ドイツの怪しいクラシックレーベル「PILZ」Vienna Master Seriesに思いを馳せる・・・。

管理人の学生時代・・・90年代初頭の頃です。今は懐かしのデパート崩れのような雑貨用品店、長崎屋町田店の店先に出されていた露天ワゴンの中で見つけたのが、PILZレーベルのクラシックCD、Vienna Master Seriesでした。当時まだ珍しかった2枚組薄型ケースに入った2CDが、なんと1組で300円!衝撃的な安さで並んでいたものですから、重複を除いてそこにあった全種類のCDをまとめ買いしたのを覚えています♪

PILZ Vienna Master Siries

その数は合計32組64枚(注:現存のもの。いくつか紛失したかも)。あの昭和の雰囲気が色濃く漂うボロ~い長崎屋で1万円も出したのって、後にも先にもこの時だけだと思う(遠い目) 今でこそクラシックの音楽CDがメジャーレベルでもBOX一枚あたり100~300円なんてのは珍しくもありませんけれど、当時は国内盤の音楽CDが新譜で1枚3000円、再発廉価盤で2000円、BOXに至っては数万円もした時代です。先ず楽曲を覚えるためのCDを集めるにも費用の捻出が結構バカにならない時代でしたので、PILZ Vienna Master Seriesは正に渡りに舟!といった感じの掘り出し物だった訳です。

ところがどっこい、このPILZレーベル、良く見てみるとなんだか色々と怪しい。。。当時は米ソの冷戦が集結した直後。貧困に喘ぐ東ヨーロッパの文化資産がタダ同然で西側に流れ出はじめた時代です。背面に書かれているPILZの所在地はミュンヘン近郊のKranzberg。盤面にはMade in Germanyとプリントされていますが、書かれている演奏者は聞いたことが無い良く知らない指揮者や演奏家ばかりです。てっきりどこぞの東欧系のマイナーオーケストラに、東独/東ヨーロッパの知らない演奏家の組み合わせ?なのかと当時の私は安直に信じてしまいましたが、どうやらこれって実はかなり曰く付きらしいのです。。。

後年になって調べてみると、中身の指揮者や演奏家は無名どころで良く知らないを通り越して、どうやら本当に実在しないらしく、その後、幽霊指揮者、幽霊オーケストラ、幽霊演奏家などと呼ばれる架空の存在の草分けみたいに呼ばれるようになったのがPILZという事なのでした。。。※当然、当時の僕はこういった事情について全く知りませんでした(+_+)

このPILZ、当時ドイツの音楽プロデューサー兼指揮者?であるAlfred Scholzが、オーストリア放送協会(当然西側)の音源を色々と買い取り、架空の指揮者名(Alfred Scholz自身の名前)や架空の演奏家名を付けた上で、超低価格のPILZレーベルとしてひと商売目論んだというのが真相のようです。要するに著作権料を支払わないための錬金術というかインチキですね(゜∀゜)。WikipediaにはPILZがその後倒産し、「POINT、ONYX、MEDIAPHON」などに分化した。とあるので、ONYXあたりはそういや持ってるな~なんて感慨に耽りつつ、久々に当時購入したPILZのアルバムを、このコラムを書きながらいくつか今聴き返しているところです。

outPILZレーベルのプロデューサー、アルフレッド・シュルツ氏と実在しない指揮者

こんな感じですのでこのPILZ。先ず第一に記名されている演奏家の多くが架空の演奏家ですので、実際は誰が弾いているのかが良くわかりません。演奏の質的には、たぶんそこそこ名の知れた演奏家の録音が実はかなり含まれていそうな感じなのですが、玉石混淆で酷い演奏の録音もあります。特定出来たら面白いのでしょうけど(^_^;) 当時同じように店先でワゴンセールをされていた似たような廉価盤レーベルでも、録音制作から演奏家までしっかりとクレジットされているNAXOSレーベルとは大違いですね(滝汗)

