M.A Recordings「間」アメリカの超高音質レーベルを紹介します♪

先日こちらの記事で話題にしたオーディオアクセサリ誌117号の付録、高音質サンプラーCDで主なトラックを占めていたのが、タッド・ガーファンクル氏が主催するアメリカのマイナーレーベル、M・A Recordingsです。

M.A Recordings 伊藤栄麻 Epstein

余りの高音質にびっくりしてしまい、思わず6枚ほどアメリカ本国より取り寄せてしまいました。今回はそれらのCDについて数回に分けて紹介したいと思います。

Index

M.A Recordings 1枚目:伊藤栄麻のゴールドベルク変奏曲

M024A

まず最初はクラシックピアノ。伊藤栄麻(p)の演奏するバッハ・ゴールドベルク変奏曲オーディオアクセサリ誌のサンプル盤には収録されていない(日本で現在売られていない)CDですが、管理人が普段集めている音源が主にクラシックピアノの録音で、しかもjazzaudiofanさんの推薦ディスクでもあり、今回は奮発して24金ゴールドディスク盤(2006/09追記:ゴールドCDは売り切れました)を購入しました。

↓こちらの記事でもMA recordingの録音を紹介しています↓

この録音に関しトッド・ガーファンクル氏は相当に自信があるのか、フォーマットもアルミ蒸着、24K、アナログ盤と3種類も用意。M/Aレコーディング黎明期の録音として、とても重要な扱いがされています。録音場所は松本のハーモニーホール。ピアノは1903年製の古いスタインウェイ。期待に胸を膨らませつつ先ずはメインシステムで再生してみます。(今週現在の構成はCEC TL5100Z/ONKYO A-1VL/Vienna Acoustics MOZART T-2)

なんじゃこれは?????!!!!!

…正直最初は焦りました…( ³△³ ).。o

一言で云うと、ホンキートンクの気が出てきている壊れたピアノ、録音は、安物のパーカッションみたいなポコポコしたサウンド、低音はぼやぼや、響きはピアノにまとわりついてまるで電気的なエコー、演奏は上手いんだか下手なんだか判別できないような感じ。一番大切な生気が感じられない芯の抜けた散漫な音で、良くある自費制作のプライベート録音にありがちな中途半端なバランス。正直、僕自身かなり青ざめていたと思います。どうして良いか判らず、とりあえず停止して、色々と仕事を片付けに外に出る・・・。

車の中で考えました。。。まず第一に、これはjazzaudiofanさんのオススメで、それどころか、どうみてもM/A Recordingsにとって重要な、太鼓判付きの高音質録音です。

ちなみに収録機材ですが、

マイク Tone Craft 2013/titanium capsule
・マイクケーブル CARDAS 300B
・デジタルケーブル オーラルシンフォニクス
・A/Dコンバーター dCS 900B
・D/Aコンバーター ナカミチ1000P
・DATトランスポート ナカミチ 1000
・DATテープ 花王
・モニタリングヘッドホン STAX(スタックス) OMEGA

STAX SR-007

オーディオマニアもびっくりのこれだけの機材を使用。これで音が悪いわけがない?それなのに、でも、音が良く聞こえないのです。。。

むぅ。。。

これは、もしかして、もしかすると「管理人のオーディオシステム」の何かが間違っているのか?

で、自宅に帰ってから一緒に届いた他のM・A Recordingsの他のCDをちょっとだけ再生。大丈夫じゃん…とにかく、オーディオアクセサリー誌のサンプルCDと概ね同質の良い音がします。やー参ったね・・・どうしようか?と思いながらも、このままではレポートになりませんので、書斎のサブシステムで再生してみます。

およ?

あれ?

ぐわっ、結構良い音じゃん!!!

