殆どPCオーディオに関して放置状態だった箱庭ピュアオーディオ管理人が初めて購入したPC関連のオーディオ製品、それがONKYO UWL-1です。現行製品ですが発売直後に購入しましたのでもう2年近くなるのですね。
デジタルワイヤレスシステムを簡単に説明すると、PC内のデジタル音楽データをリアルタイムに2.4GHz帯の無線で飛ばし、受信機側でD/A変換して音出しをする外部D/Aコンバーター。ずばり、無線式USB DACです。最近では同様の機能を持つAirmac Expressが良く知られていますが、UWL-1はあくまで純粋な音楽再生機であるのと、それなりのDACチップを積んでいること、ミニジャックではないTOSリンクの光デジタル出力を備えている点が特徴です。
ONKYO UWL-1を分解してみました
無線式D/Aコンバーターのメリットは、パソコン内に保存してある音楽データやネットワークオーディオ、或いはAmazon Music HD等の音楽配信サービスの音源を、レシーバーを接続する事で離れたオーディオ機器からでも再生できる点です。ワイヤレスですのでパソコンが近くに無い隣の部屋へもデータを飛ばせますし、PCオーディオの根本的問題であるパソコン内に渦巻く各種ノイズ、電源ノイズ等から、オーディオ部分を電気的、物理的に切り離す事が出来る訳です。PC様の高音質DACとしてONKYO WAVIO サウンドボードを購入することは躊躇していた管理人でも、無線送信で物理的に切り離せるってのはやはりピュアオーディオの匂いがして魅力・・・と云う事で、2006年に発売された当初・・・まだAppleのAirMac Expressもさほど知られていなかった頃に購入したのがONKYO UWL-1でした。
UWL-1はUSB端子の付いた送信機UTX-1と、DACを内蔵した受信機RX-1の2つで構成されています。RX-1の内部はこんな感じ。上下のカバーを止める四隅のネジは基盤を貫通していて、開けると基盤ごとすっぽり取り外せます。ケースは端子側がプリントシールで接合されていますので上蓋は全開に出来ません。何の変哲もないプラスチックのケースですので、例えば中にオヤイデ電磁波吸収シートなんかを貼り付けると音質が向上するかも知れません・・・等とさり気なくデムパを飛ばしてみます\(^o^)/。管理人が購入した初期型はUSBトランスミッターRX-1が黒だったのですが、途中でデザインが変更されて色もグレーになりました。
DACチップは英Wolfson(ウォルフソン)のWM8720が一基。チップは24bit/96kHz対応ですが、UWL-1での送受信は16bit/48kHzが上限になります。デジタルボリューム内蔵型ですが、RX-1自体にボリュームコントロール機能はありません。真ん中にある無線デバイスはシーラスロジックの192kHzデジタル・オーディオ・トランスミッタCS8406。出力トランスミッターUTX-1の中身は不明ですが(開けられない)、対となるCS8416が入っているのかな?また、中国製ですが丁寧な実装です。
使用方法は至って簡単で、専用ソフトをインストールする必要もありません。レシーバーをオーディオ機器に繋げ、PCにUSBトランスミッターを挿すだけです。特に再生ソフト側の制限も無くWindows Media Player/QuickTimeなど普通のソフトでもOK。KORG AudioGate/WASAPIやAmazon Music HDでも使えます。ONKYOの専用音楽再生ソフトも付属していますが実は開封していません(滝汗)。ドライバに以前はSOUNDMAXを使っていましたが、ASIO4ALLが出てからはASIOでも音が出せるようになりました(注:WindowsXP時代の話です)。
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ONKYO UWL-1の問題点としては、送受信が出来る範囲外が意外に狭いことです。自室のデスクからリビングルームのメインシステムまで直線距離で6~7メートル程度ですが、間取りがL字型で遮蔽物があるため、この距離では再生中にブツブツ音が途切れます。また、管理人宅はWi-Fi 11a/b/g無線LAN環境ですが、同じ2.4GHz帯を使うWi-Fiとの相性が非常に悪く、UTX-1をPanasonic Let’s noteのUSBポートに挿した場合、Let’s noteの内蔵無線LANは11b/11g共に断線してしまい殆ど使い物になりません。結局、リビングでUWL-1を使う場合、書斎のデスクトップPCからUSBケーブルをリビングまで延長し、その先にUTX-1を付けると云うなかなかお間抜けな状態で使用することになってしまいました。
