プリメインアンプROTEL RDA-06は、Twitterのフォロワー仲間の友人がメインシステムで使っているデジタルインテグレーテッドアンプ。彼の出すシステムのサウンドにはPCオーディオ越しながらいつも感心しているのですが、丁度デスクトップPCオーディオのデジタルアンプ更新を目論んでいたところ、とあるお店でRDA-06の特価の出物があり、その場の勢いでキャプチャーしてしまいました(実は1年前の話です)。ROTELそのものは10代の頃より店頭で慣れ親しんでいて、いつも候補にはあったのですけれども、どういう訳か実際に購入するまでには至らず、今回のRDA-06が意外にも管理人にとって初のローテルだったりします。
ここで簡単にROTELについて紹介しておきますが、創業は50年以上前に遡る老舗の日本のオーディオメーカーですが、日本国内ではマイナーメーカー扱いで知名度が低く、知る人ぞ知る逆輸入的ブランド的なポジション。元々の設計は英国人エンジニアのトニー・ミルズ氏、現在のチーフエンジニアはダレン・オース氏とのことで、海外での知名度が国内よりも遥かに高く、主に英国圏や欧州、米国で幅広く認知されているHi-Fiオーディオメーカーだったりします。
実は日本製品ながら主要マーケットが欧米のROTEL
サウンドキャラクターも物量投入型の国産オーディオ機器とはベクトルの異なる、英国式バジェットHi-Fiの流れを汲むヨーロピアンサウンドが持ち味。ちなみに日本では以前、東京都町田市に拠点があり(現在は目黒)、町田の事務所には以前、ゴトウ総合音響の試聴会でお邪魔したことがあります。
ROTELは有名な英国B&Wグループの傘下にあるオーディオメーカーでもあり、海外ではB&Wスピーカーの正規パートナーとしても古くから知られています。B&Wの海外に於けるメーカーデモでは、長年ローテルのセパレートアンプとインテグレーテッドアンプ、CDプレーヤーがパートナーとして採用されており、日本でのみ輸入代理店業務を兼ねるMARANTZが使われているのが実情だったりします。海外のデモの場合、B&Wの普及価格帯スピーカーには幅広くROTEL、北米に於けるハイエンドラインでは、加えてカナダのCLASSE(クラッセ)のアンプが使われています。
ROTELの音色を一言で表すと、何も足さない清廉なサウンドでしょうか。涼やかでオーディオ的な演出や虚飾が無く、音に余計な色が付かず、英国箱庭的な音場展開で小音量でも音楽を素のままに聴かせてくれる方向性です。プリメインアンプやCDプレーヤーは細身で繊細、セパレートモデルになると低価格からは少々考えられないドライブ力でパワーと密度感が伴って来ますが、総じてオーディオメーカー独特の謎の自己主張や色付け、虚飾がバッサリと排除されていて、組み合わせる他の機器の音を素直にそのまま活かしてくれるサウンドが持ち味と言えます。
ハイエンド的に味付け誇張された高級な世界観のオーディオサウンドに慣れていると、ROTELの音はあまりにもプレーンで色気に乏しいと感じる部分が無きにしも非ずだったりします。けれども、オーディオ機器によって後から付加されるおかしなバイアスが掛からないため、お陰で本来あるべき音楽の演奏そのものの邪魔をしません。この節度のあるサウンド傾向はオーディオマニアよりも音楽ファンに好かれる音作りでしょう。似た傾向として同じくブリティッシュサウンドのARCAM(アーカム)が近いように感じますが、ローテルはアーカムよりも更に繊細且つスリム、よりストレート&フラットで清潔感のある音調です。近年このクラスでは英CambridgeAudioの製品が元気ですが、同価格帯の製品で比較し場合、個人的にはROTELに一日の長があるのではと思っています。
ローテルの製品は、オーディオ的な音質を積極的に演出するのでは無く、元々ある音楽を自然にあぶり出してくれる傾向ではありますが、低価格メーカー故の彫りの浅さや物足りなさはあり、特に低価格機になるほどドライブ力が浅く、繊細さが前に出る描写ではあります。ただ、音をえぐり出そうとして余計なバイアスを加えるよりは、コスト内のパーツで正しく描けないものは無理をせず誤魔化さず諦めようと云う潔さがあり、それが長時間聴き続けても飽きない、オーディオの存在を意識させない清潔さに繋がっているように感じます。
Bang&Olufsen ICE Powerのデジタルパワーアンプモジュールを採用
そんなROTELが出した初めての小型デジタルプリメイン&ヘッドホンアンプがRDD-06。僅かW200×H58×D184mm/1.57kgのコンパクトサイズで、2015年のVGP受賞モデル。実はこれ、従来のローテルが100%設計生産しているアナログアンプとは違い、パワー段にはデンマーク Bang&Olufsen ICE Power 製Class D デジタルアンプモジュール 50ASX2 SE の基板がそのまま丸っと収められています。
