Kharma KPL Reference/1a オランダ製電源ケーブルについての覚え書き。

Kharma KPL Reference/1aはオランダのスーパーハイエンドメーカーKharma(カーマ)社の電源ケーブル。2000年に管理人がはじめて購入したハイエンドブランドの高級電源ケーブルです。Kharmaはスピーカーメーカーとしてもハイエンド高級ケーブルの現行ラインナップ共に健在で、これまでも輸入が途絶えたり再開したりと代理店が何度も代わりながら細々と日本に入ってきてはいますが、あまりに高価なためか国内ではずっとマイナーな存在です。販売当時の輸入代理店は山武エンジニアリング。現在の代理店は大阪のサウンドインポート。当時はOLS(O.L.S. Audiotechnology)という姉妹ブランドからブックシェルフなど比較的安価なスピーカーも発売されていました。

Kharma KPL Reference/1a

Kharma KPL Reference/1aはその昔、管理人にとって電源ケーブルによる音色調整の重要性と可能性を最初に気付かせてくれた一本です。気に入って追加購入し今も現役で2本愛用しています。ハイエンドブランドと云っても当時は2mのモデルが定価で一本35000円程度ですので、現在の基準からすればそれほど高価なケーブルではありません。けれどピュアオーディオ向け電源ケーブル黎明期だった当時は、この値段でもえっ!!!と云う感じでした。


エントリー~ミドルクラス手前のオーディオシステムを組む中で、ハイエンドオーディオの質感を予算を抑えたまま適度に取り入れたいとあの頃は色々と目論んでいましたが、そんなときに出会ったのがKharma KPL Reference/1aでした。当時は今とは違い、「ハイエンドブランドの下位モデル」が「普及ブランドのトップモデル」と丁度重なる価格帯の案外手が届く範囲にあったりして、同じコストを払うのでしたら、普及ブランドのトップエンド製品よりも、ハイエンドのトリクルダウン製品を狙う方が、よりエレガントで高級感のある音質を実現出来たりしたのです。

オーディオに於ける電源ケーブルの影響力がそこまで認知されていなかった当時、Kharmaの電源ケーブルが国内で売れた本数は少なかったでしょうし、今となってはKPL Reference/1aの情報について国内外のサイトを通して探しても全く見つけられなくなってしまった為、もはや箱庭的ピュアオーディオが一次情報になってしまいそうな感じです(滝汗)。

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ケーブル径は9mmと細めでとても柔らかく、導体はたぶん1.5SQ~2SQくらい。緩く網組ジャケットを被せた中に赤黒白3芯が撚ってあるのが透けて見えるノンシールドタイプの空気絶縁構造。プラグは真鍮無メッキの黒いLEVITON。樹脂にゴムリングのハイブリッド構造でたぶん515PR。既にブレードはくすんでいますし、今となってはこの地味なブラグ自体がレンジの狭さなど性能的にボトルネックなのでしょうが、なんだろうな・・・もう今では作れないであろう90年代当時の空気を感じる音がするという1点から、僕はこの両端のLEVITONプラグを外さずにそのまま使い続けています。

LEVITON AC Kharma KPL Reference/1a

箱庭ピュアオーディオ管理人はKPL Reference/1aを2本持っているのですが、この2本、個体差で結構音が違っていて、片方は中庸、もう片方は少しハイバランスで神経質な印象があります。昔から中庸の方をメインシステム用、神経質な方は2番手機器用に使っています。見た目は全く同じですが、銀ハンダが使われていてその乗り具合等での差が出ているのかも知れません。米国LEVITON社製のACプラグを分解したことは無いのでY端子等が介在しているかどうかは未だに不明だったりします。

