バイワイヤリング接続とは・・・ピュアオーディオ入門的解説

「バイワイヤリング接続」や「バイワイヤー」で検索してみたところ、意味をご存じない方が意外と多かったり、どうも色々と誤解されている事が少なくないみたいですので、このページでは、バイワイヤリング接続の定義と、メリットとデメリットについて簡単に解説してみたいと思います。良く見られる勘違いに、スピーカーの「バイワイヤリング接続」とマルチアンプを使った「バイアンプ接続」の混同がありますが、この2つはそれぞれ意味が全く異なります。

スピーカーターミナル_audiopro
シングルワイヤリング接続
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バイワイヤー、バイワイヤリング接続とは

一般的なバイワイヤリング非対応のスピーカーの場合、片側1台あたりの接続端子(ターミナル)が±2つ、繋ぐケーブルも1組(±2本のペア)で、ステレオスピーカー2台の左右合計で2組(±4本)です。

対してバイワイヤリング接続の場合、対応スピーカー(スピーカー1台に接続端子が4つある)を、2組(±4本)のスピーカーケーブルでアンプへ繋ぐことになります。左右では4組=合計8本です。

バイワイヤリング接続 QUAD L-ite2
バイワイヤリング接続

ちなみに上の画像でスピーカーケーブルを横方向から挿しているのは、画像のスピーカーQUAD L-ite2のスピーカー端子穴が珍しい横穴タイプだから。大半のスピーカーは垂直(縦)方向にSPケーブル差し込み穴が開いていますので、下側若しくは上側からスピーカーケーブルを差し込むのが一般的です。※バイワイヤーとはまた別の話ですが、の画像ではスピーカーケーブルの方向性が上下とも指定と逆になっています。比較したところ、逆接続の方が聴感上の解像度が上がってレンジ感が広がりましたので、敢えて逆接続にしています。電気的にはどちら向きでも問題はありません。

バイワイヤリングで片側2組のスピーカーケーブルを繋ぐ場合、スピーカー付属のショートバー(ジャンパープレート、ジャンパー線)は外します。※ジャンパー線を付けたままでは理論上の効果が全く得られません。ジャンパーとは本来、バイワイヤー仕様のスピーカーでシングルワイヤー接続をする場合に、それでも音が出るようにウーファー側端子とツィーター側端子を簡易接続するためのパーツです。付属ジャンパー板の介在は音質的には概ねデメリットしかありませんが、スピーカーケーブルが1組しか無い場合にもユーザーが使用できるようにする為の配慮として付属しています。

バイワイヤー、バイワイヤリング接続のメリットとデメリット

バイワイヤリングの技術的なメリットとしては、ウーファー側の逆起電流によってツイーターの信号が濁るのをある程度防ぐ事が出来る点が挙げられます。これは元々東芝の特許なのだそうです。また、イワイヤリング対応端子を備えているスピーカーは、そもそもネットワークがバイワイヤリング接続を前提に音質設計されていることが普通です。そこへシングルワイヤー+ショートプレートorジャンパー線で接続した場合、理屈の上では確実に音質が悪くなり、スピーカーの本来持つ性能が十分に発揮されないと云えます。

バイワイヤリング接続の場合、高域担当のツイーター側と中~低域のウーファー側、それぞれのユニットに相性の良い異なる太さや銘柄のスピーカーケーブルを充てることで、シングルワイヤーに比べて、スピーカーの音色により幅広い可能性を持たせることが出来ます。一般的には高域側に細いスピーカーケーブル、低域側には太めのスピーカーケーブルを使うことで、それぞれのユニットの特性に合ったよりワイドレンジなサウンドを得ることが出来ます。とは云え、基本としては上下左右で全く同じ長さの同じケーブルを用意すること。あくまでこれを踏まえた上で、異径、異銘柄等にチャレンジされてみるのも面白いと思います。※この場合、ケーブルの組み合わせが悪いと聴感上、ユニット同士の音色の繋がりが悪くなります。

この画像ではツイーター側のLR色が左右逆ですが、当然アンプ側でも逆になっているため逆相接続にはなりません。※LRでメッキの異なる特殊な4芯スピーカーケーブルを使っていいるため、敢えてイレギュラーな接続になっています。

