オランダ発超新星「ユッセン兄弟」のピアノに大注目♪

去る2013年5月9日、横浜のフィリアホールで開かれた、オランダ出身の若手ピアニスト”ユッセン兄弟”のミニコンサートに行って参りました。今年が初来日です。

アルトゥール&ルーカス・ユッセン兄弟

Arthur Jussen & Lucas Jussen 「アルトゥール&ルーカス・ユッセン兄弟」は、1993/1996年生まれの若干20才と16才。マリア・ジョアン・ピレシュ(マリア・ジョアン・ピリス)の愛弟子で、2008~2009年にNHK教育テレビで放映された「巨匠ピレシュのスーパーピアノレッスン」で生徒をしていた2人。一応最初に断っておきますが、2人はCDジャケットを超える美少年で超イケメンです♪クラシック好きの女子は、これだけを理由にしてでも絶対に聴きに行くべきです。 実物が人間離れした美しさで、男子としてのレベルの違いを感じざるを得ませんでした(^^;)

実は管理人、ユッセン兄弟についての事前知識が全く無し。コンサート数日前に、お買い物に来ていた青葉台東急スクエアで広告が偶然目に入り、ただなんとな~く直感的にチケットを購入していたのです。(注:東急スクエアはフィリアホールが入ったデパートです。)ウィークデーコンサートシリーズ《らん・らん・ランチにいい音楽》第27回という事でチケット代が1500円と安く、1時間のミニコンサートで、病床の身分にはからだ的に楽そうだったのもあります。

《この表紙の男の子は兄のルーカス・ユッセン君。当時13才。スーパーピアノレッスンについてのエントリは後日まとめるかも。》

08-09年の”スーパーピアノレッスン 巨匠ピレシュのワークショップ”は一応観ていたのですが、生徒達の名前までは覚えてませんでしたし、収録次点で6も前の2人は未だ小学生と中学生。そんな彼等が数年後、メジャーレーベルでのデビューを果たし、これほどの国際的評価を得ることになるとは・・・流石の私も全く予想してませんでした。兄弟2人をそれぞれソリストとして、更に加えてピアノデュオという3点セットでの売り方も初めて見ましたし、メジャーなピアノコンクールを経由せずに巨匠のお墨付きでプロデビューするのも、それほど多くは無いケースですから。

当日はほぼ満席。音楽評論家の伊熊よし子女史も来られていて、その時の評論がこちら。私は事前にユッセン兄弟のCDを聴いた事も無く、当日もシューベルトの即興曲を幾つか演奏する・・・くらいの超てきとーな認識。どちらが兄でどちらが弟かすら、下の名前含めて一切識別すらできないままでコンサート会場へ赴いたのでした。

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こちらのCDは2009年録音ですので収録時ユッセン兄弟は未だ14歳&17歳。驚いたことにオランダ人で初めてドイツ・グラモフォンと契約したピアニストになります。本国オランダでは大ヒットしてゴールド&プラチナディスクを受賞。もうスーパースターですね。音質は彼らの柔らかい音色を素直に捉えていて、DGらしくオーディオ的にも良質でお薦め。コンサートが余りに素晴らしかったので購入しました…( ੭ ・ᴗ・ )੭♡。ちなみにサイン会もしてましたよ。あと国内初回版のみ高音質SHM-CD仕様にDVDのオマケ付バージョン有り。今しか買えないDVDは、クラシック女子には必須アイテム\(^^@)/。

まずは冒頭の写真右、背の高い方の少年が出てきます。パンフを読むとアルトゥール君。弟なのですが、この次点でなんとなく兄だと勘違い。即興曲集D899, Op.90 第2番変ホ長調、第3番変ト長調、第4番変イ長調。弾き始めからして、予想(すらしてなかった)を大幅に超える音楽性の豊かさ。あ、あれ?なんかこの少年凄くない?みたいな。なんだろう、鍵盤の左右の手と、アルトゥール君の眉間の三点を結んだ鍵盤の中心点から、紙吹雪みたいに粉雪が上へプァーッ!って拭き上げるような演奏です。フィリアホールのスタインウェイでこんな音出たんだ・・・。静けさの中で、上品に、清涼に、それでいて歌のセンスが素晴らしい。音の間を大事にした丁寧な弾き方。繊細な音色と旋律に意識を揺さぶられるので、座席でじっとしているのが辛かったです。