ちなみに現在のサブシステムの構成ですが、PIONEER DV-545/TAG McLaren 60i/audiopro Image11です。

まず、響きが美しい。タップリとした残響感が小さな部屋いっぱいに響き渡ります。低域は弱いのですが、audiopro IMAGE11では元々あまり出ないので気になりません。それと音の動きが良く見える。結果的に伊藤栄麻さんの演奏解釈が丁寧に色々細かいところまでしっかり彫り込まれているのが良くわかります。メインシステムでの再生音は、ホンキートンクに鈴を付けて、ライブ会場のPAで拡声しているみたいな音…だったのが、サブシステムでは、ホールの高さ、大きさ、響きの美しさ、オールド・スタインウェイ特有の、メカニカル的には揃っていないけれど、年月を重ねた枯れた響きが伝わってくるのです。

これはどうしたことでしょう?。。。。むむぅ。

とにかく、サブシステムでまともな音が出ているので事なきを得たのですけれど、一体メインシステムはどうなっているんじゃ?という疑惑がむくむくと頭をもたげます。

録音と再生装置には確かに相性があります。管理人がもしメインシステムしか持っていなければ、これゴミ録音じゃん!と勘違いしてYahoo!オークション送りにしたかも知れません。しかし、サブシステムでは見事な音質が蘇る。管理人が箱庭的”AUDIO STYLE”で、音楽愛好家の皆様に複数のシステムを所有することを繰り返しお薦めするのは、オーディオ機器の再生音には、こういった相性問題が常に背中合わせで存在するからなのです。要するに、再生機器と録音の相性如何では、名演も駄演に聞こえてしまう事があり、そんな限られた再生音の狭い視点からのみ、特定の演奏の好き嫌い、善し悪しを短絡的に判断してしまうのはあまりにも勿体ない!音楽、音楽家に対してそれでは申し訳ないと感じるからです。

MonitorAudio  Silver S8

ここで気がつく点として、たぶんjazzaudiofanさんのシステムは(所有グレードの差は別として)こちらのサブシステムに近い素直な鳴り方をするのだろう…まぁこれはスピーカーがモニターオーディオ Silver S8ですから、ある意味当然ではあります。そして、解ってはいますが、家のメインシステムの音の出方が普通じゃないという事実。Vienna Acousticsの魅惑的な音に身贔屓して好意的に捉えれば、その情報量でこの録音の問題点を暴き出しているとも言えますし、M・A Recordingsのエンジニアから言わせれば、これはシステムの音質、再現性を測る物差しとなり得る特殊な踏み絵的録音なのだ・・・このワンポイント録音がちゃんと再生できないシステムは何かしら問題があるのでは?と反論されるかも知れません…( ³△³ ).。o

断っておきますが、一般的なメジャーレーベルのピアノ録音と比べた場合、このゴルトベルクのサウンドは普通じゃないです。クラシックについては初心者と仰っているjazzaudiofanさんは、同時期に購入したグレン・グールドによる演奏と比べて

>グレン・グールドの2回の録音におけるピアノの音と比べるとかなり異質で、
>そういう意味では独特の音かもしれない。

この様に書かれていますが、元々グールドのゴールドベルク変奏曲、実はクラシック録音の中でもかなり普通ではないのと、二度目の録音に使われたヤマハピアノも改造物。ピアノの調律・整音・整調、グールド自身の演奏スタイルや解釈、録音の仕方も含めてグールド盤はかなり個性的でクレイジーです。その意味では、あまり録音条件などの比較に使うのには向いていないCD。しかし、伊藤栄麻の録音はそのグールド録音と比べても、ワンポイント録音特有?のかなり変わった音で収録されているのは確かです。

Sony Classical *cl*
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そして、何よりもサブシステムではこの変わった録音でも、それなりに良い音で鳴るという事実…これは何を意味するのか? この問題…実は”NAXOS“の録音にも通じるのですよね~。ワンポイント録音に弱いメインシステムと、ワンポイント録音にそこそこ強いサブのミニスピーカー。オーディオを極めた達人からは低レベルな次元で右往左往しているなぁと鼻で笑われそうですけれども、装置ではなくまず音楽ありきの僕にとってはなかなか由々しき問題になるのでした。ホント、オーディオの道は険しいです~゜゜(´□`。°゜。

M.A Recordings 2枚目:伊藤栄麻 シューマン 子供の情景&ダヴィッド同盟舞曲集

収録場所とピアノが一緒と云うこともあり、こちらも基本的にゴールドベルク変奏曲と同系統の音質です。ただし、シューマンの録音の方がオンマイク気味?でややホールの間接音を捉え切れておらず、より挑戦的で高音質なのはゴールドベルク変奏曲の方ではないかと感じます。

アーティスト:EMA ITO 伊藤栄麻(ピアノ)
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このCDでの収録機材は以下になります。

・マイク Bruel&Kjaer 4006
・マイクアンプ M.Aオリジナル
・マイクケーブル CARDAS GOLDEN CROSS 1+10m
・レコーダー PIONEER D-07A
・モニタリングヘッドフォン STAX Λ Signature