対してバイワイヤリング接続にはデメリットもあります。単純にスピーカーケーブルがシングルワイヤリングの2倍必要になりますので、コストがかかること。スピーカーケーブルのお値段によってはけっこうバカになりません。そして、バイワイヤーのメリットはあくまで理論上の話であり、実際には聴感上必ずしも良く聴こえるとは限らない点です。実用上は環境次第でケースバイケース。音質の悪い(或いは相性の悪い)スピーカーケーブルを2組バイワイヤリング接続するよりは、高品位なスピーカーケーブルをシングルワイヤリングに留める方が、遙かに音質が良好に聴こえることも実際には少なくありません。スピーカーケーブルやジャンパーケーブル等の相性やグレード、組み合わせ次第では、メリットとデメリットが逆転する場合があることはご留意下さい。

※敢えてバイワイヤではなく、シングルワイヤー×高級ジャンパーケーブルの組み合わせが好結果になった例です。

バイワイヤリング接続とバイアンプ方式は意味が違います

尚、バイワイヤリングと混同されがちなバイアンプですが、バイアンプは、同一チャンネルのアンプをツイーター側とウーファー側で分け、ユニット別に上下2台のアンプを別々に使用してドライブする方法です。3WAYのスピーカーでは3台のパワーアンプでトライアンプです。L/Rチャンネル左右に分けてそれぞれにモノラルアンプを使うこととも意味が全く違います。バイアンプ駆動は必然的にバイワイヤリング接続をする事になりますが、バイワイヤリング接続自体は、バイアンプとは関係なしにステレオプリメインアンプかステレオパワーアンプが1台あれば可能になります。

バイアンプは古いマルチユニットの大型スピーカー等では良く見られた手法で、カーオーディオを除けば、現代のスマートなオーディオシステムで挑戦される方は少なくなったように感じます。でもよく考えたら、外付けのパワーアンプ内蔵サブウーファーを追加する場合などは、広義でのバイアンプ駆動になっていました。管理人は小型スピーカー愛好家ですけれども、最近はホームシアターでのマルチチャンネルやPCオーディオの普及により価格が下がったアンプ内蔵サブウーファーの追加も、箱庭オーディオ的にはかなり面白いかな~なんて考えています。

バイワイヤリング対応 or 非対応?アンプ側端子について

・ONKYOデジタルアンプA-5VLの背面(バイワイヤリング接続対応)

onkyo a-5vl_rear

・ONKYOデジタルアンプA-7VLの背面(バイワイヤリング接続非対応)

ankyo a-7vl_rear_l

《管理人愛用のONKYO A-1VLもバイワイヤリング非対応ですが、現行のONKYOのプリメインアンプとパワーアンプは、8端子(大型機or低価格機)と4端子(高級機)とでターミナルの仕様が分かれています。》

ONKYO A-9000R rear

《シンメトリカル構成の高級アンプでは、このようにL/Rスピーカー端子が筐体背面の左右端に別れていたりします。↑のONKYO A-9000Rの場合はバイワイヤリング対応の8端子構成です。》

バイワイヤリング非対応のアンプでもバイワイヤリング接続は可能です

市販のオーディオアンプには、前述のようにバイワイヤリング接続対応8端子モデルと4端子の非対応モデルとがあります。でも実のところ、プリメインアンプ(もしくはパワーアンプ)側のスピーカーターミナルが1系統か2系統かは、バイワイヤリング接続の本質とは関係ありません。アンプ側に接続端子が2系統(合計8端子)ある場合、単純にバイワイヤリング接続しやすいというだけで、端子が4つしか無いバイワイヤリング非対応アンプであっても、例えば↓のように結線する事で、問題無くバイワイヤリング接続の理論的効果を得ることが可能です。

プリメインアンプ_スピーカーターミナル

このようにアンプ側のターミナル端子が小さかったり、太いスピーカーゲーブルの結線では、上下2本ずつのケーブルを1端子の穴にねじ込めないケースが良くあります。そういった場合、上下どちらかの片方をバナナプラグ、もう片側を裸線orなるべくYラグ接続にするなどして、物理的にスピーカー端子へ入るようにひと工夫します。