また、オーストリア放送協会から買い取ったデジタル録音ではありますが、音質があんまり良くありません。軽く薄っぺらい明るい音質で、国内盤を中心に聞いていた当時、このプレスの音質の悪さに衝撃を覚えたのを記憶しています。今聴き返すとそこまで酷く感じないのが不思議ですが、これはオーディオシステムの方向性が当時とは違っているのと、何より僕自身の加齢による耳の感度低下や、経験で広がった演奏や音源に対する許容度が10代の頃とは違うのが大きいのでしょう。

そんな感じで、数あるCDコレクションの中でも半分ゴミみたいな扱いになってしまい、筆者宅のCD収納棚の中でももっとも劣悪な保存環境の場所に長年放置されることになりました。25年も経つとほんとうに凄いことになっていて、盤面・・・特にレーベル面には黴がびっしり、ぺらいちのプリントジャケットも両面共に黴でまだらに変色してしまっています。正直、もうジャケットは回復不可能な汚染状態に。。。(^◇^;)

CD盤面の黴 PILZ Vienna Master Series

CDは超音波洗浄機で洗浄してみたところ、信号面は全て全く問題なし。信号面よりも薄いレーベル面もぼほ大丈夫でしたが、1~2枚だけ僅かに黴が原因と思われる浅いピンホールが見られます。あとこれドイツプレスなのですが、素材が信号面側のポリカーボネートとは異なるようで、黴たレーベル面にエタノールを噴いてからシルコットで拭き取ってみると盛大に薄い擦り傷が入ってしまいました…。・・・ カビたCDをそのまま拭くと汚れを引きずって傷が入ることがある事をすっかり忘れてました。。。orz ちなみに同じように拭いた信号面の方はポリカ素材が違うのか、目視では無傷でした。

internalCD拭き取りクロスよりもシルコットorキッチンペーパーの併用がお薦め

internal東芝の超音波洗浄機が故障してしまい、GT SONIC F4に買い換えました。

うっかりミスで2枚ほどレーベル面に傷を入れてしまいましたが、残りのCDはぬるま湯に中性洗剤入りの超音波洗浄器で丁寧に洗浄しましたので以降は傷が入らず。ここまでカビると超音波洗浄器で数分洗浄しただけでは汚れが十分に落ちないのですけれども、対策として、水分を含ませるため2分超音波洗浄、一旦取り出して流水でカビた面を指先で拭き取る、再度仕上げに2分洗浄、お湯すすぎの工程で完璧に洗浄することが出来ました。

PILZ Vienna Master SeriesをEACでリッピングしました♪

実を云うと、隅っこでカビ放題のPILZ Vienna Master Seriesを今更取り出したのは、既に管理人宅のCD蒐集棚の残り空き容積が1割を切っていて、要するに邪魔なのでPILZ盤を処分しようという話だったりします。ここまで傷むと売り物にもならず、そもそもPILZ盤自体出自が怪しすぎて中古での評価価値は極めて低いでしょう。ただ、棚を広げるために取り出したと云っても、一応の思い出もありますし、オモシロ資産としての価値もあります。いつもは面倒で手持ちのCDを殆どリッピングしない管理人ですけれども、データ化してしまえばCD64枚≒30GB程度ですし。

internalミニPC ASUS VivoMini VC65を敢えて選んだ理由 ぱ~と2

ところで、母艦のASUS VivoMini VC65のPCドライブ「HL-DT-ST DVDRAM GUE1N ※日立LGデータストレージ」からEACのセキュアモードで取り込んでみると、音飛びはしないものの、大半のCDでリッピング中に読み込みエラーが起こり、一部トラックで100%ではなく99.9%のトラックが複数出ます。(C1エラー訂正ですので最終データとしては問題ありませんが・・・。)

EAC トラック品質99.9% トラックステータスとエラー

ただこれ、元々プレス品質が怪しいので原因が劣化なのか最初からなのかは正直わからないのですけれども。。。

outExact Audio Copy
outリッピングソフトExact Audio Copy(EAC)のインストール&日本語化手順

とは云えEAC(Exact Audio Copy)でありがたいのは、こんなマイナーなPILZの全てのCD情報がサーバー上に既に上がっていて、一部はオリジナル盤のジャケット写真も含まれていました。ただ、国内盤ジャケからでしか分からない情報もあったので、ジャケットのスキャナー画像を残すことも考えたのですけれども、画質に拘らなければ殆どDiscogsにアップされていましたし、面倒なので各アルバムの日本語データの要点は手打ちでメモ帳に保存。あとはDiscogsにあったデータとジャケット画像をまるっとメモ帳にコピペして音楽ファイルと一緒に保存することにしました。