次に兄ルーカス君が登場。ちっさい。この次点で弟だと勘違い。だってアルトゥール君より小柄で若く見えるんだもの。それと身長以外すっごい似てます。3歳離れた兄弟なのに双子かコピーみたい。曲目は即興曲集D935, Op.142より 第2番変イ長調、第3番変ロ長調。こちらもアルトゥール君と同じく静かで繊細で上品。というか更に輪を掛けて落ち着いていて静か。音色は結構違いがあって、ルーカス君は仄かに光が差し込む青い海の中から音が響いてくるような感じ。ほんのりと外向的でニュアンス豊かなメロディラインのアルトゥール君に比べ、ルーカス君はもっと、時折音楽が寸断するギリギリまでパッシブに、淡々と端正な弾き方をします。美しく、深く、しかし作為を廃した内向的な弾き方です。私はアルトゥール君に心を揺さぶられましたが、観客の皆さんにはルーカス君の方がより息を呑んで静かに聴かれていたようです。

今回のプログラムで演奏されたシューベルトのCD。国内盤初回のみ高音質SHM-CD盤。演奏会の時と同じ雰囲気です。

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プログラムの最後は、幻想曲ヘ短調D940, Op.103アルトゥール&ルーカスの4手連弾です。私の勝手な予想では、旋律を歌わせるのが上手なアルトゥール君が右で、深い音が得意なルーカス君の方が左だと思ったのですが、実際には逆でした。(↓のYouTubeでは入れ替わってますので、曲によって違うみたいですね。) アンコールの曲はビゼーの”子供の遊び”より第2曲”こま回し”(即興曲)第3曲”お人形”(子守歌)第12曲”舞踏会”(ギャロップ)でした。

この2人、連弾になっても息がぴったり。”ぴったり”というかもう自然すぎる位。そして全くといって良い程に五月蝿くありません。2人に共通するのは、静かで、繊細で、奇麗で、丁寧で、非常にクリーンで上品な演奏と云うこと。ずばり癒やし系のピアニストです♪ ピアニッシモからフォルテッシモまで音色の響きを大事にしていて、決して尖ったり割れるようなな音は出しません。(オランダ大使館ではヤマハの小さいグランドピアノを使ってます。)

恩師のマリア・ジョアン・ピレシュの影響は当たりの柔らかい音色(ソフトペダルの使い方かな?)に現れていたように感じますが、ピレシュはもっとタッチに込められた意思が強く、時にどぎつい程に派手でドラマチックな旋律表現をします。ユッセン兄弟はこう、優しく内向的で自然体で、派手さはないのに聴き手を説得させてしまう気品と美しさに溢れている。ピリスよりはむしろ、方向性としてクリスティアン・ツィメルマン(ツィマーマン)ラファウ・ブレハッチを彷彿とさせる音楽性です。ピアノもピリスはヤマハを使用しますが、ユッセン兄弟は当日のコンサートでもCD録音でもスタインウェイでした。

アーティスト:Lucas Jussen & Arthur
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技巧的なアプローチにしても、とても良く練られていて頭が良い。ユッセン兄弟は、近年のピアニストには珍しくノーブルな格調すら感じさせます。久しぶりに今後とも大注目に値する演奏を堪能できました。再来日した際には皆さんもぜひぜひ聴いてみて下さいませ♪

後日、ユッセン兄弟が子供時分のスーパーピアノレッスンの録画を見返したのですが、これがまぁ今の2人とは色々と真逆じゃないですか・・・。その事も含めてピレシュのワークショップについては後日機会があればエントリにして回想してみたいと思います。

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