A/Bの2系統@8つのスピーカー接続端子があるバイワイヤリンク接続対応アンプの場合、A側とB側で(内部回路の引き回しや切り替え接点の都合等々で)音質が多少なりとも異なる場合があります。この場合、より高音質に感じられるどちらか一方側のみへ敢えて結線する方が、実際には好結果な事があったりしますので、色々繋げ換えて最善の接続ポイントを模索するのもピュアオーディオの醍醐味だったりします。特にカタログスペックと機能が優先で、部品精度も低く内部接点や回路の無駄な引き回しの多い昔のベストバイ重量級アンプなどは、あまりチャンネル精度を過信しない方が良いと思います。

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コメント一覧 (4件)

  • こんにちは。
    たしかに バイワイアリングって 思ったほど 理解されてないでよね。
    ただ 前のスピーカーがバイワイアリング対応でしたので、行っていたのですが、ためしにシングル接続したら、そっちのほうが良かったので、結局今のJBL S4700もそのままです。
    たぶん アンプ側に結構な能力や精度が必要なのかな?って思います。2つのパワーアンプの位相がずれる?
    写真のひとつのターミナルに2本接続のほうが 無難かな? って思います。

  • わかりやすい解説、ありがとうございます<(_ _)>
    私も散々、バイワイヤリング、バイアンプと試してきました。
    現在はメインでならしているオールド・スピーカー YAMAHA NS-200Mがモニター系で、低域に不満を残すために、瞬発力の高い別のオールド・アンプとお手製ウーファー用のバックロードホーンで、アタック感を少し色づけする程度に鳴らしています。
    頂き物のサブウーファーも使ってまして、これまたほんの少し、極低域の響きを乗せるためだけに、ボリュームを絞って使ってます。
    何にしてもメイン・スピーカーの音を殺すことなく、自分好みの音で聴けるようにすることを主眼に、バイアンプ構成で鳴らしています。
    バイワイヤーにしてもバイアンプにしても、やり方次第で、方法も音も無限。色んな構成で遊んでいますw

  • >ジャイアンさん
    はじめまして~d(^_-)
    試行錯誤していたらどんどん複雑化してしまいましたか。?私も上質な響きをさらっと控えめに足すために、小さなウーファーが欲しいと思っていたり。YAMAHA YST-SW010も候補ですが、見た感じ音が篭もらないか心配だったり。ブログされているんですね。細かいDIYが素晴らしいです。。。まださらっと斜め読みで申し訳ないのですが、もしお差し支え無ければうちのうちのトップのリンクに参加していただけると嬉しいです♪
    >Yong Joonさん
    追記です。Yong Joonさんのブログも是非登録したいので先日色々やってみたのですが、どうもPhile-webコミュニティってRSSでのリンク登録が出来ない仕様なんですよね。コミュニティ内部の全ブログまるごとで登録は出来るのですが、それをやると・・・以下自粛(^^; という事でどうしたものかと思ってます・・・。

  • わぁ、朝からいきなりレスが2つもついてびっくり・・・(@_@;)
    お二人さま、おはようございます。
    >Yong Joonさん
    ネットワークオーディオ推進会の方、上手く絡めてなくて申し訳ないです。頭の中では色々と絡めるテーマを考えてたりするのですが、基本、体力的にレスポンスが周回遅れになりがちなもので・・・。
    初心者さん向けと云うことで、まずは理論上の原則論として、バイワイヤリング推奨を書きました。もちろん、基本を踏まえた上で、更に個別の環境で試行錯誤された上で、結果的にシングルワイヤリングに行き着くというのも十分にありです。現に私は今QUAD L-ite2を付属ショートプレートとシングルワイヤーで敢えて聴いています。(エントリ投稿は、いつも内容と数日~下手すると月単位のタイムラグがあるので、投稿内容と現状がぜんぜんリアルタイムではなかったりします。)
    アンプに関しては、ウーファーとツィーターを離れて並列接続にしても、インピーダンスの影響は軽微だと思うのですが、それでもバイワイヤリング接続では確実にエネルギー感が削がれます。元々オーバードライブ気味の組み合わせではこれが吉となりますが、逆にアンダーパワーの組み合わせでは、一気に生命力が削がれてしまう事もあります。あと、バイワイヤリング対応でアンプ側にターミナルが2系統あっても、内部のパワーアンプの回路はあくまで1系統としての動作が普通ですので、端子回りの引き回し等々の接点が増えているだけで、大したメリットはないのではと思います。

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