マイクのことは詳しくないのですが、レコーダーとモニターがグレードダウン?もしくは持ち運び優先でコンパクトになったのか。但しCARDASのケーブルはトップエンドのGOLDEN CROSSにグレードアップ。

M.A Recordingsの録音で使われているマイクケーブルはカルダスですので、今日はサブシステムのスピーカーケーブルをスペース&タイムオムニからカルダスのクロスリンク2Xへ変更。値段が違うぞ!と突っ込まれそうですが、Crosslink 2Xの方がやはり音色的に録音との相性が良く、透明度が上がり更にリアルになります。

演奏はゆったりとニュアンス豊かな弾き方で、子供の情景は特に耳当たりよく優しい印象です。それにしても、このビンテージ・スタインウェイは本当に不思議な音色ですね。録音が変というよりも、このピアノの個性がかなり特殊なのかも知れません。鈴が鳴っているみたいな、ハープシコードが紛れてるみたいな…、このピアノ松本のハーモニーホールに行けば置いてあるのでしょうか?っと今ちょっと検索したところ、どうやら伊藤栄麻さんの持ち込みだそうです(@_@;) こちらのピアノを使った彼女の演奏、機会があれば生で聴いてみたいです。

M.A Recordings 3枚目:Peter Epstein「Solus」

M.A Recordingsの数多くの録音でサックスを担当している専属アーティスト?Peter Epsteinのソロレコーディング。オーディオアクセサリ誌117号のCDサンプラー4曲目にも収録されています。

Ma Recordings
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録音機材は「伊藤栄麻 シューマン 子供の情景・ダヴィッド同盟舞曲集」とほぼ一緒。イタリアのサンマルティーノ教会での録音で、アコースティックな残響が見事で音質は大本素晴らしいです。こういった録音を聴くと、やはりM/A Recordingの収録方法は間違っていないと感じます。普段ジャズサックスはあまり聴かないのですけれど、これはクラシック音楽愛好家の管理人でも楽しめる曲目内容になっています。

前回紹介した伊藤栄麻盤とは収録マイクが異なっており、

・マイクロフォン B&K(DPO) Omnidirectional 4006
・マイクアンプ M.Aオリジナル
・マイクケーブル CARDAS GOLDEN CROSS 1+10m
・レコーダー PIONEER D-07A
・サンプリングレートコンバーター DB Technologies 3000S 96kHz Optimizer

録音機材はこんな感じでごくシンプルな構成です。

収録曲の前半はクラシックで、JSバッハの無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番。バイオリンの曲をSaxophoneで演奏している訳ですが、これが意外と好印象。下手なヴァイオリンのCDよりも余程聴ける秀演です。1~4曲目までは原曲、5曲目の”シャコンヌ”はモチーフをかなりアレンジして即興風に収録。後半はピーター・エプスタインのオリジナル曲を中心に構成されていますがこれがまた素晴らしい。特に6曲目の”PI”は凄いです。パルティータ第2番でイイ感じに眠くウトウトしているところにこの曲。その不思議な曲想に無意識に全身が引きずり込まれ、半分寝たままから心臓のドキドキで目が覚め、一瞬破裂するんじゃないかと焦る程の求心力…。 エプスタインの他の曲も現代音楽風ですが、今まで知らなかったサックスの色々な技法を楽しめます。冒頭で書いたように音質も抜群ですし、これはオーディオファイル必携の一枚と言っておきましょうd(^_-)。

アーティスト:ヒラリー・ハーン
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ちなみに管理人が今回パルティータの原曲比較に使った手持ちのCDがこちら。以前に逸品館の社長さんが推薦していたヒラリー・ハーン当時17歳のデビューCD。

それから前橋汀子さんのバッハ 無伴奏ソナタ&パルティータ全集。

演奏はどちらのCDも魅力的。録音は同じSony Musicですが、ハーンの録音はよりオーディオ的でHi-Fi調なものの、質感はややドライでSBM臭い(粉っぽい)ので、個人的には前橋汀子さんの録音の方が素直で(だいぶハイ上がり気味ですけれども)好きかもです。。。ちなみに全曲盤は2枚組です。

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コメント一覧 (6件)