また初期型のUWL-1には内部ソフトウェアに問題があったらしく、ONKYOが自主的にリコール回収をしています。発売日に買った管理人の個体は思いっきりシリアルナンバーが「0001~4999」に該当していてため無償交換して貰いました。オークションや中古で入手された方などは一度チェックしてみてください。
ONKYO UWL-1音質レビュー
肝心の音質です。再生ソフトはいつもの通りASIO4ALL/Lilithを使います。この組み合わせでのUWL-1アナログ出力の音質は、ニュートラルで色付けの少ない素直な音。取り立てて特徴が無いので使いやすい音質です。独特の音色があるとか、音楽性が高いとか、ONKYO C-1VLのようにデリケートで繊細感があるとか、そういったピュアオーディオ的な味付けはされていないみたいです。かといって何か不満を感じさせるような音でもありません。手持ちの機器ではARCAM CD72Tの音に雰囲気が近いかも? そういえばCD72TもD/Aコンバーターチップは英WolfsonのWM8740です。※訂正:ARCAM CD72TのDACチップを確認したところBurr-Brown PCM1716Eでした。
電源はスイッチング式ACアダプタからの供給ですが、差し込むコンセントボックスの音質的影響が多少なりとも感じられます。ACアダプタ経由ですのでこれは少しばかり意外でした。アナログ音声出力はステレオミニ端子ですが、高音質化を図るためには片側ステレオミニプラグの高音質ケーブルが必要になりますので、ここには同じくONKYOが正規輸入代理店を務めるモンスターケーブルのMonster iCable for iPodを使ってみました。Monster iCable for iPodの場合、音の軽さや密度の低さは軽減するのですが、音像のサーフェスが少々ザラつくのと、響きがスポイルされる感じでキャラクター的にUWL-1とはイマイチ合っていない雰囲気。悪くはありませんが・・・微妙ですね。
それではと取り出した英国ブランドのIXOS 109ですけれど、今度は音場が散漫になり解像度も甘く芳しくありません。この組み合わせでは見事なまでに低音質です。。。ステレオミニプラグ→RCAケーブルも、相性の良い製品を見つければそれなりに色付けを楽しめそうな感じではあるのですが・・・。クッキリ・ハッキリ系の音質を狙うとよりマッチしそうですので、例えばaudio quest GoldenGate辺りは更に相性が良さそうな気がします。
光デジタル出力経由での高音質化が可能
デジタル出力はTOS光端子です。UWL-1の良いところはS/PDIFのデジタルアウトがありますので、外部DACを繋げる事でより高いレベルの音質を得る事が出来る点です。また光ミニ端子のAirmac Expressとは違い、ピュアオーディオ用で高品位な石英コアやグラスファイバーのTOSリンクケーブルを奢ることも出来ます。
但し今回のテストでは手持ちの熱研オプティカルゲートが断線してしまい、手元にあったTDKのTOSリンクケーブルOC-6TT10を使用しました。端子部分が立派で価格の割に見た目のCPが高いモデルですが、普通のふにゃけたプラスチックコアの光デジタルケーブルですので音質的には価格相応です。※その後、AUDIOTRAK GlassBlack2+との相性が非常に良かったのでそれについては↓のエントリに書きました。
そんな感じでMARANTZ CDR630の内蔵DACにデジタル入力。44.1kHzのSRCスルーで再生してみます。CDR630のDACは古いPHILIPSのビットストリームDAC TDA1305T。CDR630はプロ用CD-Rレコーダーなのですが、CDプレーヤーとしての音質も一応それなりのレベルにあります。ONKYO UWL-1とはアナログ回路の作り込みが全く違いますので、UWL-1単体のアナログ再生音よりは聴感上のクオリティはかなり高くなります。
CDの直接再生音と音質比較してみました
ここで気になるのが、MARANTZ CDR630に内蔵されているPHILIPS製ダイキャストメカCDM36のCD再生音と、同じCDを無圧縮でPCにリッピングし、UWL-1経由でCDR630に光デジタル接続した場合での音質の違いです。音源のCDとCD-RW(CDR630をレコーディングモニターモードにする為)を切り替えつつ比べてみます。