ROTELによってICE Power 50ASX2 SEをオリジナルのアルミニウム筐体に詰めた上で、コンパクト且つシンプルなプリ段を組み、デジタルプリメインアンプとしてまとめた形の異色のプロダクトがRDA-06。ちなみに同型ICE Power ASX系デジタルアンプモジュールは、ライバル機のTEAC AI-301DA-SPやTEAC A-H01にも採用されており、最上位の8Ω 125W×2/4Ω 250W×2の高出力タイプ250ASX2 SEは、韓国エイプリルミュージック製 Aura note V2のパワー段や、RDA-06の10倍近い価格のするデジタルパワーアンプ、米国Jeff Roland Model125に採用されているモジュールだったりします。
ROTEL RDA-06は、元々はペアとなるD/AコンバーターのRDD-06が先に発売されていて、DACを活かすコンセプトとして後から設計されたものらしいです。実はDACのRDD-06については以前から欲しかったのですけれども、先にお手頃なRDA-06に出会ってしまった為に、なぜかアンプを先にゲットする事になったと云う経緯・・・ちなみに海外ではシルバーの設定もあるのですが、国内販売分はブラック仕様のみ。せっかくの肉厚アルミ筐体のヘアライン仕上げですから、シルバー仕上げの方がよりアルミニウムケースの高級感が生きると思うのですが、この辺りは少しだけ残念。RDD-06の実物はお弁当箱みたいなサイズ感で、消費電力は公称100Wですが、通常音量での実測は7Wです。
ローテル RDA-06 音質インプレッション
ROTELのアナログアンプやCDプレーヤーの音は店頭で散々聴いてきましたが、RDD-06とRDA-06のペアには一度も出会えず、前述の友人がTwitterでたまに上げる空気録音以外には殆ど印象を掴めないまま、珍しく未試聴のままでのバクチ購入になりました。期待をしつつ管理人宅で音出しをしてみると、従来の良く耳に馴染んだローテルのサウンドとは良くも悪くもやや毛色が違います。共通したROTELらしさを感じる点は、ややクールに振った細身の清廉なサウンド。
従来のROTELのフルサイズのコンポーネントは、英国式の安価な薄型オーディオコンポにありがちな筐体剛性感の低い何処か緩い音がするのですけれど、RDA-06は3mm厚の小さなアルミ筐体に基板を詰め込んでがっつりと組まれているため、実際に筐体の剛性の高さがそのままサウンドの安定感と質実剛健さとして顕著に現れています。箱庭的であまり空間的な遊びのない生真面目なサウンドで、更に実効ドライブ力に優れるICE Powerのデジタルパワーアンプと云う事もあり、ピンポイント定位で直線的且つパースペクティブに定位する音像描写と、ダイナミックレンジが広くフラット且つ直線的に変化するハイスピードな音量の増減感は、これまでの細身でふわりとした響きの漂うローテルのアナログプリメインアンプの印象とは一線を画すものです。
この違いを生む本質は、高剛性筐体に加えてパワー段のICE Power 50ASX2 SEの描写性質による部分が大きいのではと思いますが、特にリニアリティの面でうちにあるどのデジタルアンプともアナログアンプとも毛色の違う音の出方で、当初かなり戸惑いました。片ch20Wながらダンピングファクター120の驚異的なドライブパワーを誇りますが、スピーカーとの相性はけっこうシビアにある様で、相性の良くないスピーカーでは高域がピーキーになりますし、低域も勘所が合わずに空振りして量感不足に陥る傾向を感じます。
RDA-06と相性の良いスピーカーは?
小型スピーカーの多くはサイズの制約から中低域に盛り上がりを要求しますが、RDA-06は中低域もフラットレスポンスで、高域から重低音域まで凹凸感無くリニア且つタイトにドライブしてくるタイプ。その為、中低音域に膨らみを持たせつつ重低音域がカットされたスピーカーでは、低域が浅くなりバランスがハイ上がりになってしまう傾向が顕著です。残念ながら、当初使用を予定していたデスクトップPCオーディオのELAC CINEMA 2SATとの組み合わせでは、ドライバビリティの勘所が合わず、高域がピーキーになってしまい採用を断念…( 3△3 ).。o
逸品館さんのレビューでも読み取れますが、Kripton KX-3P/2と相性が良いと書かれていますし、このアンプを愛用している友人は英国のACOUSTIC ENERGY AE1 CLASSICを使われています。小型ブックシェルフスピーカーの中でも、RDA-06の低域のドライブスピードに追従できる、ハイスピード且つ重低音域のドライバビリティ面に優れたウーファーを持つスピーカーと特にマッチングが良さそうな印象です。
中域から高域にかけてはプレーンでモニターサウンド的な清潔感のある音質ですが、情報量の面では彫りが浅い部分があり、描写も若干センシティヴな傾向。プリ段はリモコンモーター付きボリュームと高音質オペアンプの最小構成に近く、音質劣化に繋がるインプットセレクタも無く、信号経路としては超ストレートに設計されていますが、それでもじゅうぶんにROTELらしい美学は感じさせます。但し、アルミ筐体の剛性の高さが裏目に出ている部分はあって、チャーミングな音楽性を素で併せ持つローテルの他のアナログアンプと比べると些か理知的で生真面目な印象があり、アクセサリー等でどう音楽的に歌わせるか?を工夫すると更に良くなりそうな雰囲気…( ੭ ・ᴗ・ )੭♡。