過去の雑誌のレビューでは銀コートOFCとあったり銀線と書かれていたりしたのですが、純銀線にしては少々価格が安すぎますし、接続初期のテラテラ感が数日で馴染んで急速に減衰する点を鑑みると銀コートOFC線が正解のような気がします。

internalSILTECH(シルテック)の銀導体スピーカーケーブルを導入しました♪

Kharma KPL Reference/1aは、Kharma/O.L.S. Audiotechnologyと同じオランダのメーカーだからか?製造面でもしかすると関係があるのかは判りませんが、いわゆるSILTECH系の光沢感の強い艶やかな美音が特徴です。銀線(&銀メッキ線)の特徴が前面に出た艶と、零れんばかりの豊潤な響きが一音一音に乗っていて、Hi-Fiオーディオ的でアキュレートなHi-Fi再生を目指した解像度やリアリティよりも、ハイエンド系の夢幻の再生芸術を目指した上品でノーブルなサウンドが特徴。間接音成分が豊かで音場は後方に広く、耳当たりはスウィートで優しく、大人しい音調ながら極めてニュアンスが豊か。ピアノのタッチ一つ一つにゾクゾクする蠱惑的な音色です。

Kharma KPC Reference/1a

クラシック音楽に於いて細かな演奏の機微が伝わる・・・繊細なピアニッシモ方向への表現力の豊かさとボーカルの抑揚表現の艶めかしさなど、オーディオ的音質レベルはともかく、KPL Reference/1a以上の内的表現力がある電源ケーブルに実は未だに出会えていません。進化した近年の電源ケーブルと比べると音数が少なく、情報量やレンジ感はあくまで程々でしかないのですけれども、(システムに馴染むと徐々に付帯音としての銀線臭さが後退する事もあって) 芸術的な抑揚表現とタッチの細部の描写力には目を見張るものがあります。オーディオ的に音像をこれでもかと分離するのでは無く、指揮者のように音楽を1つの流れに纏めることを第一に目指しているように感じる音作りです。

Kharma KPL Reference/1a

弱点は音のボリュームが稼げない点。オーディオ専用で売られている単品電源ケーブルの多くは、機器付属のキャブタイヤケーブルから交換すると力感と情報量が改善してややボリュームが上がったように感じるものが多いのですが、KPL Reference/1aは逆で、むしろ音量が下がったように聴こえます。エネルギーバランス的には大人しくナヨナヨとした音質で、音場は全域で引っ込んでいますし低域はダラダラしていて力感も弱いです。音場感が強く高域方向は繊細に分解しますのでSACDやハイレゾ音源等にはそれなりに向いていますけれども、良くある高域を強調してサ行がキツくなる高解像度系サウンドとは異なり、音像そのものは上下に分散せず中域に並びます。↓画像の右側に挿してあるAC電源フィルターは、AudioSpice ACC18 Signature

Kharma KPL Reference/1a CSE CX-63a

ただいかんせん低域方向の駆動力が弱く、例えばオーバードライブ気味のアンプをSILTECH系の上品なヨーロピアントーンに整える効果はありますが、箱庭ピュアオーディオで推奨しているような小出力薄型小型アンプに使う場合には往々にして力感不足に陥ってしまいます。KPL Reference/1aの使いどころとしては電力消費の小さいCDプレーヤーD/Aコンバータが向いていて、管理人の場合、長年CDプレーヤーのC.E.C TL5100ZCREEK Evolution CDに宛てています。ONKYO C-S5VLでも音色的にはこれが良いのですけれど、低域の量感の問題がどうしても払拭出来ませんでした。

編集:音元出版
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以下はオーディオアクセサリー誌バックナンバーからの引用レビューです。さすがに古すぎてPhile-webでも見つけられませんでした。

※オランダのハイエンドメーカー、カーマの電源ケーブルである。これはシリーズ中最もスタンダードな製品で、導体銀コーティングのOFC、3芯構造で銀ハンダによる接着が行われている。なお他のケーブルと同様にこのシリーズにも (注:上位モデルとして) Grand ReferenceとSupreme Referenceというグレードがある。本製品は極太の被覆ではなくオーソドックスな外径に収まっている。

素性の良さを感じさせる音調で情報量が多くトランジェントに飛んだ再現力を発揮する。バイオリンやピアノは輪郭がカッチリと締まり、余韻の美しい音である。低域はむしろエネルギーを解放した鳴り方だ。レンジは広い、高域の感触がきめ細かく、声楽など音像を綺麗に描き出す。カーマのスピーカーを連想する表現である。コーラスは豊富な余韻が溢れているような音調で、音場の方が直に出てくる印象。カーマの個性が聴こえるケーブル