  • いやー、メインシステムではそんなにダメダメでしたか。
    サブシステムではOKとのことで少しほっとしましたが、強烈にオススメしたのでちょっと責任を感じます(^^;)。
    「普通のピアノの音と違う」ことは認識してましたが、クラシックの経験が少ない(ほとんどない)もので、その異質さを過小評価していたかもしれません。
    自分のシステムで素晴らしいと思うCDを他の人のシステムでかけてもらうと全然よくない、という経験を何度かしています。これはやはりシステムと録音の相性なんでしょうか。うちはたしかに解像度はそれほど良くなく、SPは「うまくまとめてきかせてくれる」タイプ。周波数帯域の両端もあまり出てませんしね。
    ほとんどピアノしか聴かないというオーディオの先輩がいるので、今度彼の意見を聞いてみます。

  • >自分のシステムで素晴らしいと思うCDを
    >他の人のシステムでかけてもらうと全然よくない、
    >という経験を何度かしています。
    これは私も同様に経験しています。そこがオーディオの難しさでもあり、
    面白さでもあり、迂闊に他人にCDを薦めにくい部分だったりするのですが、
    最終的な目的は、オーディオの音を聴く為のオーディオではなく、
    あくまで音楽を聴くための手段としてのオーディオな訳ですから、
    大切なのは、録音された音楽がありのままに蘇ることであって、
    (注:音楽のためにオーディオを合わせていくのが本来の姿であって)
    上手く再生できない場合は、システムのセットアップあるのみです。
    複数のシステムを使い分けるのも、その一つの解決法かなと。
    ウィーンアコースティックのスピーカーも決してフラットではありませんが、
    中域中心に鳴っているようでいて意外と上下共に広帯域で出てしまうのと、
    音質が元々かなり柔らかくてバスレフの低域が緩く広がるキャラクターがあり、
    収録方法と合わないと、過度にぼわぼわ~んってポン付いてしまい、
    時々、それが心地よさを通り越して据わりの悪い不愉快な感じになってしまいます。
    >ほとんどピアノしか聴かないというオーディオの先輩がいるので、今度彼の意見を聞いてみます。
    是非その方のシステムで再生してみて下さいませませ♪
    あと、ゴールドベルクの高音質録音でしたら、
    やはりキース・ジャレットを聴かれるのが良いと思います。
    これはチェンバロですが、ECMの音の良さには吃驚しました。
    キースはジャズピアニストですが、クラシックピアニスト以上に
    オーソドックスな解釈で教科書的お手本のような弾き方をしています。
    あと、平均律クラヴィーアの方はピアノで弾いていて、これも素晴らしい音質です。

  • 風邪が治ったようで、良かったですね。
    引き続きよろしくお願いします♪
    伊藤栄麻さんの「ゴールドベルク」と「子供の情景」、ピアノマニアの先輩宅で聴いてきました。特に変なところはなく、僕の家での再生と本質的にそう変わらない音でした。
    先輩のコメントは「反響のある空間で、比較的クロースマイクで録音している。録音はグッド。演奏はもともとテクニカルな素材ではないが、十分グッドである」でした。僕はこの「グッド」というのは「エクセレント」ではないという意味にとりました。
    先輩のシステムの詳細はブログの方に書きましたので、良ければご覧ください。

  • こんばんわ(^^)
    残念ながら未だ治ってない&今日も病院に行って来ました。
    正直、ブログ疲れもあるのかなぁ…。
    いつの間にかランキング順位がJAZZ&オーディオ通信と逆転してしまいましたね_| ̄|○
    読者の皆様、ここ読まれていたら問答無用で往復クリック夜露死苦!(´Д`;)
    6月に入ってから結構気分的にも疲れてしまっていて、
    風邪で追い打ちでした。精神的には大分回復していますが、
    アクセス解析導入が良くなかったです。これ、精神を蝕みますね…。
    色々左右されるタイプなので今後は敢えて見ないことにします。

  • 風邪が早く治るといいですね。
    ブログもお互い無理をせずぼちぼち行きましょう。
    ランキングは新しくカテゴリーができたので、僕は「ジャズ」に移行しました。
    ここでは上位キープが比較的簡単かも(笑)。
    ちなみにアクセス解析ってどんなことがわかるんでしょう?

  • 私は”一般”に移行しました。オーディオってカテゴリを作って欲しいかも。
    アクセス解析の件は長くなりますので、
    後日改めてメールでお知らせしますーd(^_-)。

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