これはなかなか良い勝負。少なくともCDR630とUWL-1のアナログ出力同士を比較した場合の音質差、超えられない壁と比べると、品位的には殆ど差がないというか、本当に僅かな印象の違いです。強いて云えば、CDR630のダイキャストメカ経由の音質の方が、音像定位の位置が下がり、中~低域に意識が向かう感じでリズム感などの音楽的表現やエネルギー感が高まります。これは他のCDトランスポートと比較した場合でも顕著に感じられる630内蔵のPHILIPS製ドライブメカの特徴だと思います。
反面、UWL-1経由の音は高域方向の間接音情報が増えるような繊細感のある音質です。但し、やや音楽の流れが淡々として大人しくなる感もあります。こう書くとかなり差があるようですが、DACが同じですので基本的な音色は一緒というか、ここまで肉薄されるとう~ん。。。相当神経質な人でもない限り判らないかも。。。むしろRCAケーブルや電源ケーブルを交換したときの方が遙かに音質に違いが出ますので…。
但しこのテスト条件では、UWL-1経由のデジタル信号を復号する場合でも、CDR630はモニターモードでCD-RWが録音待機で回転した状態です。筐体内部でデジタルとアナログが電源を共有している以上、メカを停止させた、回転系の電気的影響が少ない純粋なDACボードのみの音質にはなりません。そのため差が余り出にくいテストになってしまっているかも知れません。どちらの音質が好みか~?と問われると個人的にはCDR630メカ経由の音質ですけれども、UWL-1の持つキャラクターの少なさはある意味貴重。少なくとも他の単体CDプレーヤーのデジタル出力をCDR630へ接続した場合の様に、トランスポートに因るキャラクターの違いが明確に出ません。・・・何ででしょう(^^;)
光デジタルケーブルの品質が高音質化のポイントです
これでもっと高品位な石英ファイバーコアのTOSケーブルを使えば更に情報量が増え、CDR630のメカの音を超えてしまったりするのかもですが、とりあえず今回の比較では僅かながら印象が違うけれど、質が大きく違うとまでは云えないという結果でした。本当は単体DACを用意して、トランスポートorデジタルレシーバーを同じケーブルで繋げて切り替え比較するのが良いのでしょうけれど、手元に適当なDAコンバーターがありませんのでそれはまた別の機会に。。。
~まとめ~
最後に昨年(2007年)KENWOODから発売された類似品でSLG-7を紹介します。KENWOOD SLG-7は実売価格がUWL-1の2倍程度になりますが、オーディオ回路部とデジタル送受信モジュール部をそれぞれ別基板にして干渉を抑制、ケースもUWL-1に比べデザインが立派ですし、TOS光デジタルに加えてアナログRCA出力も備えています。DACは同じくWolfsonみたいですが型番は何でしょう?そして何気に送信部がバッテリー内蔵型なのが謎ですけれど。むしろ受信器のDAC側をバッテリー駆動にして欲しい…なんて思うのは僕だけではないはずw
Category:ONKYO(A-1VL+C-1VL/C-S5VL/DAC-1000)
Category:D/Aコンバーター略してDAC
コメント一覧 (3件)
自分あまりよくわかってないんでとんでもない事言ってたらご容赦ください。
CS8406の前の型がCS8405Aであるようですね。で、このCS8405Aの評価用ボードの説明がこれです。
http://www.cirrus.com/jp/pubs/rdDatasheet/cs8415A_eb-2.pdf
つまりCS8415AでS/PDIF信号をシリアルデータに変換し、転送し、CS8405AでS/PDIFに戻す、という使い方をするようです。
とすると恐らくCS8406は無線インターフェースからのシリアル信号を受け取りS/PDIFに変えているのではないかと。
CS8416(から無線で渡されたデータ)からWM8720にどう繋がってるかはでんでんわかりません。すいません。
説明ありがとうです。この方法って変換時にビット落ち、或いは適当補完とか起こさないんでしょうか。近接距離でも障害物や無線LAN端末の干渉でFMっぽくブチブチ音が途切れるので、リアルタイムに音出しするために、ある程度エラー訂正機能とか備えてるのかしらと。…いや備えてないからブチブチ切れるのか。
たぶんCS8416が吐くデータはかなり生に近いものと思われ、無線送り出しの時に何かやっているか、程度ではないでしょうか。