outDiscogs Vienna Master Series

EACは高品位な低速セキュアモードでリッピングしているものの、毎度のようにどこかのトラックで引っかかり取り込みが低速化するため、リッピングに一枚あたり30~60分ほどかかります。これだけで丸2日作業になってしまい、64枚程度でも正直なところうんざり。。。しかも結局、読み込みエラーと同期エラーで一部のトラックがサルベージ出来ない盤が最初の20枚時点で5~6枚。。。そのうち5枚の不良トラックはバーストモードで一応は取り込み出来たのですが、一枚だけはバーストモードでも音飛びしてしまいダメでした。ドライブが悪いのかと思ってレンズクリーニングを試みるも解消せず。見た目には問題無いので経年劣化なのか元々のプレス品質(たぶんこっち)なのかは定かではありませんが、リッピング作業が辛すぎて個人的には正直こんなことやってられん・・・といつも思うのでした。それにしても、こういったまともにリッピング出来ないような状態が悪いCDでも、単体の音楽CDプレーヤーでは何事も無く再生出来てしまうのですよねぇ。。。

internalTranscend 超薄型ポータブルCD/DVDドライブ TS8XDVDS-K レビュー!

あまりにも取り込みがのろいので、途中から普段使っていないTranscendのUSB外付けDVDドライブTS8XDVDRW-Kとも持ち出して2台並列のリッピング態勢(PCにパワーがあればEACそのものは複数同時に走らせられます)にしてみたところ、同一設定のセキュアモードでもTranscend TS8XDVDRW-K側では総じて2倍くらい速く取り込み出来ますし、PC本体のHL-DT-ST DVDRAM GUE1Nではエラーを吐いて完了出来なかったディスクでも、Transcend TS8XDVDRW-Kではあっさり読み込めたりして、やっぱりドライブによるリッピング能力の格差は今でも想像以上に大きなものですね。。。

Transcend TS8XDVDRW-K 五更瑠璃 白猫

こんな感じでTranscend TS8XDVDRW-Kを追加した途中からはリッピング作業が捗りました。ただ、全てのCDをバイナリ一致できれいにリッピング出来れば良かったのですが、一部はバーストモードの手を借りたりもして怪しい状態ですし、元々円盤蒐集家の矜持として、CD盤そのものは廃棄せず、Blu-rayレコーダーの録画用BD-Rで余った薄型ケースかスピンドルケースに一括収納しようと思います。今回のように特定環境で「正しく読めなかったCD」でも、ドライブやリッピングソフトによってはあっさり読めたりしますし・・・(^^)ゝ

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そして、2枚組プラケースと日本語仕様のカビだらけになった日本語仕様のペラジャケットは廃棄という方向で整理してみることにしました。ジャケットも本国のドイツジャケットでしたらまだ価値があったのでこんな扱いにはならなかったと思うのですが、このシリーズは中の盤だけドイツ製で、商品としてはご丁寧に日本語化されていたので。。。ケースは当時珍しい形状の薄型2枚組みケースですが、ユニバーサル系のメジャーレーベルPHILIPSの国内盤2DUOシリーズで採用されたタイプと同じケースでしたので、手持ちのPHILIPS 2DUOでケースにヒビが入っているものはPILZの残骸でパーツ交換。あとは割れたときの補修用に少しだけ残しておきましょうか。。。

PHILIPS 2DUO クラシックCD

以上、PILZ Vienna Master Seriesのリッピングはいちお~完了しました。大した音源では無いので自己満足ですけれど、当時は自他共に認めるゴミ扱いの極悪音源でも、古くなると幾許かの歴史的な価値が出てきてしまうのは不思議なもので、ありし日の思い出・・・幽霊指揮者、幽霊演奏家もとい、著作権をすっとばしてメチャクチャやらかしたこんな巫山戯たレーベルも、世の中にはあったという備忘録だったりするのでした~゜゜(´□`。)°゜。

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