1999年Audio Accessory誌95号 井上千岳先生のインプレより引用

ハイライトは箱庭ピュアオーディオ管理人的に実際に使っていて特に同意できる部分。トランジェントは誤解を呼びやすい単語ですのであまり使いたくないのですけれど、技術的な意味での過渡特性、トランジェント特性の意味ではなく、文学的用語でのトランジェントとして捉えるならYes。輪郭は繊細ですがカッチリでは無いですし、低域は膨らんだぼんやり系です。おそらく上位モデルと違い、Kharmaらしい低域方向のボリューム感はありません。

S/N比は高く倍音スペクトラムは美しく伸びきり情報量も多い。粒立ちは艶やかで一音一音の分離も明瞭である。混濁が少ないのは注目点だ。純粋でニュートラルな高音である。中低域は弾力感の効いたエネルギー密度の高さがあり、適度な柔軟性でコントラバスの質感は充分に歌わせてくる。最も魅力的なのは、ボーカル帯域の滑らかで澄んだ潤いである。声が良い、抜けきってまろやかな声でソプラノは極めて魅力。ただ腰の強いダンピングはもう一つである

ニュアンスの豊かさが★。S/N、スペクトラムの表現力、精細度が高得点。他は普通。

2000年Audio Accessory誌96号 福田雅光先生のインプレより引用

このレビューにも個人的にほぼ納得d(^_-)。中低域のエネルギー密度云々は、多分更にその下についてボリューム出てないと云う意味でしょうし、ニュートラルな高音は意味が微妙ですが、オーディオ的はったりでトランジェントと高域を輪郭強調していないため、ボーカルやピアノの音像のエッジ、立ち上がりが不自然に強調されずリアルな丸みを帯びています。にもかかわらずタッチが響きに埋もれてボケずに細かいタッチの描き分けが出来ているのがKPL Reference/1aの素晴らしいところ。何よりボーカルのニュアンスの豊かさと音楽性の高さ、それでいて単なる脂ぎったエロティシズムに走らずとことん品が良い。なんと云いますか、異様にチャーミングで例えるなら少女趣味の音。そんな魅力からKharma KPL Reference/1aは今でも手放せない、これからも箱ピュアシステムを支える中核としてずっと使い続けるであろう大切な電源ケーブルなのでした。

LEVITON IEC Kharma KPL Reference/1a

尚、Kharmaの電源ケーブルをデジタルピアノ、クラビノーバ等に挿して使うと、ベーゼンドルファーみたいな音色になって笑います。いかにもそれっぽい音色になって弾いていてとっても気持ちいいのですが、響きが多すぎてなんかコントロールしづらいw ※ケーブル替えたことを言って無いのに一発で演奏下手になったねっ♪て突っ込まれました…。

internal偽物に注意! 大事なのでもう一度書きます。 偽物に注意!

Kharmaの電源ケーブル、現地で販売されている現行品KPC-EL-1.0、旧モデルKPC-SR-1b、KPC-GR-1a等々各種ありますけれども、PSEの都合か初期のモデル以降の国内販売はされていません。近年のネットオークションやAliExpressなど、界隈では知られた偽物販売アカウントや中華系のぁゃι ぃ販売元から流れている自称Kharmaの電源ケーブルは見た感じ全て偽物です。過去に国内販売されていたものがごくたまに(まともな)中古販売店経由で出回る事はありますが、元々見た目は黒くて地味な質感ですし、今更入手するとなれば経年劣化で良い感じにうらぶれているかと思います。見るからに高級そうな豪華なものは(他ブランドもですが)大抵は偽物。くれぐれも偽物を掴まされぬよう、また判っていて偽ブランドを購入したりされぬようご注意くださいませ。

+For
音楽性の高さ
ひたすら甘く上品で蠱惑的な音色
現代では得られない雰囲気のあるサウンド

-Against
簡素な外観
エネルギー感と低域が弱い
現代の基準では特に高音質とは言えない

categoryCategory:オランダ / SILTECH (シルテック) / Kharma (カーマ)
categoryCategory:電源ケーブル・電源アクセサリー

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