低域のボリュームを諦めて敢えてストレートな高域の美音を強調する方向で攻めるか?低域のドライブリニアリティを活かせるスピーカーを見つけてあげられるか?なかなか使いこなし甲斐がありそうな感じではあります。実際に組み合わせてテストしたことはないのですが、ローデルは設計にB&Wのスピーカーを使用していますので、何だかんだ言っても素直にB&Wの小型ブックシェルフスピーカーと組み合わせるのが、音色傾向的にもいちばん無難なのかも知れません。現行スピーカーでしたら707S2、現行の小型ブックシェルフ機種で一番下のグレードにあたるBowers&Wilkins 607S2、黄色いケブラーウーファーを積んだ旧型の中古製品、↓の過去記事でレビューしたCM1S2、CM5S2でも、RDA-06とは相性が良さそうな気がします。
~まとめ~ 出来ればペアとなるRDD-06 DACは欲しい
それとやはり本来RDA-06はD/AコンバーターのRDD-06とセットで設計されている製品ですから、この2台は本質的にセットで使用しないとROTELが想定した本来の音質は得られないのでは無いか?との感じが聴いていてかなりします。要するに先行したRDD-06の音質的な弱点を補う形でペアとしてチューニングされているため、RDD-06のデジタルアンプ単体で感じる微妙な「不足感」は実のところRDA-06と組み合わせることであっさり解消するのでは無いか?とも思っていたり。。。そんな感じでRDD-06をやっぱり追加で手に入れてみたいな~なんて薄らと考えていたりするのですけれど、現状、置き場所の関係でRDA-06は管理人宅の常設システムから外れた予備機扱いになっていますので、何時のことになるやら・・・\(^o^;)/。
アナログプリメインアンプ ROTEL RA-1520の音質
こちらのROTEL RA-1520はあくまで店頭試聴での感想なのですが、天板のスリットも多く、ハイエンドオーディオ的な高級感があるとは言い難い筐体に、トーンコントロールスイッチなどのノブが多く並ぶクラシックスタイルで、いつの時代のアンプですか?といった佇まいですけれど、古くからのROTELの伝統に好感しか無い管理人からすると、むしろこれがイイ♪みたいな感じでもあったり…( ੭ ・ᴗ・ )੭♡。これでも先代のRA-1062に比べると外観が細かくブラッシュアップされていたりします。ローテルのフルサイズコンポーネントは国内では長年ブラックモデルがメインだったように思いますが、今はRDA-06/RDD-06とは逆にシルバーモデルのみになっている模様です。
RA-1520の音質は伝統的なROTELサウンドの期待を裏切らない音質で、薄味傾向のスリムな定位で、同時に試聴した他のミドルクラスプリメインアンプに比べてほんの少し腰高なサウンドではあるものの、B&W805 D3を過不足無く、またトゥイーターの直線的なリニアリティと解像感を活かしながらも破綻させずに、快活でチャーミングな雰囲気を漂わせながら、自然且つウェルバランスな音楽を奏でてくれます。同一条件で比較した他の海外製プリメインアンプ、YBA Heritage A100 Integre、ATOLL IN100SE、PRIMARE I32、PRIMARE I22 (※全て個人的に高く評価しているプリメインアンプです)の中では一番安価ですし、いわゆるハイエンドオーディオ的な濃厚な脚色や薫りは一切感じないのですが、音楽を音楽として楽しむためにはむしろこれがいちばん素直で自然では無いか?と感じさせる外連味が無いストレートなサウンドにとても好感を持ちました。尚、ROTEL RA-1520には同型上位モデルとしてRA-1520Sと云う高音質限定モデルも存在します(フロントパネルにSpecial Editionのロゴが付いています)。
本来RA-1520は価格帯的に805 D3と組み合わせるべくもない普及価格帯プリメインアンプの筈ですが、B&Wの上位スピーカーでも全く問題無いドライブ力と再現力を発揮しますので、こちらも普及価格帯のB&Wスピーカーとの組み合わせでは更に楽しめるのでは無いかと思います。ちなみにRDA-06と比較した場合はRA-1520よりもRDA-06の方がダンピングファクター・・・即ちスピーカードライバビリティは高いそうですが、絶対的な情報量に加えて音質的な深みと表現力の面では、伝統的な設計を踏襲した良質なアナログアンプにも、まだまだアドバンテージがある様に感じました。
B&WとROTEL製品の試聴記事です。
次回は気が向いたらROTEL RDA-06の箱ピュア的使いこなしについて、例によって徒然なるままに書いてみるかも知れませぬ。
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Category:イギリス/Bowers&Wilkins(B&W)