて制作したスピーカーケーブルを選択される方が、録音制作意図に対してより望ましい、本来のHi-Fiサウンドに近づけるでしょう。
コメント一覧 (1件)
はじめまして。
最近こちらのブログを知り、楽しく拝見しています。
私もひとつの機器に20万以上かけないスタイルでブックシェルフばかり取っ替え引っ替えしているのですが、このベルデンのケーブルに関しては同感です。
システムはCDプレーヤーがケンウッドDPK1000N、アンプにatoll IN100、スピーカーがマイクロピュアのAP5001で、主に静かめのジャズやプログレを聴いています。
部屋のクセが強く低域を諦めた経緯があり、中域の張り出しとサワサワした高域、比較的元気で時に耳障りな音を出すような感じに仕上げています。
ドラムをやっていることもあり、あまりまとまった音は苦手で、ドンっとアクセントがついた時などに少し歪むところにスリルを感じたいタイプなので、オーディオ的にはあまりよろしくないとは思います。
このベルデンのケーブル、至る所で激賞されているため導入したことがありますが、全体的に表情が乏しく、私の好みとは大分違いました。適材適所とは思うものの、ちょっと使えないなというのが正直な感想です。ギターアンプの配線とかには向いているかも、とは思いましたが。
長くなりましたがこれからもパステルさん流のオーディオ話、読ませていただきます。